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第四章 出現! 難易度SSSの新ダンジョン
パーティー結成、バディ分け
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新たに発見されたダンジョンは、早急に内部調査した上で、踏破するか、封印するかを決めなければならない。
「放置しておくと外部から魔物や魔獣が集まり放題で、最後には中から外へ溢れてしまう。それを避けるためにも、内部構造の把握が絶対なのだ」
ルシウス邸では、連絡を受けていた神人ジューアが起きて皆を出迎え、そう教えてくれた。
ダンジョン探索の準備のため、一同はルシウス邸に一度戻ってきた。
トオンとユーグレンも一度古書店に戻って、荷物を持ってこちらへ合流している。
「トオン、古書店のほうは大丈夫だったの?」
「あそこはお袋が残した結界があるから、防犯や災害対策は問題ないんだ。少し本が落ちたぐらいで済んだよ。でも街のほうはそうもいかなかったみたいだ」
幸い、大地震による死者や建物の倒壊はなかったが、家屋の中では物が落ちたり棚が倒れたりの被害が出ている。
古い建物は外壁にヒビが入ったものも多そうだ。
「それ心配ですねえ。この国、何でもかんでも問題が起こったら人のせいにしたり責任転嫁したりで攻撃する輩がいそうじゃないですか。確かに地震が起こったのはルシウス様のせいかもだけど、誰か一人でも地震で怪我したのがルシウス様のせいだなどと言って詰め寄ってきたら、オレは暴れる自信がありますよ」
自称〝ルシウスの番犬〟の秘書ユキレラが笑っている。
善良な民たちを傷つける気は毛頭ないが、この土地に住んでいるからには、王都地下の古代生物絡みでルシウスを責めて良い者は一人もいないはずだ。
「もしそう言って来る者がいたら、こう言い返しておやり。『神人カーナが王都丸ごと引っ剥がすのとどちらが良かった?』とね」
神人ジューアはつまらなさそうに言った。
この国の住人は基本的に善良だが、一部に過激な者たちがいる。そういう輩は権威で抑えつけるのが一番楽だ。
「大丈夫よ、ユキレラさん、ジューア様。聖者や聖女のやることに間違いはないものです」
「そうそう。何たって〝世界の理の擬人化存在〟だから」
ユキレラの心配やルシウス本人の落ち込みに対して、アイシャやビクトリノは気楽だった。
「ま、お前さんもいつまでもションボリしてなさんな。やるぜダンジョン攻略」
ばしっとビクトリノに背中を叩かれて、ルシウスも目が覚めたようだ。気を取り直して場をまとめだした。
さて、どのように新ダンジョンを攻略していくかだが。
「俺は対人特化型だから魔物相手にゃ役立たずだ。ごめんよ」
発破をかけておいてなんだが、と言って聖者ビクトリノは待機となった。
彼は棒術の達人だが、騎士や冒険者としての訓練は受けていないため除外。
地上側にいて、ダンジョン内で設置する転移装置から戻ってくる場所に待機して物資補給などの補助を行うことにした。
もっとも、そのような雑用を聖者の彼が行う必要はないので、実際には冒険者ギルドの職員たちの監督になるだろう。
「Sランクを持つ私がリーダーとなるパーティーを組もう。異論はないな?」
ルシウスの意見に反対する者はない。
ここに集まった者たちのランクは、まず聖剣の聖者ルシウスがSランク。
ちなみに彼はいわゆる〝暫定Sランク〟で、実力はその上のSSランクに匹敵すると言われている。
そこまで上がってしまうと各国家からの指名依頼の請け負いノルマが発生するため、束縛されたくない者はSランクまでで昇格を止める者が多かった。
同じくSランクに昇格したての聖女アイシャ。
個人の戦闘能力はもちろん、守りに強い術者でもある。
トオンはCランク。今では環を用いて、冒険者活動に必要な基本的な補助魔法をほぼ網羅している。ランクは低くてもサポーターとしては優秀だった。
ユーグレンはBランク。元から大剣使いだが、環に目覚めたことで盾役タンクも担える。
魔法魔術大国アケロニア王国の王族だけあって、ステータスの平均値が高く、物理にも魔法にも強い。
この四人でパーティーを組み、内部では適宜、二手に分かれて攻略していくことにした。
「さて、どう分けるかだが」
全員が環使いだ。ダンジョン内で環を通じて連携を取るのも、連絡を取り合うのも不自由しない。
「私とユーグレン様、アイシャとトオンで分けるのが良いか。それとも……」
ルシウスが顎に拳を当てて考え込んでいる。
「うむ。今回は環使いの分類で分けてみよう。本能タイプの私とアイシャ。知性タイプのトオンとユーグレン様で行く。どちらが先に最奥まで辿り着けるか競争でもしようか」
この決定にアイシャは頷いたが、トオンとユーグレンからはブーイングが上がった。
「そんなの最初から勝負が決まりすぎです!」
「そ、そうですよルシウス様! バディの貫禄が違いすぎます!」
それならバディ分けなどしないで四人で進んだほうが絶対に良い!
「仕方ないわね。知性派代表として、この神人ジューアが付き合ってやろう。ついでに鍛えてやるから期待するがよい」
そこに鶴の一声だ。
神人ジューア様のありがたい申し出だった。
「そ、それなら!」
「本当ですかジューア様。神人のあなたが一緒なら心強い!」
トオンとユーグレンは両手を上げて歓迎したが、ジューアと縁の深い弟のルシウスや、彼女の遠い子孫のユキレラは気が気ではない。
どういうわけかカーナ王国での彼女は話のわかる御仁に見えているが、横暴で理不尽の塊であることを知っている者たちはハラハラしっぱなしだ。
(ち、ちょっとルシウス様。あれ大丈夫なんですかね?)
(姉様がやる気なんだ。余計な口出しなんかしてみろ、〝お尻ぺんぺん〟でもされたらどうする!?)
(り、了解です、お口閉じます!)
喜んでいるトオンとユーグレンは果たして無事に済むのだろうか?
※オネエチャンはまだまだおとなしい
「放置しておくと外部から魔物や魔獣が集まり放題で、最後には中から外へ溢れてしまう。それを避けるためにも、内部構造の把握が絶対なのだ」
ルシウス邸では、連絡を受けていた神人ジューアが起きて皆を出迎え、そう教えてくれた。
ダンジョン探索の準備のため、一同はルシウス邸に一度戻ってきた。
トオンとユーグレンも一度古書店に戻って、荷物を持ってこちらへ合流している。
「トオン、古書店のほうは大丈夫だったの?」
「あそこはお袋が残した結界があるから、防犯や災害対策は問題ないんだ。少し本が落ちたぐらいで済んだよ。でも街のほうはそうもいかなかったみたいだ」
幸い、大地震による死者や建物の倒壊はなかったが、家屋の中では物が落ちたり棚が倒れたりの被害が出ている。
古い建物は外壁にヒビが入ったものも多そうだ。
「それ心配ですねえ。この国、何でもかんでも問題が起こったら人のせいにしたり責任転嫁したりで攻撃する輩がいそうじゃないですか。確かに地震が起こったのはルシウス様のせいかもだけど、誰か一人でも地震で怪我したのがルシウス様のせいだなどと言って詰め寄ってきたら、オレは暴れる自信がありますよ」
自称〝ルシウスの番犬〟の秘書ユキレラが笑っている。
善良な民たちを傷つける気は毛頭ないが、この土地に住んでいるからには、王都地下の古代生物絡みでルシウスを責めて良い者は一人もいないはずだ。
「もしそう言って来る者がいたら、こう言い返しておやり。『神人カーナが王都丸ごと引っ剥がすのとどちらが良かった?』とね」
神人ジューアはつまらなさそうに言った。
この国の住人は基本的に善良だが、一部に過激な者たちがいる。そういう輩は権威で抑えつけるのが一番楽だ。
「大丈夫よ、ユキレラさん、ジューア様。聖者や聖女のやることに間違いはないものです」
「そうそう。何たって〝世界の理の擬人化存在〟だから」
ユキレラの心配やルシウス本人の落ち込みに対して、アイシャやビクトリノは気楽だった。
「ま、お前さんもいつまでもションボリしてなさんな。やるぜダンジョン攻略」
ばしっとビクトリノに背中を叩かれて、ルシウスも目が覚めたようだ。気を取り直して場をまとめだした。
さて、どのように新ダンジョンを攻略していくかだが。
「俺は対人特化型だから魔物相手にゃ役立たずだ。ごめんよ」
発破をかけておいてなんだが、と言って聖者ビクトリノは待機となった。
彼は棒術の達人だが、騎士や冒険者としての訓練は受けていないため除外。
地上側にいて、ダンジョン内で設置する転移装置から戻ってくる場所に待機して物資補給などの補助を行うことにした。
もっとも、そのような雑用を聖者の彼が行う必要はないので、実際には冒険者ギルドの職員たちの監督になるだろう。
「Sランクを持つ私がリーダーとなるパーティーを組もう。異論はないな?」
ルシウスの意見に反対する者はない。
ここに集まった者たちのランクは、まず聖剣の聖者ルシウスがSランク。
ちなみに彼はいわゆる〝暫定Sランク〟で、実力はその上のSSランクに匹敵すると言われている。
そこまで上がってしまうと各国家からの指名依頼の請け負いノルマが発生するため、束縛されたくない者はSランクまでで昇格を止める者が多かった。
同じくSランクに昇格したての聖女アイシャ。
個人の戦闘能力はもちろん、守りに強い術者でもある。
トオンはCランク。今では環を用いて、冒険者活動に必要な基本的な補助魔法をほぼ網羅している。ランクは低くてもサポーターとしては優秀だった。
ユーグレンはBランク。元から大剣使いだが、環に目覚めたことで盾役タンクも担える。
魔法魔術大国アケロニア王国の王族だけあって、ステータスの平均値が高く、物理にも魔法にも強い。
この四人でパーティーを組み、内部では適宜、二手に分かれて攻略していくことにした。
「さて、どう分けるかだが」
全員が環使いだ。ダンジョン内で環を通じて連携を取るのも、連絡を取り合うのも不自由しない。
「私とユーグレン様、アイシャとトオンで分けるのが良いか。それとも……」
ルシウスが顎に拳を当てて考え込んでいる。
「うむ。今回は環使いの分類で分けてみよう。本能タイプの私とアイシャ。知性タイプのトオンとユーグレン様で行く。どちらが先に最奥まで辿り着けるか競争でもしようか」
この決定にアイシャは頷いたが、トオンとユーグレンからはブーイングが上がった。
「そんなの最初から勝負が決まりすぎです!」
「そ、そうですよルシウス様! バディの貫禄が違いすぎます!」
それならバディ分けなどしないで四人で進んだほうが絶対に良い!
「仕方ないわね。知性派代表として、この神人ジューアが付き合ってやろう。ついでに鍛えてやるから期待するがよい」
そこに鶴の一声だ。
神人ジューア様のありがたい申し出だった。
「そ、それなら!」
「本当ですかジューア様。神人のあなたが一緒なら心強い!」
トオンとユーグレンは両手を上げて歓迎したが、ジューアと縁の深い弟のルシウスや、彼女の遠い子孫のユキレラは気が気ではない。
どういうわけかカーナ王国での彼女は話のわかる御仁に見えているが、横暴で理不尽の塊であることを知っている者たちはハラハラしっぱなしだ。
(ち、ちょっとルシウス様。あれ大丈夫なんですかね?)
(姉様がやる気なんだ。余計な口出しなんかしてみろ、〝お尻ぺんぺん〟でもされたらどうする!?)
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喜んでいるトオンとユーグレンは果たして無事に済むのだろうか?
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