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第二章 お師匠様がやってきた
新世代の魔力使いは二種類
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その日の昼食はミーシャおばさんから調達したトルティーヤと惣菜で済ませ、ひと休みしてから食卓で茶を飲みながらレクチャーすることにした。
まず、ルシウスは新世代の魔力使いである環使いの種別を教えていった。
「本能タイプか知性タイプかの二種類がいる。必ずどちらかのタイプに分かれる」
本能タイプのほうが魔力の大きく強い者が多い。
知性タイプは魔力は少なくても、コントロール能力に長けている。
そのため、本能タイプと知性タイプは二人ペアか、複数人のグループを組むことが大半である。
「アイシャは本能タイプだ。トオンは自分でもわかるな? 知性タイプになる。話を聞くだけだがお前の母、聖女エイリーは本能タイプで間違いない。聖者ビクトリノは知性タイプ」
ルシウスはフリーダヤとロータスのファミリーたちの種別を挙げていった。
「魔術師フリーダヤは知性タイプ。聖女ロータスは本能タイプ」
「あれ、ならカズンは?」
「知性タイプじゃないかしら?」
するとルシウスは、ニヤリとその質問を待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「当てられたら、今晩のデザートを豪華にしてやろう」
「「知性タイプ!」」
「外れ。彼は本能タイプだ」
「「嘘でしょ!?」」
間違えるのがわかっていて、あえて出した問題である。
というわけで特に今晩、デザートはない。
「彼は元々、生まれながらにステータスの魔力値が振り切れていたんだ。それが幼少期、王族の継承権争いに巻き込まれて呪いを受けた。その影響からまだ脱することができないから魔力が低く、結果として知性タイプに似た状態になっている」
「あれ、それって環が使えるにも関わらず、自分じゃ呪いを解けないってこと?」
トオンの鋭い指摘に、一拍置いてからルシウスが答える。
「難しいところだな。彼に呪いをかけた術者が自死を選んだせいで、解除の方法がわからないままになっている。環で解けぬこともないだろうが、そのために必要な魔力をどこから調達するかの問題がある」
「案外、環って融通きかないわよね」
「というより、己のそういった枷を如何に克服するかが、魔力使いとしての力量を上げる試練なのだ」
環を発現させた者が最初に直面するのは、「思ったより使えない」「使いこなせない」という現実だった。
ただ環を出せても、それだけで万能強力な魔力使いになれるとは限らないからだ。
結局、旧世代と同じような地道な訓練が必要なことに変わりはない。
「カズン様の出身のアケロニア王族は、邪悪なるものを倒した勇者の家系だ。彼が自分本来のステータスを取り戻したときが楽しみなのだがね」
彼が己の敵を倒して帰還することを、故郷の親しい者たちは皆、心より待ち望んでいる。
「じゃあ、ルシウスさんはどっち?」
「どちらだと思う?」
「知性タイプ」
「本能タイプ」
アイシャとトオンで意見が分かれた。
「本能タイプだ。魔力が多いから知性もそれなりに発達して見えるだけだがな」
「「ああ……」」
そう言われると納得するものがある。
この短期間でも、ルシウスがふたりに見せる気遣いには嬉しくもくすぐったさを感じさせるものがあったが、繊細さはなく、どちらかといえば大雑把な感じがある。
その辺の挙動には、同じ本能タイプだというアイシャにも共通するものがあるなと、トオンは思った。
「基本的に、魔力使いは新旧問わず魔力の“量”がすべてだ。質も大事だが、それは量を確保できてから考えればよい。そもそも質を高めるにも魔力の“量”が必要なんだ。というわけで節約するように」
「「?」」
さらっと言われて、アイシャとトオンはきょとん、とした表情になった。
「節約だ。わかったかな?」
反応が予想外だったようで、すこし声を和らげてルシウスが繰り返した。
「あのー。でも環って自分の魔力だけでなく、外部からも魔力を調達できる術なんですよね? それなのに何で節約?」
「魔力を節約しなさい、ってことよね?」
「そう。24時間ずーっと、いつでも常に環を出し続けていられるほど魔力があれば良いのだが、通常はそこまでの魔力を持ってないことが多い。アイシャは問題なさそうだが、これは特にトオン向けの助言だな」
将来的には、環から環のための魔力を調達できる域まで達することができるよう目指すことになるという。
まず、ルシウスは新世代の魔力使いである環使いの種別を教えていった。
「本能タイプか知性タイプかの二種類がいる。必ずどちらかのタイプに分かれる」
本能タイプのほうが魔力の大きく強い者が多い。
知性タイプは魔力は少なくても、コントロール能力に長けている。
そのため、本能タイプと知性タイプは二人ペアか、複数人のグループを組むことが大半である。
「アイシャは本能タイプだ。トオンは自分でもわかるな? 知性タイプになる。話を聞くだけだがお前の母、聖女エイリーは本能タイプで間違いない。聖者ビクトリノは知性タイプ」
ルシウスはフリーダヤとロータスのファミリーたちの種別を挙げていった。
「魔術師フリーダヤは知性タイプ。聖女ロータスは本能タイプ」
「あれ、ならカズンは?」
「知性タイプじゃないかしら?」
するとルシウスは、ニヤリとその質問を待っていたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「当てられたら、今晩のデザートを豪華にしてやろう」
「「知性タイプ!」」
「外れ。彼は本能タイプだ」
「「嘘でしょ!?」」
間違えるのがわかっていて、あえて出した問題である。
というわけで特に今晩、デザートはない。
「彼は元々、生まれながらにステータスの魔力値が振り切れていたんだ。それが幼少期、王族の継承権争いに巻き込まれて呪いを受けた。その影響からまだ脱することができないから魔力が低く、結果として知性タイプに似た状態になっている」
「あれ、それって環が使えるにも関わらず、自分じゃ呪いを解けないってこと?」
トオンの鋭い指摘に、一拍置いてからルシウスが答える。
「難しいところだな。彼に呪いをかけた術者が自死を選んだせいで、解除の方法がわからないままになっている。環で解けぬこともないだろうが、そのために必要な魔力をどこから調達するかの問題がある」
「案外、環って融通きかないわよね」
「というより、己のそういった枷を如何に克服するかが、魔力使いとしての力量を上げる試練なのだ」
環を発現させた者が最初に直面するのは、「思ったより使えない」「使いこなせない」という現実だった。
ただ環を出せても、それだけで万能強力な魔力使いになれるとは限らないからだ。
結局、旧世代と同じような地道な訓練が必要なことに変わりはない。
「カズン様の出身のアケロニア王族は、邪悪なるものを倒した勇者の家系だ。彼が自分本来のステータスを取り戻したときが楽しみなのだがね」
彼が己の敵を倒して帰還することを、故郷の親しい者たちは皆、心より待ち望んでいる。
「じゃあ、ルシウスさんはどっち?」
「どちらだと思う?」
「知性タイプ」
「本能タイプ」
アイシャとトオンで意見が分かれた。
「本能タイプだ。魔力が多いから知性もそれなりに発達して見えるだけだがな」
「「ああ……」」
そう言われると納得するものがある。
この短期間でも、ルシウスがふたりに見せる気遣いには嬉しくもくすぐったさを感じさせるものがあったが、繊細さはなく、どちらかといえば大雑把な感じがある。
その辺の挙動には、同じ本能タイプだというアイシャにも共通するものがあるなと、トオンは思った。
「基本的に、魔力使いは新旧問わず魔力の“量”がすべてだ。質も大事だが、それは量を確保できてから考えればよい。そもそも質を高めるにも魔力の“量”が必要なんだ。というわけで節約するように」
「「?」」
さらっと言われて、アイシャとトオンはきょとん、とした表情になった。
「節約だ。わかったかな?」
反応が予想外だったようで、すこし声を和らげてルシウスが繰り返した。
「あのー。でも環って自分の魔力だけでなく、外部からも魔力を調達できる術なんですよね? それなのに何で節約?」
「魔力を節約しなさい、ってことよね?」
「そう。24時間ずーっと、いつでも常に環を出し続けていられるほど魔力があれば良いのだが、通常はそこまでの魔力を持ってないことが多い。アイシャは問題なさそうだが、これは特にトオン向けの助言だな」
将来的には、環から環のための魔力を調達できる域まで達することができるよう目指すことになるという。
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