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アリア編
104 銀世界
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ザッシュ ザッシュ ザッシュ
猛吹雪の中どんどん先へ進んで行く。
一歩進むたびに太ももまで埋まるので走るのは無理だ。場所によってはズボっと頭まで埋まったりもする。
鍛えたおかげで埋まっても脱出は出来るんだが、ほんとキツいなんてもんじゃない。
頭上に転移してチビ結界を作り足場にして助かった、なんてことは一度や二度どころか日常茶飯事だ。
アニキも土壁で脱出は可能なんだけど、地面が遥か下だった場合その分MPを消費するので行軍するのに非常に効率が悪い。しかも1日の最後に砦を作らなければならないので、無駄なMP使用を避けるためオレが前を歩くことにした。
「へこたれそうなんですが!」
「ああ。雪中行軍がここまでキツいとはな・・・」
一面銀世界なので目もおかしくなってくる。
どこまで歩いても真っ白な景色しか無い。
「どわああああああああああ!」
イカン!これは埋まったんじゃなくて落下だ!
「転移!チビ結界!」
なんとか落下から逃れることに成功。あぶねー!すげえ落ちたな。
ジャンプしてチビ結界を作り、それを足場にまたジャンプと元の場所に戻る。
「コテツ!大丈夫か!?」
「死ぬかと思ったぞ!」
「これはたぶん崖だな。吹雪で視界はほぼ無いし目がおかしくなってるから気付かなかったが、よく見ると前方はずっと雪が無くなっている」
「くっそー!こんなんわかんないって!けどどうする?」
「今日はここまでだな。ここに砦を作る」
「わかった」
アニキが砦を作り中に入った。すぐ中央に木材を出して焚火で温まる。
「おーあったけぇ」
「こうしてみるとダンジョンって実は恵まれていたんだな。気温が一定なだけで十分すぎる恩恵だ。もし最初に雪の中に放り出されていたら死んでたな」
「雪って言ったら普通もっと楽しいモノじゃん。なんなのさこれ!邪悪すぎるぞ」
「でも俺らはマシな方かもしれん。特攻服や黒衣に冷気耐性付いてるからな」
「このローブも暖かいぞ!」
オレが黒衣の上にグリムリーパーのローブを着て、アニキは特攻服の上にネクロマンサーのローブを着てるんだが、ローブってフードが付いてるので雪避けになるんよ。猛吹雪の中で傘なんか役に立たんから今はこれがベスト。
「まさかいきなりローブの出番が来るとはな」
「アニキの特攻服だと雪と同化して見えなくなるから丁度良かったな!」
「まあ確かになー。んじゃ壁に数字彫ってオブジェの設置すっか」
アニキが壁に『2』と彫って、壁の前に石の雪ダルマを設置した。
「それじゃあ石ダルマじゃん!」
「雪だと溶けるだろ。テキトーだテキトー」
「よし、憶えた。部屋帰ろうぜ」
「だな。こんな所にずっといてもしゃーない」
「んじゃ転移!」
部屋に帰って来た。
「悲しいが、やっぱここが一番落ち着くなあ・・・」
「おークマたち、元気だったか!?」
雪中行軍の疲れを癒してくれるのはクマたちだけだ。
「マジで辛い旅だが、行軍は明日からも当然毎日続けるぞ」
「どこまで進めば雪無くなるんだろなー」
「さっぱり不明だ。一応入口の岩山から真っすぐ進んだとは思うんで、行けるとこまで突っ走るしかあるめえよ」
「あの崖どうする?」
「土壁を横に伸ばして橋を作る。もしくはコテツのチビ結界で渡るしかねえな」
「吹雪で先が見えないのが厳しすぎるな。前がちゃんと見えれば全然違うのに」
「まあな。しかし泣き言いっててもしゃーねえ。進むしか選択肢がねーんだ」
「クソー!絶対突破してやるからな!」
その日は黒龍ステーキで生気を付けぐっすり寝た。雪中行軍はまだ始まったばかりだ。
そして非常に歩みの遅い雪中行軍は何ヶ月も続くことになる。
************************************************************
―――――約半年後―――――
「アニキ、大変なことに気付いたぞ」
「ん?何がだ?」
「いつの間にか14歳になっている!」
「おおおおお!とうとう中二病か。おめでとう!」
「中二?くらいではあるが中二病ではない!」
「これは俺からのプレゼントだ」
アニキからセーラー服を授与された。
すかさず床に叩きつける。
「どうみても女物じゃねえか!」
「ハッハッハッハ!」
「ところでアニキは何歳になったんだ?」
「あー、・・・20歳だな。俺もとうとう成人か」
「これはオレからのプレゼントだ」
アニキに赤いランドセルを渡す。
すかさずアニキが背負おうとするが両腕が入らず床に叩きつける。
「ちっさくて腕が入らんわ!」
「わははははは!!」
「しかしダンジョンで2年以上過ごすハメになるとは思わなかったわ」
「全部クリアしたから、もう家みたいなもんだけどな!」
ずっとダンジョンで暮らしてる奴なんてオレらくらいなもんだろな。
慣れたとはいえこれが絶対異常なのはわかる。
「さあて、んじゃそろそろ雪中行軍開始とするか」
「今日はなんかやる気が漲ってるぞ!」
ということで行軍開始だ。
・・・・・
雪の中をどんどん進む。今日は吹雪いていないのでいくらでも進むことが出来るな。雪も膝までしか埋まらないから楽ちんだ。
そしてとうとう銀世界の果てに土の部分を見つける。
「アニキ!あそこに土が見えるぞ!」
「とうとう終わりが来たか!」
やっとだ!土を見ただけなのに、それがこんな嬉しいとはね。
猛吹雪の中どんどん先へ進んで行く。
一歩進むたびに太ももまで埋まるので走るのは無理だ。場所によってはズボっと頭まで埋まったりもする。
鍛えたおかげで埋まっても脱出は出来るんだが、ほんとキツいなんてもんじゃない。
頭上に転移してチビ結界を作り足場にして助かった、なんてことは一度や二度どころか日常茶飯事だ。
アニキも土壁で脱出は可能なんだけど、地面が遥か下だった場合その分MPを消費するので行軍するのに非常に効率が悪い。しかも1日の最後に砦を作らなければならないので、無駄なMP使用を避けるためオレが前を歩くことにした。
「へこたれそうなんですが!」
「ああ。雪中行軍がここまでキツいとはな・・・」
一面銀世界なので目もおかしくなってくる。
どこまで歩いても真っ白な景色しか無い。
「どわああああああああああ!」
イカン!これは埋まったんじゃなくて落下だ!
「転移!チビ結界!」
なんとか落下から逃れることに成功。あぶねー!すげえ落ちたな。
ジャンプしてチビ結界を作り、それを足場にまたジャンプと元の場所に戻る。
「コテツ!大丈夫か!?」
「死ぬかと思ったぞ!」
「これはたぶん崖だな。吹雪で視界はほぼ無いし目がおかしくなってるから気付かなかったが、よく見ると前方はずっと雪が無くなっている」
「くっそー!こんなんわかんないって!けどどうする?」
「今日はここまでだな。ここに砦を作る」
「わかった」
アニキが砦を作り中に入った。すぐ中央に木材を出して焚火で温まる。
「おーあったけぇ」
「こうしてみるとダンジョンって実は恵まれていたんだな。気温が一定なだけで十分すぎる恩恵だ。もし最初に雪の中に放り出されていたら死んでたな」
「雪って言ったら普通もっと楽しいモノじゃん。なんなのさこれ!邪悪すぎるぞ」
「でも俺らはマシな方かもしれん。特攻服や黒衣に冷気耐性付いてるからな」
「このローブも暖かいぞ!」
オレが黒衣の上にグリムリーパーのローブを着て、アニキは特攻服の上にネクロマンサーのローブを着てるんだが、ローブってフードが付いてるので雪避けになるんよ。猛吹雪の中で傘なんか役に立たんから今はこれがベスト。
「まさかいきなりローブの出番が来るとはな」
「アニキの特攻服だと雪と同化して見えなくなるから丁度良かったな!」
「まあ確かになー。んじゃ壁に数字彫ってオブジェの設置すっか」
アニキが壁に『2』と彫って、壁の前に石の雪ダルマを設置した。
「それじゃあ石ダルマじゃん!」
「雪だと溶けるだろ。テキトーだテキトー」
「よし、憶えた。部屋帰ろうぜ」
「だな。こんな所にずっといてもしゃーない」
「んじゃ転移!」
部屋に帰って来た。
「悲しいが、やっぱここが一番落ち着くなあ・・・」
「おークマたち、元気だったか!?」
雪中行軍の疲れを癒してくれるのはクマたちだけだ。
「マジで辛い旅だが、行軍は明日からも当然毎日続けるぞ」
「どこまで進めば雪無くなるんだろなー」
「さっぱり不明だ。一応入口の岩山から真っすぐ進んだとは思うんで、行けるとこまで突っ走るしかあるめえよ」
「あの崖どうする?」
「土壁を横に伸ばして橋を作る。もしくはコテツのチビ結界で渡るしかねえな」
「吹雪で先が見えないのが厳しすぎるな。前がちゃんと見えれば全然違うのに」
「まあな。しかし泣き言いっててもしゃーねえ。進むしか選択肢がねーんだ」
「クソー!絶対突破してやるからな!」
その日は黒龍ステーキで生気を付けぐっすり寝た。雪中行軍はまだ始まったばかりだ。
そして非常に歩みの遅い雪中行軍は何ヶ月も続くことになる。
************************************************************
―――――約半年後―――――
「アニキ、大変なことに気付いたぞ」
「ん?何がだ?」
「いつの間にか14歳になっている!」
「おおおおお!とうとう中二病か。おめでとう!」
「中二?くらいではあるが中二病ではない!」
「これは俺からのプレゼントだ」
アニキからセーラー服を授与された。
すかさず床に叩きつける。
「どうみても女物じゃねえか!」
「ハッハッハッハ!」
「ところでアニキは何歳になったんだ?」
「あー、・・・20歳だな。俺もとうとう成人か」
「これはオレからのプレゼントだ」
アニキに赤いランドセルを渡す。
すかさずアニキが背負おうとするが両腕が入らず床に叩きつける。
「ちっさくて腕が入らんわ!」
「わははははは!!」
「しかしダンジョンで2年以上過ごすハメになるとは思わなかったわ」
「全部クリアしたから、もう家みたいなもんだけどな!」
ずっとダンジョンで暮らしてる奴なんてオレらくらいなもんだろな。
慣れたとはいえこれが絶対異常なのはわかる。
「さあて、んじゃそろそろ雪中行軍開始とするか」
「今日はなんかやる気が漲ってるぞ!」
ということで行軍開始だ。
・・・・・
雪の中をどんどん進む。今日は吹雪いていないのでいくらでも進むことが出来るな。雪も膝までしか埋まらないから楽ちんだ。
そしてとうとう銀世界の果てに土の部分を見つける。
「アニキ!あそこに土が見えるぞ!」
「とうとう終わりが来たか!」
やっとだ!土を見ただけなのに、それがこんな嬉しいとはね。
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