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688 宇宙刑事ギャラバーン

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 さっきまで楽しくやっていたのに、絶望に打ちひしがれている親父の姿があまりにも哀れすぎるので、やはり条件を少し緩くしてあげようと思う。


「ふむ。こうして無事に親父が三着目の服を手に入れたわけだが、まさか三着とも派手派手な衣装になるとは予想外だった。決め事とはいえさすがにコレはちょっと酷過ぎるので、少しルールを変更しようと思う」

 その提案に、親父だけじゃなくグミやチェリンも俺に視線を向けた。

「とは言っても取り消しにしたんじゃつまらんから、一年間はその三着の服でやり繰りしてくれ。そして来年また三回勝負をしよう!」

「「おおーーーーーーーーーーーーーーー!」」

 親父の目に生気が戻った。

「いいのか?」
「その方がまた来年も楽しめて面白いだろ!」
「賛成賛成!!」
「素晴らしい提案だわ!決め事を守らなければ勝負した意味が無いし、一年間くらいはしょうがないわね」
「来年また勝負が出来るのか。それは有難いな!・・・がしかし、一年間大バカ殿様もなかなかの地獄だぞ・・・」

 そう呟いた親父だったが、絶望からは完全に立ち直ったようだ。
 一年間という期限付きにしたので、罰ゲームくらいの感覚にはなったと思う。

「それはそうと、『宇宙刑事ギャラバーン』の衣装が気になってしょうがない!ちょっと鑑定させてくれ」
「別に構わんが」

 親父も気になっていたのだろう。一緒になって宇宙刑事の衣装を鑑定した。


[宇宙刑事ギャラバーンの衣装]
 :服なのかすら定かではない謎の衣装。付与魔法が込められている。評価S
 :所有者登録をしておけば、『常着』と叫ぶことで0.05秒で宇宙刑事に変身。
 :宇宙刑事ギャラバーン時、全パラメータ20%アップ
 :斬撃耐性+ 衝撃耐性+ 魔法耐性+ 熱耐性 冷気耐性 汚れ耐性 
 :自動修復(中)サイズ自動調節


「ブホッッ!!」
「なんじゃこりゃあああああ!!」


 マジかよ!?魔法少女並みに、とんでも衣装じゃん!
 全パラメータ20%アップってヤバ過ぎだろ!マジで大当たりなんじゃないか?

 ちなみに『常着』ってのは、『つねぎ』じゃなくて『じょうちゃく』だ!
 普通なら『変身』と叫びたくなるところを『常着』にしたのは秀逸だよな~。


「おい小烏丸、所有者登録ってのはどうすりゃいいんだ?」
「指先を少し切って、衣装に触れるだけでいい」
「衣装に血が付かないか?」
「マジックバッグも同様のシステムなんだが、所有者登録だと素材に吸収されるのか分からんけど、血が付かないようになっている」
「ならやってみるか・・・」

 親父が刀で指先をチョンと切り、宇宙刑事の衣装に触れた。

「これでいいんだろ?」
「もう一度服を鑑定してみ」

 気になったので、俺も一緒になって服を鑑定した。

「俺の名前が表示された!これで宇宙刑事に変身できるようになったんだな?」
「だと思う。さあ親父、例の言葉を叫ぶんだ!」
「ここまで来たらやるしかねえが、正直、滅茶苦茶恥ずかしいぞ!!」

「「お義父さん頑張れ~~~~~!!」」


 顔を赤くしながら、親父が3歩前に出て振り向いた。


「常着!」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


 何も起こらなかった。


「オイ!話が違うぞ!!」

 どういうことだ??

「もしかして、変身ポーズも必要なんじゃね?」
「マジか!!」
「もうやるしかないだろ!でも変身ポーズなんて分からんよな?」
「そう思うだろ?ところが『常着!』と叫んでから、頭の中に変身ポーズが鮮明に流れ込んで来やがる・・・」
「うわははははははははははははッ!!そういう仕組みになってんのかい!!」
「クソガーーーーー!やってやらあ!!」


「常着!」


 シュッ シュッ シュパッ!


 変身ポーズの過程で、親父が掌を天に突き上げてから正面を向くと、一瞬にして宇宙刑事ギャラバーンの姿になった。


「貴様、何者だ!?」


 あれ?なぜか勝手にしゃべってしまったぞ??


「宇宙刑事」


 シュッ シュッ ジャキン!


「ギャラバーン!!」


『宇宙刑事ギャラバーンがコンバットスーツを常着するタイムは、僅か0.05秒にすぎない。では、常着プロセスをもう一度見てみよう!』


 何だ今の声は!?頭の中に謎のナレーションが流れ込んで来たぞ!!
 なにィ!?ムービーが始まりやがった!


 脳内に、親父の変身シーンがスローモーションで流れ、雷が落ちた後、『了解。コンバットスーツ、転送します』と機械的な声が聞こえてテーマ曲が流れ始め、親父の姿が宇宙刑事ギャラバーンになった。



「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


(ぶわーーーっはっはっは!アーーーッヒャッヒャッヒャ、ゲハッ!ごパッ!)



「おい!そう無言になられると、スベったみたいで死ぬほど恥ずかしいんだが?」


 宇宙刑事がしゃべったことで、俺達三人も我に返った。


「いや、映像を見てたんだ」
「は?」
「音楽が鳴ってたよ!!」
「今のって何!?」
「お前ら一体何のことを言ってんだ?」
「あれ?親父にはムービーが流れなかったのか?」
「いや、ムービーって何だよ!?」
「全然意味がわからなかったけど、凄く格好良かったよ!!」
「お義父さんには見えなかったの?今までで一番意味不明な現象が起きたのよ!」

 もしかして変身した本人には見えないヤツ?
 マジですっげー面白かったのに!!

「嘘だろ?視聴者にしか見えないのかよ!むしろ俺が一番見たいっつーの!!」
「それはそうと、宇宙刑事ギャラバーンに変身できたんだな!おめでとう!」
「凄い格好だよね~」
「っていうか、それって服なの??」

「・・・あれ?」


 親父が下を向いて自分の姿を確認し始めた。


「ちょっと待て。大バカ殿様の着物はどこにいった??」
「そういや完膚なきまでに宇宙刑事になってるな。すごく嵩張る着物を着てたのに」
「中に着てるんじゃないの?」
「あのゴワゴワした服の上から重ね着してるわけ?とても窮屈そうね」
「つーか俺の刀はどこだ!?アレが無いと戦えねえぞ!・・・はあ??」
「何を驚いている?」
「いや、それがな・・・、どうやら武器を呼び出すことが出来るらしい」
「なにッ!?もしかして『レーザーソード』か!?」
「うむ」


 親父が格好良いポーズを決めた。


「レーザーソード!」


 ヴォン


 親父のメカメカしい手の中に、光り輝く剣が出現した。


「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーー!!」」


「何だよその剣!?メッチャ格好良いやん!!」


 しかし宇宙刑事は、レーザーソードを見ながら何やら考え込んでいる。


「クッソ重い」


 ・・・ダメじゃん。



 ◇



 ※親父がどういう動きをしたのか映像で見たい方は、『常着』の『常』を『蒸』に変えてyoutubeで検索してみて下さい。かなりシンクロさせてあります。
 
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