上 下
86 / 183
ダンジョン編

86 頭スッキリでテンション高め

しおりを挟む
「頭すげー軽くなったぞ!いやースッキリした」
「そんな感じで問題ねえか?」
「全然オッケーだ!アニキ髪切るのうめーな!」

合わせ鏡で後頭部も写して見せてくれた。もうパーフェクトだよ。

「コテツの中二感溢れる服装だと長髪のほうが女にモテるかもだし、今度伸ばしてみっか?」
「ほう。モテモテか!伸ばすのもアリだな!」
「まあ結局は女の好み次第だろうから、どっちがいいとも言えないんだがな」
「アニキは伸ばさんのか?」
「今は短いほうがいいな。ダンジョンから出たら伸ばす可能性は無くもない」
「なるほど。ダンジョンに女いねーもんな!オレも出てから伸ばそう」

基本ツンツン頭のコテツだが、女にモテたいという野望はあるのだ。
アニキも貫禄を出すためにリーゼントだったが、場合によっては長髪もアリだと思ってる。

「頭シャッキリしたところでどうするかだな。赤ゴブはまだだろうし」
「オレは当然クマ彫るぞ!勘を取り戻さなければならん」
「あー、それだ。麻雀牌と将棋の駒にニス塗る仕事あるんだった」

ということでそれぞれの持ち場に付く。


さっきのクマは魂がこもって無かった。オレの心構えがヌルかったのだ。

民族衣装に着替えて、封印していたヒゲを取り出し久々に装着する。
これだ、・・・力が漲って来る。何をするんでも形から入るのが正解なのだ。
巨大クマを作るのはまだ早い。感を散り戻すまでの我慢だ。
精神統一、そして彫刻刀を構え、チビハンマーを振り下ろした。


・・・・・


「悪くない。だが全盛期に戻るまであとクマ2匹は作る必要があるな」

「ハハハハハハハッ!コテツ、何だその恰好は!あとそのヒゲ!」
「ん?木彫り職人の正装だぞ!今日は本気なんでな」
「フフッ!ヒ、ヒゲも正装なのか?」
「露店でクマ彫ってる職人見たことない?全員ヒゲモジャだぞ」
「んーーー見たことあったっけかなあ?そういう恰好は祭りとかで見たかもしれんが」
「とにかくこれで完璧なのだ。アニキも着てみるとわかるが気合入るぞ!」
「そ、そうか?まあ俺はいいや。邪魔して悪かったな。続けてくれ」
「ウム。巨大クマ挑戦の前に2匹作らねばならぬ」

というわけで続行だ!


・・・・・


目の前には木彫りのクマが3匹。最後に作ったクマなどは会心の出来と言えよう。感は取り戻した。足りないのは大木だけだ。
ってことで早速木を収穫しに狩り場へ向かった。


部屋に戻り木を乾燥させ、作り上げるクマの大きさを想定する。木の一番太い部分を使ってコレくらいか・・・。いつもの2倍近い大きさだ!やれるのか!?

求めるのは野生の臨場感。ピチピチと跳ねるシャケを咥えているクマだ。立ち上がって襲い掛かろうとするクマと悩んだが、それを作るにはクマの観察が足りてない。正直オレの力不足だ。いつかきっと成し遂げて見せよう。

大きさは大体掴めた。ノコギリで程良い大きさに大木を切る。
震えて来た。武者震いというヤツか・・・。落ち着け、精神を研ぎ澄ませろ。イメージは出来ている。あとは突き進むのみ!

カーーーーーーーン!

魂を込めたハンマーが振り下ろされた。





************************************************************





「完成だ・・・」

今持っている力を全て投入し完成した巨大クマ。この大きさだと1匹じゃなくて、もはや1頭のレベルだな。
出来の方は正直言うと80点くらい。やはり大きいとその分調整が難しいのだ。しかし逆に言うとクマ職人への道はまだまだ深いという事だ。

「お?完成か?」

「80点ってとこだけどまあまあの出来だとは思う」
「俺には文句ナシの出来に見えるぞ。溢れ出すパワーを感じる」
「毛並みの再現がちょっとヌルいんだよね。大きくなった分荒くなってしまった」
「なるほどな。でもニスは塗るんだろ?」
「うん、塗る。巨大クマと、その前に作ったクマ3号に」
「ホントは色も付ければ、なお良いんだろうけどな」
「絵の具的に無理だねぇ。それに色を塗るなら、今度は塗りの技術も極めないと」
「職人の道は果てしなく険しいな」

「アニキはニス塗り終わったん?」
「おう、それはもうすでに完成だぞ。むしろ時間余って木刀作ってた所だ」
「見せて見せて」
「いいけどまだ触るのはナシな。乾いてはいると思うんだが1日放置でより完璧にしたい」
「たしかにその通りだ。最後に気を抜いて失敗するのは職人失格だ」

「こんな感じだ。まず先に裏側にニスを塗って、乾いた所で全面を塗り、あとは立てた状態で1日放置って作戦よ」
「なるほど!先に裏から塗るとはナイス判断!」
「垂れるほど塗りすぎないのがコツだ。水玉みたいのが出来るとマズイだろ?」
「ニス塗りも奥が深いな!」
「麻雀牌の方はマジで悩んだ。素材その物がいいからニス無しでも完成に近くてよ。だが使ってるうちに絵の具が剥がれて汚れる姿を想像し考え直した。牌を叩きつけた時の音は劣化するだろうけど、ニスのコーティングはやはり必要だろう」
「な、なるほど。参考になったぜ!」


アニキの麻雀牌における職人魂も凄まじいモノがあるな・・・。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...