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アリア編

147 貧民街

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「母ちゃん!レミィ!」

ボロ屋に着いた途端、少年が家に飛び込んで行った。


「とにかく中に入ってみよう」
「貧民街か。ここでの生活はキツそうだ」

中に入ると奥に藁が敷いてあり、誰かが寝ているのがわかった。
少年がその横に座って一生懸命呼びかけている。
母親らしき人の横に、レミィという名の妹も寝ている。

あんまりこういうのは見たくなかったなあ・・・。

「母ちゃん、レミィ、ごめん。パンを持って帰れなかった・・・」
「ゴホッ、ゴホッ、・・・いいのよ。ルークは悪くないわ」
「ハアッ、ハアッ」

どっちも生きてるな?それならなんとかなりそうだ。

「失礼する」

母親がこちらに力の無い視線を向ける。

「誰?、ゴホッ」

棺桶を出して二人分のコップに聖水を汲む。

「これを飲むといいよ。何の病気かはわからんけどたぶん良くなるから。それとルーク、こっちを妹に飲ませるんだ」
「う、うん」

弱っている母親は疑いもせず聖水を飲んでくれた。妹の方も無事に飲ませられたようだな。

しかしかなり弱っていたみたいで、聖水を飲むと二人ともまた寝てしまった。


「とりあえずはこれで死ぬことはないだろう」
「本当!?」
「ルークがさっき飲んだヤツと同じのを飲ませたからな。ルークの体調も良くなっただろ?」
「あっ、うん!」
「まあ万が一良くなっていなかったら、そんときゃ万能薬飲ませりゃ復活するさ」

あー、水ガチャの銀から出した万能ポーションだな。あれなら間違いないわ。

「体調は良くなっただろうけど腹は減ってるだろ?」
「うん・・・」
「よし、美味いもん食わしてやるからちょっと待ってな」
「病人には何がいいんだ?」
「そりゃー病人にはお粥だろ?」
「ホタテにしようぜ」
「セオリー完全に無視かよ!」
「わかった。んじゃお粥とホタテにしよう!」
「まあそれでいいか。んじゃ俺はお粥作るんでコテツはホタテの担当な」
「まかせろ!」

とはいえホタテは火にかけて醤油垂らすだけだし、ご飯はすでにホカホカのがアイテムボックスに入ってるから、あとは聖水でグツグツ煮るだけだ。


・・・・・


「よーし!お粥が出来たぞ」
「ホタテも準備オッケーだぞ。すでに匂いでルークの涎がヤバイことになっている」

ルークにお粥とスプーンを渡して、目の前にホタテをドーンと置いた。

「熱いからゆっくり食うんだぞ?さあ召し上がりになりやがれ!」
「ガフッ!!」

熱い言ってんのに一気に口に入れたから熱さで悶絶しておるわ。

「ハフッ、ガフッ」
「ハハハハッ!ゆっくり食えと言ったろうに、まあ腹減りすぎてて無理か」


「う、うう・・・」

「お!?母ちゃんが匂いで起きたみたいだぞ」

アニキが母ちゃんの所にもお粥とホタテを持って行く。

「どうだ?調子は」
「え?あの、これは一体・・・」
「食えるようなら食え。熱いからゆっくりな」

「うーん・・・」

妹も目を覚ましたな。妹の分のお粥を母ちゃんの横に並べる。つーかルークをあっちに移動させりゃいいのか。

「ルーク、あっちに移動だ。みんなで食ったほうが美味かろう」
「う、うん!」

寝床の前に移動しホタテをドーンと置いた。皿を数枚出して、それぞれに切り分ける。

「あ、あの。本当に頂いてもいいのでしょうか?」
「早く元気にならんと子供たちを養えんぞ。いいから食いな」
「ありがとうございます・・・」


母ちゃんと妹もようやく食べ始めた。

よっぽど腹を空かせていたのか、感動して泣きながら食べてるな。

「ママーおいしー!」
「本当に美味しい・・・」

あ、そうだ!

みんなのお粥の上にドラゴンチャーシューを乗せてあげた。

「元気になるにはやはり肉だろ!」
「ナイスだコテツ」

「うわーーー!これすっごく美味い!」
「おいしーーー!!!」
「こんなの今まで食べたことないわ・・・」


そして久々と思われる晩餐はようやく終了。


「本当にありがとうございました」
「良かったな。少しは元気になったか?」
「ええ。とても」

母親が立ち上がろうとしたが、ふらついて無理だった。
きっと長いこと病床にあったので筋力が弱っているのだろう。

「うーむ、しょうがねえ!」
「きゃあああ!」

ザバーン

アニキが母親を抱え上げ、やさしく棺桶にぶち込んだ。

「ちょ、ちょっと、これは一体」
「聖水だ。飲んでも浸かっても効くというスグレモノだ」
「聖水・・・」

わははは!アニキも強引だな。問答無用で放り込むとは。
子供らも驚いて目をまん丸くしてるぞ。

「どうだ?」
「え、ええ、すごく気持ちいいです。でも服がビショビショに・・・」
「着替えればいい」
「いえ、これしか服を持って無いのですが」
「なぬっ!?」

着替えも無いほど貧困だったのか。しかしもうすでにびしょ濡れだ。

「そいつはすまんかった!代わりの服を渡すので、それに着替えてくれ」

アニキがマジックバッグから箱を取り出し、一着の服を引っ張り出す。


そしてアニキが母親に渡したのはピンクのナース服だった。
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