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613 俺と親父の天敵が現れた

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 四足、いや、六足歩行の超絶気持ち悪いドッキドキ野郎は倒したけど、ダンジョン30階層はまだ序盤も序盤であり、皆が恐怖に怯えるのはここからが本番だった。

 角を曲がった瞬間魔物に襲われたのもあり、最大限の警戒態勢で通路を進んでいるわけだが、市松人形がぶっ飛んで来るから一瞬も気が抜けなくて、大人数だってのに途中からは誰もしゃべらなくなっていた。


 そんな緊迫感の中、俺が歩いているすぐ左側の壁がパカッと開いた。


 ダーーーーーーーーーーーーーーン!


「何だ!?」


 ダダダダダダダダダダダダダダダダ


 見ると壁の中から出て来たのは、全身が赤と白の縞模様の服を着ている人形で、デカい音は人形が太鼓を叩いた音だったらしい。

 そいつは眼鏡を掛けており、首を振るだけじゃなく、太い眉毛や目玉や口まで動く、とても高性能な人形だった。


「「食い倒れ野郎じゃねえか!!」」


 俺と親父のツッコミの声がハモった瞬間、下半身に激痛が走った。


「「うごッッッ!!」」


 一体何が起きた!?
 もしかして食い倒れ野郎の攻撃をくらったのか!?

 あまりの衝撃で床に崩れ落ちると、足元に『こけし』が転がってるのが見えた。
 もしかして、この『こけし』が俺の股間に突き刺さったのか!!


 ガゴッ


「人形が動かなくなった。なんか思ったより弱かったぞ?」
「何なのコレ?全然攻撃して来なかったよね?」
「いやいやいや!そこで小烏丸とお義父さんが悶絶してるじゃない!」
「もしかして男性しか狙わない人形なのかな?」
「男性っていうか、キ〇タマ?」
「キ〇タマだけを狙う人形ですって!?なんて恐ろしいの・・・」


 キ〇タマだけを殺す機械かよ!?

 これが・・・コイツが・・・!人形のやる事かッ!?


 ―――――10分ほどして、ようやく俺と親父が復活した。


「死ぬかと思ったぞ・・・」
「狙われたのが俺達だけで良かった。もし女性の股間にこけしが突き刺さっていたりなどしたら、大変なことになっていただろう」
「違う意味でな・・・」

 しかし一体どこから攻撃されたんだ?食い倒れ野郎のインパクトが強すぎて、どこからこけしを飛ばして来たのかがさっぱり分からん。

「ダメだ、どこにも『こけし』が生えてない。次また食い倒れ野郎が出て来たら、親父も注視してくれ」
「当然だ!もう一撃くらったら致命傷になりかねん」


 食い倒れ野郎をマジックバッグに回収し、先へと進んだ。


 しかし出て来るのは市松人形ばかりで、どんどん人形の数も増えてるから、食い倒れ野郎よりもまずはこっちの対処に追われていた。



 ダーーーーーーーーーーーーーーン!


「来た!今度は右の壁か!!」


 ダダダダダダダダダダダダダダダダ


 太鼓を連打している食い倒れ野郎の身体全体を見渡すが、どこにも『こけし』が見当たらない。一体どこから・・・。


「「うごッッッ!!」」


 またもや、股間に『こけし』が直撃した。


 ガゴッ


「小烏丸わかったぞ!人形の足のつま先だ!パカッと開いてそれが射出された!」


 ミスフィートさんの報告に『足のつま先かよ!!』と答えたかったが、悶絶していて声を発することが出来なかった。


「マズイわね、このままでは小烏丸のアソコが再起不能になってしまうわ!」
「それは困るよ!順番を待ってるお嫁さん達がまだまだ沢山いるんだよ!?」
「一大事だぞ!このままでは、私達も二人目の子が作れなくなってしまう!!」
「太鼓の音が聞こえた瞬間に倒すしかないですわね~」


 そうだよ・・・、こけしの射出位置を探すんじゃなくて、食い倒れ野郎をぶった斬れば良かったんじゃん!!


 俺と親父の回復後、慎重に通路を更に奥へと進んで行くと、とうとう一つ目の大部屋に到達した。


「うわあ・・・、人形まみれだよ!」
「見たこと無いのが結構いるな」
「もう、このダンジョンは大勢で来ちゃダメだね~」
「そうだな。死の恐怖は無いんだけど、俺はこのダンジョンで30階層がダントツで大嫌いだ!」
「俺もだ!!」

 ちなみに後続も壁から出て来た食い倒れ野郎に襲われたけど、女性だけなら攻撃されないらしい。それはそれでムカツク。

「とにかく危険なのは飛んで来る人形だ。大きな人形と対峙している時も、あの市松人形とかいうヤツに気を付けながら戦え!」
「食い倒れ野郎も最優先で倒してもらっていいでしょうか?こけし10発とかくらったら、俺と親父が死ぬんで!!」
「みんな!あの太鼓の人形も最優先だからね!」
「「了解!」」

 慌てるな、股間ボールはまだ生きている。


「では行くぞ!!」


 タタタタタタタタタタタタタタッ


 大部屋に突撃すると、中にいた人形達が一斉に動き出した。


「来たッ!」
「ハーーーーーーーーーッ!」

 ジャキン

「小烏丸!向こうに食い倒れ野郎がいる!」
「太鼓が鳴る前に倒す!!」

 俺達の中では食い倒れ野郎こそが最大の敵なんだ!
 もう俺の股間をやらせはしねえ!

 ダーーーーーーーーーーーーーーン!

「チッ、左の壁が開きやがった!親父は正面のアイツを!」
「そっちは任せた!」

 ダダダダダダダダダダダダダダダダ

 ドガッ!!

 今度は何とか射出前に倒すことが出来たぞ!
 親父も正面の食い倒れ野郎を撃破したみたいだ。

 ガシュッ ギンッ ゴガッ

 四方八方から飛んで来る市松人形を倒しながら強そうな人形を探すが、初見の人形が多くて強さなんかさっぱり分からん!!

 ボテッ

 そんなカオスな状況の中、天井から何かが降って来た。


「何だ!?」


 そこにいたのは、上半身が赤くて下半身の青いボディースーツを着た『スパイダー男爵』だった。頭までスッポリ覆われているけど、アレはマスクだったと思う。

 地面に貼り付くような得意のポーズで、こっちを見ている。


「お前までいたんかい!!」


 抜刀術で倒そうと刀を鞘に収めた瞬間、スパイダー男爵は蜘蛛の糸を飛ばし、左の壁に貼り付いた。


 ―――――そして次の瞬間、視界いっぱいに蜘蛛の糸が広がった。

 
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