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アリア編

122 盲点

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「大金持ちになったはいいが、まだドラゴン素材とかもあるんだよな」
「あーそっか!オレたちが持ってても使い道あんのかな?」
「もし使えるとしてもだ。着ている服はすでに最強、武器もまあ最強、正直ドラゴンの入る余地ナシだよなこれ」

ドラゴン素材ってのは鎧とか作るのに良さそうって感じだと思うから、装備が充実してるオレらには無意味としか思えん。今さら鎧なんか重くて着てらんないし。

「もう金いらんけどやっぱ売ろう。持ってても意味無さそうだし」
「でもよ、急いでこの街で売る必要も無いっちゃ無いから、とりあえず素材の価値がどれほどなのか調べまくって、ここぞというタイミングで売るのはどうだ?」
「まあオレら今セレブだしな」
「ぷっ、ハハハッ!まあセレブっちゃセレブか。でも本来セレブってのは有名人の事を指すらしいぞ。日本では金持ちってニュアンスで使われてるけどな」
「ほーーー」


話しながら歩いてたら暗くなってきたので宿屋に戻ることにした。


・・・・・


夕食は普通に定食って感じで美味かった。
そして金の山分けと今後の相談のため、オレの部屋に大集合した。二人だけど。

「今にして思えば大失敗だ」
「え?」
「大白金貨399枚と金貨100枚ってきっちり山分け出来ねえ!」
「ああああああああ!!」
「しゃーないからコテツに大白金貨199枚と金貨100枚渡して、俺は明日またどこかで金貨に両替するわ」
「わかったー」

あの状況じゃ山分けのことまで考えつかなくてもしゃーないよな。いきなりの大金でテンパってたし。むしろ金貨100枚に両替しただけでもグッジョブなくらいだ。

「んで山分け以外にも話したい事が一つあってよ。ギルドで登録した時のこと憶えてるか?」
「あー!文字わからん言われた!」
「そう、それよ。んで理由を考えてみたんだが、ステータス見てみろ」

ステータスを開いた。

「問題なのは固有スキルの所にある、異世界言語:自動翻訳だ」
「あー、これかあ」
「俺の予想ではまず、この世界の文字が自動で翻訳されるから、何を書いてるのか俺らにも読めると考えた。そして俺らの会話もきっと自動でこの世界の言語に変換されて相手に聞こえるのだろう」

自動翻訳ってくらいだからな。そういうことなのかもしれん。

「しかし俺らが書いた文字は日本語だ。この世界の人が自動翻訳を持って無ければ、日本語は読めないと思わんか?」
「あーーーーー!そういうことだったんか!」
「会話は翻訳されて相手にも伝わるのに文字は翻訳されないってのは不思議な所だが、十中八九、これが正解だと思う」

なるほどなー。普通に外人と会話出来たのは勝手に翻訳されてたのか。

「しかしその自動翻訳ってのが逆によろしくない場合もある」
「こっちが書いた字を相手が読めないってことだな!?」
「そういうわけだ。俺は字が書けない人のまま暮らすのが勘弁ならねえ!」
「んーーーまあ書いてもらうのはちょっと恥ずかしいかもなー」
「日本人の識字率ってのは、ほぼ100%なんだよ。赤ちゃん以外の全員が字を書けるし読める。すなわち俺らは今赤ちゃんなんだよ!」
「なんてこったーーーーー!!!」
「こんなの許せねえだろ!?日本人として字が書けないなんてこたぁあっちゃならねえんだ」
「もちろんだ!よし、字の勉強するぞ!」

なんてこったい!赤ちゃんからせめて3歳児くらいにはならんとな!

「ところがだ。恐ろしい事に字の勉強するのも不可能なんだよ」
「なんで?」
「誰かに字を教わろうとするだろ?その先生が紙にゴブリンと書いたとするだろ?するとだ・・・、自動で翻訳されてしまってゴブリンと読めてしまうわけだ」
「フムフム」
「どうやって字を覚える?」
「ガッデーーーーーーーーーム!」

あかん、無理だ。自動翻訳の罠だ。高性能ゆえの盲点じゃん。いい機能を付けてくれたのはありがたいけど、ちゃんと完成したのを搭載して欲しかった。文字だけ伝わらないとかさあ・・・。

「自動翻訳がまさか障害になってしまうとはな・・・」
「ダメじゃんこれ!もう赤ちゃんとして生きていくしかねえのか!」
「悲しいが俺らはもう赤ちゃんとしてハイハイで歩き回るしか無さそうだ」


とてつもない悲しみにオレとアニキは涙で枕を濡らして朝を迎えた。





************************************************************





宿屋の1階で朝食をとりながら昨日のことを考える。オレもアニキも無言だ。

自動翻訳ってのは素晴らしい機能だとは思う。
でも自動ってのがダメなんだよ。これが手動だったらなあ・・・。
せめてスイッチオフに出来ればいいのにさ。

・・・・・・出来ねえのか?

ステータスを開き、固有スキルの自動翻訳を見ながら『オフになれ!』と願う。


【固有スキル】
異世界言語:自動翻訳〈オフ〉


「ブフォッッッッ!!」
「うわ!なんだいきなり!?」

「ア、アニキ!自動翻訳、オフに出来た!!!」
「な・・んだと!?」

「うおおおおおおおおおおおお!!!問題が解決した!!ナイスだコテツ!」

「hpsカんdyめウ@zへ?」

あっ、女将さんが何か言ってるが意味不明だ・・・。翻訳オンにせんと。
強く意識するだけでオンオフは簡単に切り替えることが出来た。

「アニキ、問題は完全に解決だな!」
「よし、今日は文字を教えてくれる先生を探すぞ!」


今日の予定は急遽、文字を覚えることに決定した。
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