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766 三河大名、流星城に逃亡する

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 清光商店での買い物も終わり、全員ホクホク顔で談笑している。


「ルシオ、それは!」
「オレンジ色のソファーの下に埋もれているのを見つけました!」
「白い水玉模様の微妙なソファーか!クッソーーーーー!さすがにアレは欲しいと思わなかったから眼中に無かった。お宝はその下に眠っていたのか!」


 何の話をしているのかというと、なんとルシオが腕時計をゲットしたのだ。
 本日一番のお宝と言えるだろう。

 清光さんも、『そういや腕時計も出てたっけな。バイクにしか興味が無かったからその辺に放置したが勿体なかったか・・・。まあでも商品として売りに出してしまったからにはもうお前のもんだ!』と、気前良く売ってくれた。

 今日の清光さんはとても気分が良いので、仏様並みに心が広いのだ。


「清光さん、バイクの強化完了です。これでもう嵐の中を走ろうが縁石に乗り上げようが無敵です」
「終わったか!これで安心してかっ飛ばせるぜ。マジで感謝するぞ!」

 ずっと目を逸らさずバイクの強化が終わるのを待っていたので、振り向く動作すら無しで返事があった。それほどまでにコイツに乗るのを楽しみにしていたわけだ。

 清光さんがバイクを鑑定して性能チェックしている。

「よーーーし!これで特攻隊長の訓練が捗りそうだ。、あ、俺も流星城でメシを食いたいのだが一緒していいか?」
「ん?俺達と一緒に?どうしてですか?」
「レメシス城に入った瞬間死ぬからだ」

 急に変なことを言い出した理由が判明した。

「あ~、そう言えば袋叩きの刑が確定していましたね・・・」
「すでに覚悟はできているが、せめてバイクを乗り回してから死にたい」
「いや、死にはしないでしょ!半殺しくらいで済みますよ」
「聖水で治療するのも禁じられるから、そうなると特攻隊長のバイクの訓練にも支障が出る。もうこの作戦しか無かろう」
「まあ教官を頼んでいる立場ですので食事くらい構いませんけど、虎徹さんを帰したらシルヴァラさん達がやって来て連行されるんじゃないですか?」
「そうか!コテツを帰すわけにゃいかんな。夕食二人分頼む!」
「そういえば、今日の夕食はラーメンだって和泉が言ってた気がする」
「マジか!味は?」
「味噌・塩・醤油。選択できますよ」
「醤油で頼む!」
「食堂で和泉に注文すればいいだけなんですけど、じゃあ俺が一緒に注文しときますね。虎徹さんは何味が好きなんだろ?」
「ラーメンなんてこっちに来て一度も食ってねえから知らん」
「あ、そうだったのですか!?今日はラッキーでしたね。和泉監修のラーメンはマジで美味いですよ~」

「いたいた!・・・あーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 ガチャ部屋に虎徹さんが現れたと思ったら、驚きながら駆け寄って来た。


「バイクじゃん!マジでゲットしたのか。アニキおめでとーーーーー!」
「おう!サンキューな」
「しかもメチャクチャ格好良い!タイヤの大きさがいいな。いつものバイクはちょっとタイヤがデカすぎるからな~」
「それな。長距離トラック用のタイヤしか無かったから、どうしてもあんな感じのワイルドなバイクになっちまう」

 あれ?もしかして三河ってまだタイヤの開発が進んでなかったのか!

「清光さん、明日空いてますか?」
「ん?労役の予定だが?」
「実はですね、知り合いの店がタイヤの開発に成功したんですよ」

「「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」

「もちろん作り方は店のトップシークレットですが、バイクを見せれば、この大きさのタイヤを量産出来るハズ」
「連れてってくれ!いやマジか・・・、タイヤさえ手に入れば色んなバイクが再現できるぞ!」
「うおおおおおおおおお!三河にバイク屋が誕生するのか!!」
「バイク屋の店長が三河大名ってどうなんですかね!?」
「面白くなってきやがった!ボコボコにされようがもう完全にノーダメだ!」
「あ、虎徹さん。ラーメンは何味が好きですか?味噌・塩・醤油の三択です」
「いや、なんでいきなりラーメンの話になるんだよ!!オレは味噌派だな」
「了解です。今日はこのまま流星城に来て下さい。ラーメンを御馳走しますので」
「マジで!?」
「清光さんも一緒ですよ。せめてバイクに乗ってから死にたいと最後の晩餐です」
「わはははははは!処刑されるから逃げるのか!」
「逃げるのではない!特攻隊長を鍛えに行くだけだ」

「おーーーーい。そろそろ帰るぞーーーーー!」


 おっと!親父に呼ばれてしまった。

 こっちも盛り上がっていたが仲間達も今日の戦利品で盛り上がっていて、親父の声が無かったらしばらく談笑が続いていたかもしれん。

 じゃあそろそろ帰りますかね~。



 ・・・・・



「なんで清光くんと虎徹くんがいるのよ!?」
「魔石の横領罪で、三河に帰ったら袋叩きの刑に処されるから逃げてきたのだ」
「あははははははははは!馬鹿すぎるーーーーーーーーーー!!」
「ってことで、清光さんが醤油、俺と虎徹さんは味噌、親父とグミは塩で頼む」
「はいはーい」


 和泉にラーメンを注文してからいつものテーブルに戻ると、親父がグミからメチャメチャ説教されていた。仕事を放り投げてダンジョン行ってるからな~。

 清光さんと虎徹さんはミスフィート軍の食事風景を見て、三河との違いを話し合って盛り上がっている。

 向こうではシルヴァラさんが料理長的な立ち位置で、食事はほとんど洋風でビッフェ形式らしい。料理も普通に美味いからあまり口出ししなかったので、ラーメンが出ることも無かったもよう。

 カレーの作り方を教えたら激辛カレーしか出てこなくてみんなカレーを恐れていると聞いて大爆笑していたら、ようやくラーメンが運ばれてきた。


「「美味え!!」」


 当然ながら和泉監修のラーメンは大絶賛だった。

 今にして思えば、料理の達人がいるってのは恵まれてるよな~。
 おかげでミスフィート軍の料理人はみんな凄腕料理人だ。

 本当に和泉には頭が上がらんですよ。
 あとで高い高いしてあげよう。
 
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