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第二章 お師匠様がやってきた
海の真上の国境にて
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アケロニア王国の方向へ消えていったルシウスを、呆然として見送った後。
ややあって、先に己を取り戻したアイシャが苦笑しながらトオンを振り返った。
「トオン。空から帰るなら、寄り道したいわ」
「国境かい?」
「……うん」
ここ、第2号ダンジョンのある町からなら、一番近い国境まですぐだ。
国境とはいえ、海に面した場所だから対岸の隣国までは遠いのだが。
ルシウスがカーナ王国に来たばかりのとき、アイシャは彼から課題を出されている。
約半年前、王都の地下に眠る邪悪な古代生物を浄化する際、アイシャは必要な魔力を調達するため、自分に関するある条件を捧げることで、世界の外の“虚空”から莫大な魔力を引き出した。
捧げた生贄は、自分の骸。
いつか自分が死んだとき、『このカーナ王国に骨を埋める』という誓約を立てた。
ルシウスからは、このときの制約の条件やペナルティを調査しろと言われている。
アイシャはこの誓約は自分をカーナ王国に縛り付けるものだと認識して、今後はもう二度と国外に出られないものと思い込んでいた。
だがルシウスから、その誓約の中に『この国から出られない』条件は入っていないと指摘されて、目が覚める思いだった。
「さて、ここが国境になるわけだけど」
そのままふたりで空を飛び、一番近い海沿いの国境までやってきた。
昼間なら遠い対岸には隣国、ゼクセリア共和国が見えるはずだが、さすがに夜中の今は見えない。
国境とはいえ、海岸には灯台があるきり。明かりが灯っているから兵士が常駐して海を監視しているのがわかる。
カーナ王国は代々、国に所属する聖女や聖者が魔物除けの結界を張る。もちろん、この海岸沿いの国境にも、今もアイシャが結界を展開している。
結界の内部には、魔物も魔獣も入れない。
その代わり、外側は魔物が集まりやすいため、海から他国の侵略を過度に気にする必要もなかった。
夜の空をゆっくり飛びながら、海岸と暗い海を見下ろす。
「結界は、国境ギリギリに張ってるんだっけ?」
「……陸はそうね。でも海は国境の印も何もないから、ちょっとだけ曖昧」
他の国境のある地域は軍が常駐しているため、人目に付く。
今回、この海岸沿いの国境近くのダンジョン町に来ていたのは幸いだったかもしれない。
「国と国の間に海や河川がある場合、互いの国土のちょうど真ん中あたりが国境になると言われてる。半分のところまで飛んでみよう」
「……わかったわ」
夜の海の上は暗いが、月も星もあるから水面が光を反射して、意外と視界が保てる。
ゆっくり、ゆっくりと、アイシャはトオンと手を繋いだまま空を進んでいく。
ややあって、先に己を取り戻したアイシャが苦笑しながらトオンを振り返った。
「トオン。空から帰るなら、寄り道したいわ」
「国境かい?」
「……うん」
ここ、第2号ダンジョンのある町からなら、一番近い国境まですぐだ。
国境とはいえ、海に面した場所だから対岸の隣国までは遠いのだが。
ルシウスがカーナ王国に来たばかりのとき、アイシャは彼から課題を出されている。
約半年前、王都の地下に眠る邪悪な古代生物を浄化する際、アイシャは必要な魔力を調達するため、自分に関するある条件を捧げることで、世界の外の“虚空”から莫大な魔力を引き出した。
捧げた生贄は、自分の骸。
いつか自分が死んだとき、『このカーナ王国に骨を埋める』という誓約を立てた。
ルシウスからは、このときの制約の条件やペナルティを調査しろと言われている。
アイシャはこの誓約は自分をカーナ王国に縛り付けるものだと認識して、今後はもう二度と国外に出られないものと思い込んでいた。
だがルシウスから、その誓約の中に『この国から出られない』条件は入っていないと指摘されて、目が覚める思いだった。
「さて、ここが国境になるわけだけど」
そのままふたりで空を飛び、一番近い海沿いの国境までやってきた。
昼間なら遠い対岸には隣国、ゼクセリア共和国が見えるはずだが、さすがに夜中の今は見えない。
国境とはいえ、海岸には灯台があるきり。明かりが灯っているから兵士が常駐して海を監視しているのがわかる。
カーナ王国は代々、国に所属する聖女や聖者が魔物除けの結界を張る。もちろん、この海岸沿いの国境にも、今もアイシャが結界を展開している。
結界の内部には、魔物も魔獣も入れない。
その代わり、外側は魔物が集まりやすいため、海から他国の侵略を過度に気にする必要もなかった。
夜の空をゆっくり飛びながら、海岸と暗い海を見下ろす。
「結界は、国境ギリギリに張ってるんだっけ?」
「……陸はそうね。でも海は国境の印も何もないから、ちょっとだけ曖昧」
他の国境のある地域は軍が常駐しているため、人目に付く。
今回、この海岸沿いの国境近くのダンジョン町に来ていたのは幸いだったかもしれない。
「国と国の間に海や河川がある場合、互いの国土のちょうど真ん中あたりが国境になると言われてる。半分のところまで飛んでみよう」
「……わかったわ」
夜の海の上は暗いが、月も星もあるから水面が光を反射して、意外と視界が保てる。
ゆっくり、ゆっくりと、アイシャはトオンと手を繋いだまま空を進んでいく。
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