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672 時空先輩

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「・・・というわけで、先輩に色々聞いてみたいと思ってたところなんです!」


 まさかの加護かぶりに嘆いていた虎徹さんだったが、『先輩』という単語を聞いてピクリと反応した。


「そうか!時空魔法を覚えたての小烏丸は、俺の後輩ということになるのか」
「後輩どころか、生まれたてホヤホヤです!ピッカピカの一年生です!」
「なるほど、後輩には優しくせんといかんな!何でも聞くがいい」

 なんかめっちゃチョロそうな先輩だぞ。

「まだレベル1だから生意気と思われるかもしれませんが、時空魔法を使えばマジックバッグが作れるようになるんですよね!?」
「作れるぞ。さすがにレベル1じゃ無理だけどな」

「「おおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!」」

 話を聞いていたギャラリー達から歓声が上がった。

「やった!じゃあとりあえずレベル上げしなきゃですね。さっき転移だけ成功したんですけど、基本的にこれを繰り返せばいいんですか?」
「ん~~~、たぶんそれだと効率悪いぞ。近距離転移でもMPを10消費しただろ?MPが枯渇したら何も出来なくなる」
「なるほど・・・。あ、そうそう!遠距離転移も試そうと思って女神の泉に飛ぼうとしたんですけど、レベルが低いせいか出来なかったんですよね~」
「ん?ああ、加護を貰ってから一度も向こうの部屋に行ってないんじゃね?」
「えーと、行ってませんね」
「じゃあ無理だ。時空魔法を覚えた後で、もう一度女神の泉の前に立って新しく記憶し直す必要がある。過去に立ち寄った場所がどれだけ印象に残っていても、時空魔法として記憶してなきゃダメなんだ」
「マジっすか!?じゃあ北海道に飛べないじゃないですか!!」
「一度北海道まで歩いて行くしかねーな!」
「ぎゃああああああああああああああああああああ!」


 全部やり直しじゃん!!
 長い旅のセーブデータが全部消えちまってるじゃん!
 カジノに顔を出してみようと思ってたのに、機関車に乗ってくしかねーのかよ!


「虎徹さん、今度一緒に船に乗って北海道行きましょう」
「津軽海峡越えのお誘いだと!?」
「遠くないうちに陸奥まで線路が開通しますので、余裕っスよ余裕!」
「全然余裕じゃないだろ!まあ、行くとしたらアニキも強制連行だな!」

 適当に言ってみただけなんだけど、それはそれで楽しそうな件。

「船上でリヴァイアサンとの戦闘とかありますけどね」
「オイ!下手したら死ぬじゃん!」
「沈没したら船は失いますけど、命だけなら転移で何とかなるんじゃないっスか?」
「・・・それもそうか。余裕だな」

 でも乗組員が俺と清光さんと虎徹さんでしょ?意外と楽勝だったりして。

「なんか話が逸れちゃいましたけど、効率のいいレベル上げって何をすればいいんでしょうか?」
「そうだな~。オレは結界を作りまくったけど、まだレベル1なんだよな。あ、そうだ!アイテムボックスの空間を拡張するだけだったらMPを消費しねーぞ」
「アイテムボックス!?」
「でもレベル1じゃ最初の空間を作るのが無理か・・・。確かアイテムボックスに手を出したのって、3階層のボスを倒した後くらいだった気がするし」
「そういえば虎徹さん達はボスを攻略しながら4階層に行ったんですもんね。時空魔法を手に入れたのって、3階層のボスを倒した時の魔石からですか?」
「いや、1階層のボスから手に入れた魔石で大当たりしたから、その頃には時空魔法のレベルもそこそこ育ってたんじゃねーかな?」
「じゃあ俺にはまだ無理っぽいですね。まずは結界に挑戦してみます」
「転移よりは効率がいいと思うぞ」


 しかし虎徹さんが自分の閃きから地道に育てた技をそのまま真似するのは申し訳ないから、俺もオリジナルの技を発明したいもんだ。

 時空魔法って閃きの勝負だと思うんだよね。
 もしくはゲームのそれっぽい魔法を再現する感じか。

 虎徹さんは小学生までのゲーム知識しか無いから、実は俺の方が色々な時空魔法を知ってるのかもしれん。今は思い出せないけどさ。

 もし凄い時空魔法を発見したら、それを教えることで恩返ししよう!


「さて、そろそろ向こうに帰るか?」
「昨日話したように俺だけ帰ります。行ったり来たりで申し訳ないんですが」
「早く時空魔法のレベルを上げて自力でココに来られるようにしてくれ!たぶん世界を渡るには、レベルをマックスにする必要があるけどな」
「でしょうね。あ、待てよ?時空魔法強化の指輪、魔力増幅の指輪、あとMP消費軽減の指輪で、結構ドーピング出来るかも・・・」


 それを聞いた虎徹さんの目が大きく開いた。


「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 そういえば、虎徹さんの時空魔法を強化しようとか考えたことなかったな。
 最初から魔法を使いこなしていて、助けが必要とは思えなかったし。


「オレの分の指輪も作ってくれ!!時空魔法の特訓に付き合ってやるから!」
「なにッ!?そいつは非常に助かりますぞ!!」
「じゃあ決まりだな!指輪を作ってくれるのなら、アニキも無理矢理連れ出して、北海道遠征に付き合ってやるぞ!」
「おーーーーー!でも北海道にはしばらく行けませんよ?」
「嫁がうじゃうじゃいるんだったか・・・。あ、そういや尾張や三河まで連れて行って欲しかったりしないか?」

 あーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
 そうか!虎徹さんに頼めば、尾張まで一瞬で連れてってもらえるじゃん!!

「それは本当に助かります!機関車に揺られてる時間すら惜しくて、京の都から全然動けなかったんですよ!」
「んじゃそれを前払いにすっか!」
「お願いします!あ、でもまだ時空魔法のレベルが・・・」
「・・・あ。そういやまだ尾張までの長距離転移は無理か。やっぱり先に特訓しなきゃダメだな」


 結局、尾張や三河まで連れて行ってもらうのは、しばらく時空魔法の特訓をしてからということになった。

 ってことは、明日は指輪作りからスタートだな。
 まさか突然俺の行動範囲が広がるなんて、こんなに嬉しいことはない!
 
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