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640 ルシオ、思い出して錯乱する
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ピピン隊に囲まれた状態で食堂まで連行されて来たルシオ。
その辺の事情に詳しい情報通のルーシーによると、昨日の夕食後からピピン隊の五人に捕食され続けていたに違いないとのこと。
これには本当に驚いた。
嫁騒動は俺だけの問題だと思ってたからだ。
でも冷静に考えたら、ルシオほどの器量良しがモテないわけがなかった!
軍師不在の状況で大名の支えとなって軍を勝利に導き、皆に頼られる存在にまで成長を遂げたイケメン参謀だからな。
だが五人相手の夜伽と聞いて、羨ましいという感情は一切湧かなかった。
だってルシオのヤツ、どう見てもボロ雑巾の生きる屍なんだもの・・・。
一晩に五人の嫁とバトルするなんて、俺ですら未体験ゾーンだぞ!?
いや、夕食の時間に現れたのだから、丸一日かけての大勝負か。
ルシオのヤツ大丈夫なのか?
あの感じだと間違いなく一睡もしてないよな・・・。
ウーム、救出してやった方がいいのだろうか?でも幸せそうな顔をしたピピンが腕にくっついたままだし、引き離したら恨みを買ってしまいそうだ。
・・・とりあえず、少し様子を見るか。
「今日のクリームシチュー美味過ぎっス!!この黄色い粒は何なんスか?」
そういやルーシーは初トウモロコシか。すごく気に入ったみたいだな。
「ダンジョンで収穫した『トウモロコシ』という野菜だ。いや穀物か?まあどっちでもいいか。甘くて美味いだろ?」
「トウモロコシ美味しいよね~!」
「あっちの嬢ちゃんみたいに、一本丸ごと食うってのも最高だぞ!」
親父が指差した人物は、やっぱりシャイナだった。
シチューの皿にトウモロコシが三本入ってますね・・・。
「一本どころか、シチューに三本くらい入ってないっスか!?」
「あの娘はトウモロコシ推進委員会の会長なんだ。自分で茹でて毎日食ってるほどのプロだから、彼女の前でトウモロコシの話をしたら、30分はトウモロコシの素晴らしさを語られることになる。ルーシーも気を付けた方がいい」
「30分はキツイっスーーーーーーーーーー!!」
「「わははははははははははははははは!」」
シチューを食べ終わったら続けてデザートタイムに突入するんだけど、今日は祝勝会で食べることが出来なかった大福を皆に振舞うと和泉に伝えてあったので、『そろそろいいんじゃない?』と言われて立ち上がった。
そしてパンパンと手を叩く。
「聞いてくれ!実は祝勝会の最後にお菓子を振舞おうと思ってたんだが、途中で変な流れになってしまい、次回に持ち越しとなっていたんだ。ってことで今日のデザートは皆にそのお菓子を振舞うぞ!」
「「おおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~!!」」
「今から料理班が皆のテーブルに配っていくけど、そのお菓子は『大福』と呼ばれている越後の国の名産品だ!ただ、メッチャ美味いんだがネバネバしたお菓子なので、喉に詰まらせないよう少しずつ食ってくれな!」
「「了解!!」」
料理班が大福の乗った皿を各テーブルに配って行く。
最初から軍の皆に振舞うつもりだったから、かなり大人買いしたんだけど、それでもこれだけの人数なので、一人につき2個までとした。
今此処にいない伊勢や尾張の城主達にもお届けしなきゃならんからな~。
料理やデザートは、テーブルに置かれた時点でどんどん食っていいことになってるので、早速食いしん坊達から歓声が上がった。
「うわ~~~~~!これ美味しい!!」
「甘ーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
「ほんとだ、ネバネバするね!」
「私このお菓子大好きかも!!越後の国まで買いに行かなきゃ!」
「越後って遠いのかな?」
「わかんない!」
女性陣のほぼ全員が甘い物大好きっ子なので、当然ながら大福は大好評だ。
「あまーーーーーい!!おいしーーーーー!!」
「大福なんて久々に食ったが、こりゃマジで美味えな!」
「これはヤバイっス!明日にでも越後まで買いに行くっスよ!」
「京の都からだと越後はかなり遠いぞ?しかも街の中を少し歩くたびにツッパリに絡まれまくるから、正直かなり面倒臭い国なんだよなあ」
「ツッパリ?それってあのツッパリか?」
「親父の想像通りのツッパリだ。あの国に滞在してる間、マジで毎日ケンカを売られ続けたんだぜ?」
「はあ!?メチャクチャ治安悪いなオイ!!」
「ところがそうでもないんだな~これが。あの国は刃物の持ち込みが禁止されていてさ、殺しはご法度なんだよ。でもケンカは国から推奨されているのだ」
「まったく意味がわかんねーぞ!!」
「すげえ変な国なんだよホントに」
俺もボンタン狩りをして遊んだっけな。
メチャクチャ面倒臭い国だけど、楽しかったのも事実だ。
そういやガルザリアスから連絡が来ねーな。
線路が完成したら連絡するよう言ったんだけど、そう簡単には終わらんか。
・・・お?大福効果でルシオがフリーになってる!
ピピン隊が隣のテーブルの女の子らと盛り上がってる今がチャンスだ。
気配を殺して、一気にルシオの側まで駆け寄った。
「おいルシオ、生きてるか!?」
返事がない。ただの屍の・・・って遊んでる時間はねえ!
ペチペチ ペチペチペチペチ
何度も頬を叩いてると、ようやくルシオの意識が戻った。
「ハッ!?」
ルシオが右手に持った大福を見て、意味が分からず頭を捻った後、周囲を見渡してからようやく俺がいる事に気が付いた。
「あれ?小烏丸さん!・・・ココって食堂ですよね?」
「食堂であってる」
「なぜ僕は食堂にいるのでしょうか?」
「そりゃあ、メシを食いに来たからじゃないか?」
ルシオが記憶を呼び覚まそうとしているが、おそらく無駄だろう。
「テーブルの上に汚れた食器がありますし、クリームシチューを食べた後のような気はしますが、どうしてその時の記憶が無いのでしょう?」
「気を失っていたからじゃないか?」
「・・・気を失ったまま食事って出来るのでしょうか?」
「不思議なことに出来るみたいだな。実は俺も経験があるんだ」
「小烏丸さんも同じ経験が!?」
「あはははははははは!」
その時、隣のテーブルからピピン達の笑い声が聞こえて来た。
つい視線を向けてしまった俺に釣られるように、ルシオも隣のテーブルを見る。
―――――そして固まった。
「あ・・・、ああああああああああーーーーーーーーーーっっっ!!」
やっと全てを思い出したか!
まずは俺の体験談を話して、仲間だってことを知ってもらわんとな。
よし、ここからが本番だぞ・・・。
その辺の事情に詳しい情報通のルーシーによると、昨日の夕食後からピピン隊の五人に捕食され続けていたに違いないとのこと。
これには本当に驚いた。
嫁騒動は俺だけの問題だと思ってたからだ。
でも冷静に考えたら、ルシオほどの器量良しがモテないわけがなかった!
軍師不在の状況で大名の支えとなって軍を勝利に導き、皆に頼られる存在にまで成長を遂げたイケメン参謀だからな。
だが五人相手の夜伽と聞いて、羨ましいという感情は一切湧かなかった。
だってルシオのヤツ、どう見てもボロ雑巾の生きる屍なんだもの・・・。
一晩に五人の嫁とバトルするなんて、俺ですら未体験ゾーンだぞ!?
いや、夕食の時間に現れたのだから、丸一日かけての大勝負か。
ルシオのヤツ大丈夫なのか?
あの感じだと間違いなく一睡もしてないよな・・・。
ウーム、救出してやった方がいいのだろうか?でも幸せそうな顔をしたピピンが腕にくっついたままだし、引き離したら恨みを買ってしまいそうだ。
・・・とりあえず、少し様子を見るか。
「今日のクリームシチュー美味過ぎっス!!この黄色い粒は何なんスか?」
そういやルーシーは初トウモロコシか。すごく気に入ったみたいだな。
「ダンジョンで収穫した『トウモロコシ』という野菜だ。いや穀物か?まあどっちでもいいか。甘くて美味いだろ?」
「トウモロコシ美味しいよね~!」
「あっちの嬢ちゃんみたいに、一本丸ごと食うってのも最高だぞ!」
親父が指差した人物は、やっぱりシャイナだった。
シチューの皿にトウモロコシが三本入ってますね・・・。
「一本どころか、シチューに三本くらい入ってないっスか!?」
「あの娘はトウモロコシ推進委員会の会長なんだ。自分で茹でて毎日食ってるほどのプロだから、彼女の前でトウモロコシの話をしたら、30分はトウモロコシの素晴らしさを語られることになる。ルーシーも気を付けた方がいい」
「30分はキツイっスーーーーーーーーーー!!」
「「わははははははははははははははは!」」
シチューを食べ終わったら続けてデザートタイムに突入するんだけど、今日は祝勝会で食べることが出来なかった大福を皆に振舞うと和泉に伝えてあったので、『そろそろいいんじゃない?』と言われて立ち上がった。
そしてパンパンと手を叩く。
「聞いてくれ!実は祝勝会の最後にお菓子を振舞おうと思ってたんだが、途中で変な流れになってしまい、次回に持ち越しとなっていたんだ。ってことで今日のデザートは皆にそのお菓子を振舞うぞ!」
「「おおおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~!!」」
「今から料理班が皆のテーブルに配っていくけど、そのお菓子は『大福』と呼ばれている越後の国の名産品だ!ただ、メッチャ美味いんだがネバネバしたお菓子なので、喉に詰まらせないよう少しずつ食ってくれな!」
「「了解!!」」
料理班が大福の乗った皿を各テーブルに配って行く。
最初から軍の皆に振舞うつもりだったから、かなり大人買いしたんだけど、それでもこれだけの人数なので、一人につき2個までとした。
今此処にいない伊勢や尾張の城主達にもお届けしなきゃならんからな~。
料理やデザートは、テーブルに置かれた時点でどんどん食っていいことになってるので、早速食いしん坊達から歓声が上がった。
「うわ~~~~~!これ美味しい!!」
「甘ーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
「ほんとだ、ネバネバするね!」
「私このお菓子大好きかも!!越後の国まで買いに行かなきゃ!」
「越後って遠いのかな?」
「わかんない!」
女性陣のほぼ全員が甘い物大好きっ子なので、当然ながら大福は大好評だ。
「あまーーーーーい!!おいしーーーーー!!」
「大福なんて久々に食ったが、こりゃマジで美味えな!」
「これはヤバイっス!明日にでも越後まで買いに行くっスよ!」
「京の都からだと越後はかなり遠いぞ?しかも街の中を少し歩くたびにツッパリに絡まれまくるから、正直かなり面倒臭い国なんだよなあ」
「ツッパリ?それってあのツッパリか?」
「親父の想像通りのツッパリだ。あの国に滞在してる間、マジで毎日ケンカを売られ続けたんだぜ?」
「はあ!?メチャクチャ治安悪いなオイ!!」
「ところがそうでもないんだな~これが。あの国は刃物の持ち込みが禁止されていてさ、殺しはご法度なんだよ。でもケンカは国から推奨されているのだ」
「まったく意味がわかんねーぞ!!」
「すげえ変な国なんだよホントに」
俺もボンタン狩りをして遊んだっけな。
メチャクチャ面倒臭い国だけど、楽しかったのも事実だ。
そういやガルザリアスから連絡が来ねーな。
線路が完成したら連絡するよう言ったんだけど、そう簡単には終わらんか。
・・・お?大福効果でルシオがフリーになってる!
ピピン隊が隣のテーブルの女の子らと盛り上がってる今がチャンスだ。
気配を殺して、一気にルシオの側まで駆け寄った。
「おいルシオ、生きてるか!?」
返事がない。ただの屍の・・・って遊んでる時間はねえ!
ペチペチ ペチペチペチペチ
何度も頬を叩いてると、ようやくルシオの意識が戻った。
「ハッ!?」
ルシオが右手に持った大福を見て、意味が分からず頭を捻った後、周囲を見渡してからようやく俺がいる事に気が付いた。
「あれ?小烏丸さん!・・・ココって食堂ですよね?」
「食堂であってる」
「なぜ僕は食堂にいるのでしょうか?」
「そりゃあ、メシを食いに来たからじゃないか?」
ルシオが記憶を呼び覚まそうとしているが、おそらく無駄だろう。
「テーブルの上に汚れた食器がありますし、クリームシチューを食べた後のような気はしますが、どうしてその時の記憶が無いのでしょう?」
「気を失っていたからじゃないか?」
「・・・気を失ったまま食事って出来るのでしょうか?」
「不思議なことに出来るみたいだな。実は俺も経験があるんだ」
「小烏丸さんも同じ経験が!?」
「あはははははははは!」
その時、隣のテーブルからピピン達の笑い声が聞こえて来た。
つい視線を向けてしまった俺に釣られるように、ルシオも隣のテーブルを見る。
―――――そして固まった。
「あ・・・、ああああああああああーーーーーーーーーーっっっ!!」
やっと全てを思い出したか!
まずは俺の体験談を話して、仲間だってことを知ってもらわんとな。
よし、ここからが本番だぞ・・・。
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