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第二章 お師匠様がやってきた
お昼ごはんは玉子サンド
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昼はルシウスとアイシャだけで、チキンスープと玉子サンドの簡単な昼食を取った。
ちょうど調理スキルを得たことだし、ルシウス監修のもとアイシャのみで玉子サンドを作ってみた。
食パンはいつものミーシャおばさんの家のパン屋で購入した買い置きの薄切りを。
中身のフィリングは、ゆで卵をボウルの中に入れてフォークで潰し、マヨネーズと塩少し、マスタードを加えて混ぜて食パン一枚でたっぷりと、包み込むように挟む。
生野菜など水分の出る具はないから、パンの表面にバターは塗らない。
二枚の食パンに挟んで包丁で真ん中からカットしても良いのだが、すぐ食べる場合はこのやり方のほうが包丁を使わずに済むので便利だ。
二つ折りにした食パンがフィリングから剥がれないよう、食べる寸前まで深めの皿に詰めるように入れて両側を押さえておくと良い。
「トオンの分は……戻って来なければカズンに送るわ。調理スキルゲットの報告と一緒にね」
それでいつもの昼食の時間になるまで待っていたのだが、結局トオンは帰って来なかったので記念すべきアイシャの玉子サンドは環を通じてカズン行きとなった。
「あ、ちゃんと美味しくできてる」
まだ味付けにあまり自信はなかったが、単純な料理だからか玉子サンドはなかなか美味しかった。
「調理スキルのランクが上がると、一度に作れる料理の数が増えていくんだ。だが家庭で家族に料理を作るだけなら初級で充分だろう」
「ランクが上がるほど美味しく作れるんじゃないの?」
アイシャからの素朴な疑問に、ルシウスはまさか! と大袈裟に否定してみせた。
「調理スキルは、調理技術に関するスキルに過ぎない。作った料理の味の良し悪しはまた別の話になる」
ルシウスによると、中級や上級持ちでもいまひとつな味の料理を作る者も多いらしい。
「高いランクの調理スキル持ちだと、隠しステータスに“飯ウマ”を持ってることが多いのは確かだがな」
「ルシウスさんは?」
「もちろん持っているとも!」
飯ウマなお師匠様万歳である。
「普段、私のいないところだとトオンはどうなのだ?」
「んー。環を出すことはできるし使いこなしも上手ね。ダンジョン町から海の国境まで実験しに行ったとき、まさかその場で魔術樹脂のボートを作れるとは思わなかったもの」
アイシャのほうは、ネイルや簡単な小物を作ることしか試していなかったから、なおさら驚いた。
「だけどね、環の光が安定してないみたい。自分の得意分野を環を通じて伸ばしてるけど、なかなか伸ばしきれてないっていうか」
トオンは古書店の主人だけあって、知識量は抜群だ。
これが庶民でなくせめて下級の貴族出身だったら、国営の図書館で司書をやっていたはず。それだけの教養は持っていた。
しかも、古書店内には魔法書や魔術書が多い。
本人、元からほとんどの本の内容を覚えているそうで、基本的に記憶力と応用力の高い男だった。
「私とは、魔法や魔術のことたくさん話すんだけど。でもダメね、今朝のルシウスさんみたいにエイリー様の話題になるとああなっちゃう」
「魔力使いは、親子関係に感情のもつれがあると厄介なんだ」
とルシウスが嘆息した。
「特に母親相手だと子の分が悪い。相手は自分の原材料・製造元だぞ? 無理だ。勝てない」
父親は克服できないこともない。
原材料ではあるものの、『製造元』ではないからだ。
「環使いでも、親への恨みや憎しみを持ってると、なかなか克服できず苦労する者が多いと聞く」
「そこは旧世代も同じよ。一般の人たちもね。教会の司祭様たちに持ち込まれる相談に、家族問題は本当に多いもの」
兄弟姉妹がいて、親からの愛情や手間に格差を付けられて育てられた場合なども、大人になってから相当に後を引く。
「どうしたものか」
どうもこうもない。
トオンの様子を見ながら、少しずつ必要な意見交換をしていくしかなかった。
ちょうど調理スキルを得たことだし、ルシウス監修のもとアイシャのみで玉子サンドを作ってみた。
食パンはいつものミーシャおばさんの家のパン屋で購入した買い置きの薄切りを。
中身のフィリングは、ゆで卵をボウルの中に入れてフォークで潰し、マヨネーズと塩少し、マスタードを加えて混ぜて食パン一枚でたっぷりと、包み込むように挟む。
生野菜など水分の出る具はないから、パンの表面にバターは塗らない。
二枚の食パンに挟んで包丁で真ん中からカットしても良いのだが、すぐ食べる場合はこのやり方のほうが包丁を使わずに済むので便利だ。
二つ折りにした食パンがフィリングから剥がれないよう、食べる寸前まで深めの皿に詰めるように入れて両側を押さえておくと良い。
「トオンの分は……戻って来なければカズンに送るわ。調理スキルゲットの報告と一緒にね」
それでいつもの昼食の時間になるまで待っていたのだが、結局トオンは帰って来なかったので記念すべきアイシャの玉子サンドは環を通じてカズン行きとなった。
「あ、ちゃんと美味しくできてる」
まだ味付けにあまり自信はなかったが、単純な料理だからか玉子サンドはなかなか美味しかった。
「調理スキルのランクが上がると、一度に作れる料理の数が増えていくんだ。だが家庭で家族に料理を作るだけなら初級で充分だろう」
「ランクが上がるほど美味しく作れるんじゃないの?」
アイシャからの素朴な疑問に、ルシウスはまさか! と大袈裟に否定してみせた。
「調理スキルは、調理技術に関するスキルに過ぎない。作った料理の味の良し悪しはまた別の話になる」
ルシウスによると、中級や上級持ちでもいまひとつな味の料理を作る者も多いらしい。
「高いランクの調理スキル持ちだと、隠しステータスに“飯ウマ”を持ってることが多いのは確かだがな」
「ルシウスさんは?」
「もちろん持っているとも!」
飯ウマなお師匠様万歳である。
「普段、私のいないところだとトオンはどうなのだ?」
「んー。環を出すことはできるし使いこなしも上手ね。ダンジョン町から海の国境まで実験しに行ったとき、まさかその場で魔術樹脂のボートを作れるとは思わなかったもの」
アイシャのほうは、ネイルや簡単な小物を作ることしか試していなかったから、なおさら驚いた。
「だけどね、環の光が安定してないみたい。自分の得意分野を環を通じて伸ばしてるけど、なかなか伸ばしきれてないっていうか」
トオンは古書店の主人だけあって、知識量は抜群だ。
これが庶民でなくせめて下級の貴族出身だったら、国営の図書館で司書をやっていたはず。それだけの教養は持っていた。
しかも、古書店内には魔法書や魔術書が多い。
本人、元からほとんどの本の内容を覚えているそうで、基本的に記憶力と応用力の高い男だった。
「私とは、魔法や魔術のことたくさん話すんだけど。でもダメね、今朝のルシウスさんみたいにエイリー様の話題になるとああなっちゃう」
「魔力使いは、親子関係に感情のもつれがあると厄介なんだ」
とルシウスが嘆息した。
「特に母親相手だと子の分が悪い。相手は自分の原材料・製造元だぞ? 無理だ。勝てない」
父親は克服できないこともない。
原材料ではあるものの、『製造元』ではないからだ。
「環使いでも、親への恨みや憎しみを持ってると、なかなか克服できず苦労する者が多いと聞く」
「そこは旧世代も同じよ。一般の人たちもね。教会の司祭様たちに持ち込まれる相談に、家族問題は本当に多いもの」
兄弟姉妹がいて、親からの愛情や手間に格差を付けられて育てられた場合なども、大人になってから相当に後を引く。
「どうしたものか」
どうもこうもない。
トオンの様子を見ながら、少しずつ必要な意見交換をしていくしかなかった。
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