786 / 798
786 ディグダム、制圧完了
しおりを挟む「うらああああアアアアア!!」
ザシュアッ!
セイヤ渾身の一撃で、斧使いの大男が力尽きた。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
「ゴホッ!ゲホッ!ハあっ、ふーーーーっ、今ので終わりか?」
超激戦による疲労で、ケンちゃんもセイヤもかなり消耗しているようだ。
それでも力を振り絞り、周囲を警戒する。
「立ってる敵はいねーけど、死んだふりしてる奴がいるかもだから注意しろ」
「地面が死体まみれで判別つかねーーーーー!」
キョロキョロしていたセイヤがこっちを見た。
「えーと・・・、ピカピカさん達!そっちも終わったんスか?」
ピカピカさんって何だよ!?
ヒーロー達の長い名前が覚えられなかったんだろうけど。
「とっくに終わっている」
「この死体の山はどーすんだ?」
「もしかして装備品を全て剥ぎ取るのか?」
「俺らはただの助っ人だ。そんな面倒な仕事はやらんぞ」
面倒な仕事ってだけならまだしも、死体から装備品を剥ぎ取るのって精神がゴリゴリ削られるんだよ・・・。こんなん俺だってやりたくねー。
「剥ぎ取りは街の人間にやらせる。報酬として食料を渡すと言えばむしろ喜んでやる筈だ。先ずは奴らの住処から食料を手に入れる。根こそぎだ」
「「ハイッ!」」
ゼーレネイマスがこっちを見た。
「貴様等は此処の見張りを頼む」
「「血の海に置いていく気か!!」」
戦闘以外で俺達を働かせる気はないみたいだから最低限の配慮は見えるのだが、この血の海地獄に残されるのもキツイぞ!
まあでもある意味宝の山なわけだから、誰かが見張ってないと、街の人に剣や鎧を持っていかれちまうんだよな・・・。
とか考えているうちに三人がいなくなってしまったので、一番死体の少ない門の手前に集合した。
でも数十の死体が邪魔だったので、清光さんが土魔法で押し出し、安全ゾーンを広げている。
「なかなかの大仕事だったな!」
「でも街を包囲していなかったから何人も逃げ出してるだろな。挙兵するにしても、訓練もろくにしないままレザルド軍本隊と激突することになるかもだ」
「全然ダメじゃねえか!」
「どうするの?私達だけならともかく、兵が無駄死にしちゃうよ?」
「いや、どうするも何もオレらはただの助っ人だぞ。魔王の考えた通りに動くしかねーだろ!」
「あの男は強いだけじゃなく切れ者だ。しかも大魔王だけあってカリスマ性も兼ね備えている。アホみたいな無茶な行動はするだろうけど、間抜けなことはしない」
「付き合いは短いが、お前の言ったままの印象だな。気にしたら負けだ」
どうやら周囲のお片付けが終わったようで、清光さんが戻って来た。
「お疲れ様です」
「アニキお疲れ!動いたら腹減ったな~」
「この状況で腹が減るとは凄いな!いや、そもそもメタルヒーローは口が塞がっているから何も食えないだろ」
「たとえ食えるとしてもだ。1000を超える死体の真ん中にテーブルを出してお食事とか、サイコパス過ぎますぞ!」
「しかもピカピカのメタルヒーロー達の食卓だ」
ぷっ!
想像したらシュール過ぎて噴き出してしまった。
「こんな場所で食事とか、血生臭すぎて無理だよ!」
・・・あれ?
「気付いたんだけど、全然血生臭くなくね?」
「言われてみると、普通に清々しい空気だな」
「うぇえええ!?」
「なるほど、バトルスーツが匂いをシャットアウトしているのか。息苦しさも無いから密封されている感じでもないのだが」
「だから腹減ったのかもな!」
「ピカピカずるい!私なんて鼻が曲がりそうなのに!」
「ほれ」
レミィに不織布マスクを二枚手渡した。
デラックスガチャの緑カプセルから手に入れたヤツだ。
「あ!これ大掃除の時にもらったヤツだ!レナ、はい!」
究極のブートキャンプで魂の抜けていたレナが、マスクを手に取り首を傾げた。
「こうやって隙間なく装着すれば、少しは匂いもマシになるよ!」
見様見真似で、レナも不織布マスクを装着した。
「なるほど・・・、でも少し呼吸が苦しいです」
「それは我慢して!少し苦しいだけで死ぬほどじゃないから」
しかし現場の匂いがしないってのはデメリットでもあるのか。
火災が発生していても気付けないし、殺人が起きていても気付けな・・・ん?
「あれ?おかしいぞ!?処刑場ではちゃんと血の匂いを感じたハズだ」
「あ!そういえばあの時はちゃんと匂いがした!」
「もしかして、酷い匂いだと感じた自分が無意識で、匂いの原因である血の匂いだけを遮ったのか?」
「かもしれねえ。バトルスーツの性能って半端ねえな・・・」
「ピカピカずるい!その姿で暮らすのは嫌だけど」
「刀が装備出来ないから、あまりオススメはできんな」
「メシも食えねえぞ!」
生活に支障は出るが、バトルスーツの性能自体はやべえな。
時間潰しに、レミィにメイスを持たせて、チビ結界の強度を青→緑→赤→銀とランクアップさせて破壊させて遊んでいると、ようやく三人が帰って来た。
門の前が片付いていたので、嫌な顔をしながら死体を乗り越え、俺達のいる所まで歩いて来た。
「ケン、セイヤ。その辺の建物を一軒一軒回り、食料を見せつけながら、己の意志で剥ぎ取りの仕事に参加する者を集めろ。強制では味方にならぬ」
「「了解です!」」
「ちょっと待て。いい物をやろう」
次の仕事を始めようとしていた三人が振り向いた。
アイテムボックスから拡声器を取り出しケンちゃんに渡す。
「これは声を大きくする魔道具だ。使い方を教えてやる」
アイテムボックスから自分の拡声器を取り出し、説明しながらスイッチをON。
えーと?北東に向かっていて左から回り込んだから・・・西門かな?
『ディグダムの住民達聞こえるか?街の西門の辺りで、弱いくせに粋がっていたレザルド軍の奴らを一網打尽にした!だが死体から装備品を剥ぎ取りたいので、食料と引き換えに、剥ぎ取りを手伝ってくれる人達を募集する!』
1分待ってから、もう一度拡声器で呼び掛ける。
『もう一度言うぞー!剥ぎ取りの仕事を手伝ってくれる人達を募集する!報酬は三日分の食料だ!西門に集まれ!』
「次はケンちゃんがやってみろ」
「は、はい!」
『弱き者を虐げるレザルド軍のクズ共は皆殺しにしてやったぞ!みんな聞け!俺達は弱き者の味方だ!私腹を肥やしていたレザルド軍の奴らから、溜め込んでいた食料を取り戻したぞ!街の西側の門だ。アイツらの無様な姿を見に来い!』
「素晴らしい呼び掛けじゃないか!ケンちゃん素質あるな!」
「へへっ!今みたいな感じでいいんスね!?」
「100点満点だ!」
そうこうしている間に、腹ペコの住民達が家から出て集まり始めた。
ようやく次に進めるな!
28
お気に入りに追加
1,225
あなたにおすすめの小説
ド底辺から始める下克上! 〜神に嫌われ無能力となった男。街を追放された末、理を外れた【超越】魔法に覚醒し、一大領主へ成り上がる。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
この世界では、18の歳になると、創造神・ミーネより皆に魔力が授けられる。
捨て子だったハイネは教会に拾われたこともあり、どれだけ辛いことがあっても、ミーネを信奉し日々拝んできたが………
魔力付与式当日。
なぜかハイネにだけ、魔力が与えられることはなかった。日々の努力や信仰は全く報われなかったのだ。
ハイネは、大人たちの都合により、身体に『悪魔』を封印された忌み子でもあった。
そのため、
「能力を与えられなかったのは、呪われているからだ」
と決めつけられ、領主であるマルテ伯爵に街を追放されてしまう。
その夜、山で魔物に襲われ死にかけるハイネ。
そのとき、『悪魔』を封印していた首輪が切れ、身体に眠る力が目覚めた。
実は、封印されていたのは悪魔ではなく、別世界を司る女神だったのだ。
今は、ハイネと完全に同化していると言う。
ハイネはその女神の力を使い、この世には本来存在しない魔法・『超越』魔法で窮地を切り抜ける。
さらに、この『超越』魔法の規格外っぷりは恐ろしく……
戦闘で並外れた魔法を発動できるのはもちろん、生産面でも、この世の常識を飛び越えたアイテムを量産できるのだ。
この力を使い、まずは小さな村を悪徳代官たちから救うハイネ。
本人は気づくよしもない。
それが、元底辺聖職者の一大両者は成り上がる第一歩だとは。
◇
一方、そんなハイネを追放した街では……。
領主であるマルテ伯爵が、窮地に追い込まれていた。
彼は、ハイネを『呪われた底辺聖職者』と厄介者扱いしていたが、実はそのハイネの作る護符により街は魔物の侵略を免れていたのだ。
また、マルテ伯爵の娘は、ハイネに密かな思いを寄せており……
父に愛想を尽かし、家を出奔し、ハイネを探す旅に出てしまう。
そうして、民や娘からの信頼を失い続けた伯爵は、人生崩壊の一途を辿るのであった。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
異世界でスローライフを満喫する為に
美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます!
【※毎日18時更新中】
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です!
※カクヨム様にも投稿しております
※イラストはAIアートイラストを使用
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる