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第二章 お師匠様がやってきた
初ダンジョン・ランクBプラス
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目的のランクBプラスの『カーナ王国第2ダンジョン』は王都から乗り合い馬車で1時間ほどの場所にある。
ルシウスの引率でアイシャ、トオンの三人は冒険者登録を済ませ装備を揃えた翌日、早朝まだ薄暗いうちに王都を出発し、日が昇って少し経った頃ぐらいに到着した。
冒険者たちが集まるため町が形成されていて、小規模ながら活気がある。
「もうスタンピードもないから、今後はダンジョン探索が冒険者たちの活動フィールドになりそうね」
人々の様子を見ながらアイシャが頷いている。
これまでなら、カーナ王国の冒険者たちの大きな収入源は、魔物の大侵攻スタンピードに関する国からの長期の討伐報酬がメインだった。
もう魔物や魔獣を呼び寄せる王都地下の邪悪な古代生物はアイシャが浄化してしまったから、あとは緩やかに魔物たちの数は減っていって、ダンジョン探索が主になるはずだ。
ダンジョン自体は自然に形成されたもので、ここは28階層まである。
入口は町が管理していて、入場時は冒険者証を見せて名簿に名前と、何かあったときの連絡先の記入、契約書にサインをする必要がある。
要するに中で怪我をしたり死亡したりしても自己責任ですよの類のものだ。
「ついに俺もダンジョンデビューかあ!」
トオンも男だから、冒険者たちに憧れたのは一度や二度ではない。
一度ぐらい低階層に入ってみたかったのだが、母親のマルタにこっぴどく叱られるの繰り返しで、彼女の生前には結局入ることができなかった。
ダンジョンは大抵どこも、最初の1階層は何も出ない。
ここ第2ダンジョンは地下に降りていくタイプだ。
そして2階層めから初の魔物との遭遇となる。
最初の敵はある意味お約束のスライムだ。透明なジェル状ボディの丸っこい魔物が複数出現した。
「……来たな。準備はいいか、アイシャ」
「問題ないわ」
と言ってアイシャはおもむろにローブを脱ぎ、後ろのトオンに放った。
それだけならまだしも、魔力を使う媒体の錫杖までその上に投げてきた。
「ち、ちょっとアイシャ! 錫杖なしじゃ……」
「行くわよ!」
「おう!」
「え? ちょっと待……っ!」
そしてトオンは信じられないものを見た。
肉弾戦で魔物を瞬殺するルシウス。そして己の恋人アイシャ。
ルシウスなど魔法剣士のくせに聖剣を出しもしない。拳だ。
アイシャが冒険者ギルドで購入した赤い指なしグローブを手に嵌めていたのは、もちろん側にいたトオンは知っていた。
だが、そこにネオングリーンの魔力をまとわせて魔物を殴り殺すものとは思いもしなかった。
アイシャの指なしグローブは、革製で特にナックルのような金属類は入っていない。
なのに魔物を吹き飛ばして粉砕している。
こちらも拳ひとつで。いや両手だから拳ふたつで。
ルシウスが強いのはわかる。
見るからに只者でないし、普段ご機嫌で料理したり酒を飲んで陽気に笑ったりしているときですら、莫大な魔力で本人は薄っすらネオンブルーに光っていて強い圧力を感じるぐらいだ。
聖剣なしの本体だけでも充分強い。何せ本人、長身で着痩せするように見えてなかなか体格も良い。
そこは何となくわかっていたことだし、意外性もない。
だが、アイシャは。
最近背が伸びてきたとはいえ、まだまだトオンからすれば小柄で細っこい女の子だ。
トオンの腕の中に抱き締めると、スペースが余るほどの女の子なのに。
--
本日エイプリルフールなのでTwitterで
「王弟カズンの冒険前夜、コミカライズ決定しました!
漫画担当者様に「ヨシュア初登場回は薔薇を飛ばして、その薔薇はスモークサーモンでお願いします!🌹」とお頼み申し上げました!!!」
とツイートしたらうっかり引っかかってくれた方がいて、ニンマリ笑ってた作者です(・∀・)
そんな奇跡が起こってくれてもいいのよ(*´ω`*)
ルシウスの引率でアイシャ、トオンの三人は冒険者登録を済ませ装備を揃えた翌日、早朝まだ薄暗いうちに王都を出発し、日が昇って少し経った頃ぐらいに到着した。
冒険者たちが集まるため町が形成されていて、小規模ながら活気がある。
「もうスタンピードもないから、今後はダンジョン探索が冒険者たちの活動フィールドになりそうね」
人々の様子を見ながらアイシャが頷いている。
これまでなら、カーナ王国の冒険者たちの大きな収入源は、魔物の大侵攻スタンピードに関する国からの長期の討伐報酬がメインだった。
もう魔物や魔獣を呼び寄せる王都地下の邪悪な古代生物はアイシャが浄化してしまったから、あとは緩やかに魔物たちの数は減っていって、ダンジョン探索が主になるはずだ。
ダンジョン自体は自然に形成されたもので、ここは28階層まである。
入口は町が管理していて、入場時は冒険者証を見せて名簿に名前と、何かあったときの連絡先の記入、契約書にサインをする必要がある。
要するに中で怪我をしたり死亡したりしても自己責任ですよの類のものだ。
「ついに俺もダンジョンデビューかあ!」
トオンも男だから、冒険者たちに憧れたのは一度や二度ではない。
一度ぐらい低階層に入ってみたかったのだが、母親のマルタにこっぴどく叱られるの繰り返しで、彼女の生前には結局入ることができなかった。
ダンジョンは大抵どこも、最初の1階層は何も出ない。
ここ第2ダンジョンは地下に降りていくタイプだ。
そして2階層めから初の魔物との遭遇となる。
最初の敵はある意味お約束のスライムだ。透明なジェル状ボディの丸っこい魔物が複数出現した。
「……来たな。準備はいいか、アイシャ」
「問題ないわ」
と言ってアイシャはおもむろにローブを脱ぎ、後ろのトオンに放った。
それだけならまだしも、魔力を使う媒体の錫杖までその上に投げてきた。
「ち、ちょっとアイシャ! 錫杖なしじゃ……」
「行くわよ!」
「おう!」
「え? ちょっと待……っ!」
そしてトオンは信じられないものを見た。
肉弾戦で魔物を瞬殺するルシウス。そして己の恋人アイシャ。
ルシウスなど魔法剣士のくせに聖剣を出しもしない。拳だ。
アイシャが冒険者ギルドで購入した赤い指なしグローブを手に嵌めていたのは、もちろん側にいたトオンは知っていた。
だが、そこにネオングリーンの魔力をまとわせて魔物を殴り殺すものとは思いもしなかった。
アイシャの指なしグローブは、革製で特にナックルのような金属類は入っていない。
なのに魔物を吹き飛ばして粉砕している。
こちらも拳ひとつで。いや両手だから拳ふたつで。
ルシウスが強いのはわかる。
見るからに只者でないし、普段ご機嫌で料理したり酒を飲んで陽気に笑ったりしているときですら、莫大な魔力で本人は薄っすらネオンブルーに光っていて強い圧力を感じるぐらいだ。
聖剣なしの本体だけでも充分強い。何せ本人、長身で着痩せするように見えてなかなか体格も良い。
そこは何となくわかっていたことだし、意外性もない。
だが、アイシャは。
最近背が伸びてきたとはいえ、まだまだトオンからすれば小柄で細っこい女の子だ。
トオンの腕の中に抱き締めると、スペースが余るほどの女の子なのに。
--
本日エイプリルフールなのでTwitterで
「王弟カズンの冒険前夜、コミカライズ決定しました!
漫画担当者様に「ヨシュア初登場回は薔薇を飛ばして、その薔薇はスモークサーモンでお願いします!🌹」とお頼み申し上げました!!!」
とツイートしたらうっかり引っかかってくれた方がいて、ニンマリ笑ってた作者です(・∀・)
そんな奇跡が起こってくれてもいいのよ(*´ω`*)
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