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734 お嬢にガチャの攻略法を伝授する

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 時空魔法のレベルが8になったことで、強化した指輪との合わせ技で俺達の住む世界とアリアダンジョンの行き来が可能となった。

 これで虎徹さんの労役が終わってもアリアダンジョンを攻めることが出来るようになったので、彼に依存することなく好き勝手動けるぞ!

 俺が毎日マジックバッグ作りやアイテムボックスの拡張ばかりしていたのは、仲間達に渡したかっただけじゃなく、時空魔法のレベル上げも兼ねていたからなのだ。

 マジックバッグが欲しくて堪らない仲間達はまだまだいるので、それはもちろん続行するんだけど、とりあえずの目標は達成したので、少しペースを落として別の作業をしても良くなったってわけですよ。

 とはいえ教科書の量産はピピン隊に任せているので、通信機の部屋に防音対策するのと、あとはゴーレム関係かな?

 そういや明日は、ミスフィートさんが『赤い流星専用ザキュ』に試乗する予定だったな。カーラ達も乗りたいって言ってたし、俺も立ち会った方がいいだろう。

 ちなみに今朝、ユリとのバトルが終わった後にミケネコ城から旅のメンバー全員のゴーレムを持って来たので、ニャルル達にも声を掛けようと思ってる。

 んで明後日はガチャをぶん回して恩賞の服集めだ。
 防音対策なんかはそれが終わってからってことにしよう。

 アリアダンジョンに戻り、マジックバッグ作りを再開した。





 ************************************************************





「服キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


「「おおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 新メンバーの初めてのガチャだけは見届けたかったので、俺も皆と一緒にガチャ部屋に来たんだけど、やはり運の溜まってる一発目は皆当たりを引くのな!


 アイヴィー 銀 懐中時計
 ソフィア  金 オーブンレンジ
 フローラ  赤 カジュアル服


 ルーキー三人はビギナーズラックが炸裂だ。ナターシャはミスフィートさん達と一緒に一回目のガチャをやっていたので運を放出した後なんだけど、普通に自力で可愛いパジャマをゲットした。

 そしてお嬢の番がやってくる。


「今日こそドレスを手に入れてみせますわよ!」
「お嬢、待つのだ」
「ほえ?」

 意気揚々とガチャの前に移動しようとしていた所で呼び止められたので、お嬢が首を傾げている。

「なぜ今までドレスを引けなかったのか、理由を教えてやろう」
「な、なんですって!?理由があったんですの!?」

 その言葉に一つ頷き、静かに語り始める。

「その昔、清光さんは特攻服欲しい欲しい病に侵されていた。それ以外のモノなど眼中にナシ。特攻服の一点狙いだ」
「まあ!ワタクシと同じですわね!」
「しかし一緒に行動していた虎徹さんが強運で良いアイテムをゲットしまくっている中、清光さんは特攻服どころかカプセルのレア色すら引けない状態に陥ったのだ」
「運の悪い方なのかしらね?」
「そうではない。俺と清光さんの対決を見たろ?清光さんの運は悪かったか?」
「あっ!レア色を引きまくっていましたわ!」

 ガチャに持って生まれた運など関係ねえ!
 要は心の問題よ。ガチャってのは、極めれば運を引き寄せられるんだ!

「そう、彼の運は決して悪くない。あの清光さんがスランプに陥った原因は一つ!欲に飲まれたからだ」
「欲に・・・飲まれた!?」
「欲望に囚われた者にガチャの女神が微笑むことはない」
「それでは一体どうすればいいですの!?」
「まず心を空にして精神を限界まで研ぎ澄ませるんだ。ここから先はそれぞれやり方が違うので絶対は無いのだが、『ガチャと友達になる』『ガチャと一体となり呼吸を読む』『気迫でガチャを凌駕する』など、自分に合った方法を見つけろ!」
「・・・難しすぎますわよ!!」
「とにかく物欲に囚われているようではダメなんだ。ガチャと真剣に向き合った時、ガチャの方から心の奥底に眠る願いを汲み取ってくれる、といった感じだな」
「向こうの方から、ワタクシの願いを!?」

 本当に難しいから説明しにくいんだよなこれ。
 心を空にするといっても、ボケーっとすりゃいいわけでもないし。

「とにかく試行錯誤しながら感覚を掴むしかないだろう。最初は上手くいかないかもしれないけど、その経験は後々のちのち生きてくる」
「欲を完全に消し去るなんて難しいですわね・・・。でもやってみますわ!」


 お嬢がデラックスガチャの前に立ち、一つ深呼吸した。
 そして魔石を10個投入してレバーを光らせた後、静かに目を閉じる。

 最初はただボケーっと突っ立ってる感じだったけど、5分もすると雑念が半分くらい浄化され、集中力が高まっていくのを感じた。


 ガチャコン


「くッ!結構良い感じだったのに緑カプセルでしたわ・・・」
「今のは悪くなかったぞ!だがまだ半分だ。生まれたばかりの子供の様に純真無垢な清らかな心になれば、ガチャの方から心を開いてくれるだろう」
「難しいですけど頑張りますわ!」

 俺とお嬢のやり取りを後ろで聞いていた四人が、糸の様な目になっていた。

「何でこの人達は、これ程までガチャに命を懸けてるの?」
「正直ついていけないわね!」
「いや、小烏丸と清光さんの闘いは尋常じゃない程苛烈だったと聞いたわ。ガチャってのは命懸けの勝負なの!」
「一体何の勝負をしたのよ?」
「ウチュケージだか何だかを手に入れた方が勝ちだったかな?」

 それを聞いていたお嬢の目が光った。

「宇宙刑事ですわ!小烏丸、変身して見せてやるといいですわ!」
「いやです」
「この人達にガチャの素晴らしさを知ってもらわないと!獲得したアイテムを見せるのも勝者の義務ですわ!」
「いや、俺の中では完全に敗者なんですけど?」
「よくわかんないけど、私達にも見せなさいよ!」
「お嬢やカーラ達は見たんでしょ?彼女達だけズルいよね?」
「そーだそーだ!」


 くッ!言われてみると確かに、宇宙刑事を見ることで、ガチャに対しての考え方が変わる可能性があるのか。

 治安部隊のアイヴィーやソフィアなんかは、正義の味方とか好きそうだしな。


「仕方あるまい・・・。本気でガチャを回す意味を教えてやる。赤者せきしゃ!」


 ブンッ! ブンッ! ブオンッ!


 ポーズを決めた瞬間、赤い流星の衣装から宇宙刑事シャアリバーンの衣装にチェンジしたのが分かった。


「宇宙刑事」


 シュピン! シュピン! ピュオーン!


「シャアリバーン!」


 そしてガチャ部屋にいたギャラリー達の脳内に変身ムービーが流れ、俺だけ盛大にスベったような状態で放置されることとなる。

 もしかしてさ、メンバーが入れ替わる度に毎回やらなきゃならんのか?
 小出しにして数名ずつ見せるとか、正直すごく面倒臭いんですけど・・・。


 だったらもう、論功行賞の全員揃った状況でぶちかましてやろうじゃねえか!!
 
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