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ダンジョン編

82 ゴブリン流槍術、免許皆伝へ

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ゴブさんに弟子入りしてから2週間くらい経っただろうか。
ちょっと修行が長引いてしまってアニキには悪いことをした。

「とうとう赤ゴブと本気勝負か・・・」

そう、ヤツとの決着をつける時が来たのだ!槍の師匠だけど。

「結界張るからこっちがやられることは無いけどね」
「なるほど。んじゃ赤結界で戦うのはどうだ?死にはしないが怪我はする、ギリギリのスリルを味わえるぞ?」
「おー!それはいいアイデアかも。たしかにこっちが無敵じゃ勝負になってないもんな。とはいえ修行で死ぬわけにもいかないし、赤結界ならちょうどいいか」

「ならば俺が勝負の見届け人になろう。修行の成果、見せてもらうぞ!」
「水竜の時に見せた無様な戦いは、そう・・・アレは世を忍ぶ仮の姿よ!今日はアニキに本気のオレをとことん見せてやるぜ!」

どこかで聞いたセリフを吐きながら士気を高める。

そう。あの時とは全然違うのだよ!今やもう手足のように槍を振り回せる。
完成されたゴブさんの動きをただコピーしたわけでは無い。それを吸収し、自分に合う戦い方に発展させたのだ。なんせ体型が全然違うから、そのまんまコピー出来なかったんよね。なので自分なりに槍術をアレンジした。
ゴブさん流槍術には変わりないけど、コテツ流槍術道場を立ち上げてもいいくらいだ。
そしてゴブさんを撃破すれば、いよいよ免許皆伝を名乗れる!

本来なら結界使わずに戦いたいとこだけど、ゴブさんってばまるで容赦ナシだからさすがに危険すぎて無理だ。暴君みたいな師匠だから一気に強くなれたんだけどね。

両ほっぺをピシャッと叩いて気合を入れる。

「殿の出陣じゃあああああああ!」
「ハハハッ!」


・・・・・


ゴブさんとの戦いは一瞬で始まるから入口で赤結界を張る。消費MPは40なので最大で9回赤結界を使える。もちろんそこまで長く戦うつもりは無い。そして加速はもちろん転移も今回の戦いでは封印だ。小細工して勝っても免許皆伝は名乗れないから。

「んじゃ行って来るぞ!」
「おう、頑張れ!」

シュタタタタタタ

「グギャギャギャギャギャ!」

コテツ訳『ほう?今日は本気のようだな。いいだろう、かかって来い!』

「言われなくてもこっちから行くぜ!」

初っ端から必殺の3連撃を繰り出す。
右からの横薙ぎ、そして左から槍を一閃、しかしここで槍を弾かれる。
体勢を乱したところにゴブさん渾身の振り下ろし。落ち着いて黒槍でガード。

一進一退の攻防が続く。

ゴブさんの左上段からの袈裟斬りに反応し、咄嗟にガードの体勢をとるが袈裟斬りはフェイント。左下段から足を狙った斬撃に切り替わりそれをジャンプ。しかしこれもフェイント。空中で身動きがとれない所を石突で突かれ、なんとか体をひねるが結界を破壊され吹き飛ぶ。

「ガハッ!」

脇腹に激痛が走る。すかさずポーションのビンに入れてあった聖水を飲む。

「お化け赤!」

くっそ、脇腹がズキズキする。
ゴブさんやっぱつえーなあ・・・。下段攻撃までフェイントかよ。
一本目はゴブさんに取られたな。だが次はこっちがいただく!

低い耐性で駆け寄りゴブさんの足を狙った斬撃を繰り出す。
ゴブさんはそれを、ただ槍を地面に突き立てるだけでガード。

だがそれは前にも見た!

地面に突き立てたハルバートを軸に黒槍を回転させ、石突でゴブさんを突く。

「ギャアッ!」

よしッ!決まったぞ!!!
これでお互い脇腹にダメージを抱えたわけだ。こっちは聖水飲んだけど。
スマンなゴブさん、これくらいは許してくれ。

そこからコテツ怒涛の反撃が始まる。

高速の三段突きを放ち、ゴブさんが後ろに下がった所を低姿勢でさらに追撃。
ゴブさんの足に深い傷を与えることに成功。
怒りの振り下ろしが来るが、怒りに任せた攻撃など当たらん!
紙一重で攻撃を躱した直後、左下段から黒槍を振り上げゴブさんがそれを槍でガード。

しかしそいつぁフェイントだ!

体を一回転させ右上段からの袈裟斬り。
ゴブさんの肩から胸を斬り裂き、左から槍を一閃。
その鋭い斬撃は腹を抉り、そしてトドメとなる渾身の突きに黒槍の刺突速度強化が加わり、その超高速の突きはゴブさんの体を容易くたやすく貫いた。

「ギャギャ」

最後にそう言い残し、ゴブさんがついに倒れる。


【レベルが上がりました】



「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ・・・」
「見事だ!コテツ」

アニキがパチパチを拍手をしながら出迎えてくれた。

「勝ったー!」

それだけを言い、床に大の字に倒れる。

ゴブさんが最後にしゃべった一言。
それは『よくやった』と褒められた気がした。

免許皆伝名乗ってもいいよな?ゴブさん。



・・・・・



「コテツの戦いを見て久々に魂が震えた。俺も赤ゴブとタイマン張るぞ!」

「おおおおー!!アニキもやるのか!」
「当然だ!狩りで溜め込んだストレスを発散出来る相手は、赤ゴブをおいて他には無い!」
「ハハッ!たしかにそれならゴブさんがベストだな!」


こうして【アニキ vs 赤ゴブリン】のタイトルマッチ開催が決定した。
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