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第二章 お師匠様がやってきた

酒飲みにビールなしのイカフライはつらい

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 それから、夕飯のブリトーを食しつつ、魔力使いの世界での徒弟制度のことをもう少し突っ込んで聞いた。

「いつか、私たちも弟子を持つようになるのかしら」

 クミンで炒めた海老入りのブリトーを食べ終えたアイシャが、未来のことに思いを馳せている。

 ルシウスが言うには、弟子を育てるのは、楽しくて嬉しいというのもあるし、未熟な弟子たちを指導する中で己の反省点も多々見つかるのが大事なのだそうだ。
 その恥ずかしさを克服し更に成長していけるので、リンク使いとして完成した後は、必ずどこかの時点で弟子を育てるよう勧められる。

 そしてその弟子の成長に責任を持たされるとのこと。

「我らの系列の魔力使いたちは、円環大陸の全土に散らばっているから、機会があれば彼らを訪ねてみるといい。会えば現地での宿や食事の心配も要らぬし、多少なら小遣いだってくれる」

 実際、今も旅をしているカズンに対しても、フリーダヤとロータスのファミリーがそのようにして支援をしているそうだ。



「ああ……それなんだけど」

 ここでふたりはルシウスに、この地の穢れを浄化する際、力を得るためにアイシャが立てた誓いについて説明した。

「『このカーナ王国に骨を埋める』と誓約したのか。ほう、世界の外の“虚空”に? そんな大雑把な誓いでも“虚空”から力を引き出せるのか。ひとつ学んだぞ」

 少し物足りなかったといって、新たに買い足してきた山盛りのイカフライにライムを絞りながらルシウスが言った。

「む。ビールの欲しいやつだな……」
「飲みますか。買ってきますよ?」

 カーナ王国ではラガーもエールも、他国と比べてかなり安い。ふつうにジュースより少し高い程度。
 国内に麦の産地があって、主要生産品のひとつのためだ。

「いや、今日はやめておこう。話に集中したい」

 さっくり揚げたてのイカフライとライムの味に目を輝かせるも、少し残念そうな顔になりつつ、アイシャとトオンにも勧めてくれた。

「『この国に骨を埋める』以外の条件は?」
「いいえ、そういう条件設定はしていないわ。そんな時間もなかったし」

 アイシャは半年前、このカーナ王国の地下にある邪悪な魔力と穢れの発生源である古代生物の化石を、聖なる魔力でもって浄化した。
 その際、他者や外界から魔力を調達できるリンクを用いても魔力がまったく足りなかったので、本来、新世代のリンク使いならば必要ないはずの“代償”を用いて魔力を調達した。

 それが、このカーナ王国に『己の骨を埋める』こと。
 アイシャは当然、自分が死んだときこの国に墓を作って遺骨を埋めることを想定して、そのように誓約した。
 己のリンクを通じて、世界の外にある“虚空”と呼ばれる無限の領域に向けて、誓いを立てる形で己の存在を今後、カーナ王国に捧げると。

「だから、私はもうこの国から出ることはできないと思うの。元々、この国の聖女で居続ける覚悟はあったし、」
「その内容のどこに、『この国から出られない』条件が入っているのだ?」

 ないぞ、と言ってルシウスはイカフライを摘まんでいた指先の油を舌先で舐め取った。

「ふたりで、そのときの誓約にどういう条件が設定されたのか、詳細を調べてみるといい。文言が『このカーナ王国に骨を埋める』だけなら、ペナルティも不明のままだろう?」

 アイシャはトオンと顔を見合わせた。
 お師匠様から最初の課題が出た。




さっくり揚げたてイカフライにライムを添えて



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なお、ルシウスおじさんの故郷はあんまり揚げ物のない健康的な食文化の国です。デブ活しにくい夢の国。
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