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ユキレラショック! ご主人様がいなくなった!
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結果的に、王弟カズン呪詛事件では、ルシウスにも、リースト伯爵家にもお咎めはなしということで決着した。
むしろどちらも、王族の後継者争いに巻き込まれた被害者だ。
だが、やはりルシウスの兄のリースト伯爵カイルは、魔法魔術騎士団の次期団長の座を辞退した。
ルシウスが王弟カズンと息子ヨシュアから離れさえしなければ、起きなかった事件だからと。
彼は現在は副団長だったが、退団しようとしたことは現団長が許さなかった。
副団長から、団長補佐に降格で何とか留めさせた。
それで時機を見て、また次期団長候補に指名するのしないのと。
本家から正式に結果を告げる通達を受け取り、子爵ルシウスが塞ぎ込んでいる。
食欲もないようだし、お茶の時間になってもおやつにまったく手を伸ばしていない。
夜もあまり眠れていないようだ。
(これはいかーん! ご主人様が悲しいのはダメだっぺ!)
気分転換に近くのカフェでお茶でもして来ましょう、とユキレラは無理やりルシウスの背中を押してお出かけすることにした。
幸い、子爵邸のある区画は若い人向けのお洒落カフェや飲食店が多かった。
「きっともう、兄さんは僕に失望してしまっただろうね」
そう言って、ルシウスは麗しの美貌を翳らせてカフェオレを啜っていた。
「うーん。お咎めなしって上が言ってるんだから、はいそうですかって承ってそのままでいりゃいいと思います
「兄さんは繊細な人なんだ。きっとそれじゃ気が済まなかったんだと思う」
面倒くせえなあ、とユキレラは思ったが、口には出さなかった。
ご主人様のお兄様のことだ。口に出してはさすがに不敬になる。
ちなみにルシウスが、兄と同じように何かしら自ら罰を受けようとするなら、ユキレラは何が何でも阻止しようと決めている。
そんな自分で自分の首を絞めるようなことは、しないで欲しかった。
(はあ、どうしたらルシウス様のご機嫌が直るんけ?)
趣味の料理も気が乗らないようで、ここ最近はずっと近所の出来合いのものばかり食べている。
ユキレラも料理はできるが、何せど田舎料理ばかりなもので、油断するとずっと同じ煮込みやスープが続いてしまうのが難だ。
あまり良い案が浮かばないままに近場のカフェでお茶をしての帰り道。
「ルシウス様、夕飯用にパンでも買って帰りましょ……って、いない!?」
おしゃべりしながら歩いていたはずが、ふとユキレラが後ろを振り向くとご主人様の姿がなかった。
「る、ルシウス様ーッ!?」
どこか寄り道しているのだろうかと、カフェからの道を戻っても、どこにもいない。
辺りの通行人に訊ねても知らないと言う。
ユキレラもだが、あのご主人様は青みがかった銀髪がとてもキラキラと目立つので、見ていたら絶対に人々の記憶に残るはずなのだ。
もしや、ユキレラが鬱陶しくて一人で散歩に出てしまったのだろうか。
(いんや! ルシウス様はそういうことするお人でねぇ!)
仮に独りになりたいときは、必ず一声かけてくれるはずだった。
とりあえず子爵邸に戻り、夕方まで待ったがやはりルシウスは帰ってこない。
つい先日も王弟カズン絡みの事件が起こったばかりで、この事態は不安で仕方がない。
居ても立っても居られなくなったユキレラは、悩む前に馬車を出してリースト伯爵家の本邸へ向かうことにしたのだった。
むしろどちらも、王族の後継者争いに巻き込まれた被害者だ。
だが、やはりルシウスの兄のリースト伯爵カイルは、魔法魔術騎士団の次期団長の座を辞退した。
ルシウスが王弟カズンと息子ヨシュアから離れさえしなければ、起きなかった事件だからと。
彼は現在は副団長だったが、退団しようとしたことは現団長が許さなかった。
副団長から、団長補佐に降格で何とか留めさせた。
それで時機を見て、また次期団長候補に指名するのしないのと。
本家から正式に結果を告げる通達を受け取り、子爵ルシウスが塞ぎ込んでいる。
食欲もないようだし、お茶の時間になってもおやつにまったく手を伸ばしていない。
夜もあまり眠れていないようだ。
(これはいかーん! ご主人様が悲しいのはダメだっぺ!)
気分転換に近くのカフェでお茶でもして来ましょう、とユキレラは無理やりルシウスの背中を押してお出かけすることにした。
幸い、子爵邸のある区画は若い人向けのお洒落カフェや飲食店が多かった。
「きっともう、兄さんは僕に失望してしまっただろうね」
そう言って、ルシウスは麗しの美貌を翳らせてカフェオレを啜っていた。
「うーん。お咎めなしって上が言ってるんだから、はいそうですかって承ってそのままでいりゃいいと思います
「兄さんは繊細な人なんだ。きっとそれじゃ気が済まなかったんだと思う」
面倒くせえなあ、とユキレラは思ったが、口には出さなかった。
ご主人様のお兄様のことだ。口に出してはさすがに不敬になる。
ちなみにルシウスが、兄と同じように何かしら自ら罰を受けようとするなら、ユキレラは何が何でも阻止しようと決めている。
そんな自分で自分の首を絞めるようなことは、しないで欲しかった。
(はあ、どうしたらルシウス様のご機嫌が直るんけ?)
趣味の料理も気が乗らないようで、ここ最近はずっと近所の出来合いのものばかり食べている。
ユキレラも料理はできるが、何せど田舎料理ばかりなもので、油断するとずっと同じ煮込みやスープが続いてしまうのが難だ。
あまり良い案が浮かばないままに近場のカフェでお茶をしての帰り道。
「ルシウス様、夕飯用にパンでも買って帰りましょ……って、いない!?」
おしゃべりしながら歩いていたはずが、ふとユキレラが後ろを振り向くとご主人様の姿がなかった。
「る、ルシウス様ーッ!?」
どこか寄り道しているのだろうかと、カフェからの道を戻っても、どこにもいない。
辺りの通行人に訊ねても知らないと言う。
ユキレラもだが、あのご主人様は青みがかった銀髪がとてもキラキラと目立つので、見ていたら絶対に人々の記憶に残るはずなのだ。
もしや、ユキレラが鬱陶しくて一人で散歩に出てしまったのだろうか。
(いんや! ルシウス様はそういうことするお人でねぇ!)
仮に独りになりたいときは、必ず一声かけてくれるはずだった。
とりあえず子爵邸に戻り、夕方まで待ったがやはりルシウスは帰ってこない。
つい先日も王弟カズン絡みの事件が起こったばかりで、この事態は不安で仕方がない。
居ても立っても居られなくなったユキレラは、悩む前に馬車を出してリースト伯爵家の本邸へ向かうことにしたのだった。
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