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604 物資集積市場のオープン日
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完全にノックアウト状態の双子に、優しく毛布を掛けてから部屋の外に出た。
「おかしいな・・・。9回を投げて無失点の完封勝利という圧倒的内容だったのに、結局一睡も出来なかったぞ?」
双子が思ったよりもよわよわだったので、ぶっちゃけずっと俺のターンだった。
いや違うか。リタとリナが弱かったのではなく、絶対誰にも言えない秘密の猛特訓を二ヶ月間続けたお陰で、俺が強くなり過ぎたのだろう。
しかもあの二人は、大好物の『つるぺた』だったからな~。
楽しくてつい朝まで蹂躙してしまった。
今までの俺だったら横で見られているだけで緊張のあまり、能力が30%~50%低下するデバフが掛かっていただろうけど、『くっころワールド』で鍛えられた俺にはそんなの逆効果だ。
ギャラリーがいることで精神力と精力30%増強のバフが自動的に掛かり、伝説のスキル『露出狂の咆哮』が発動する。(そんなスキルはない)
更に相手がつるぺたということで、『変態紳士の共鳴』までもが無条件で発動してしまうのだ。(だからそんなスキルはない)
とにかくつるぺた二人が相手だったのもあって、俺も少しハッスルし過ぎてしまったことは認めよう。昼間寝るのは好きじゃないんだけどな・・・。
・・・あれ?ちょっと待て。
ゴマちゃん→ニャルル→シャイナ→パメラ→レム→セレスティーナ→リタ&リナ。
なんてこった!あれからピッタリ一週間経過してしまっているぞ!
すなわち今日が市場のオープン日じゃん!!
一睡もしてないのに果物を売らなきゃいかんのか・・・。
いや、何も最後まで俺一人が実演販売みたいなことをする必要は無いな。モノは良いのだから、最初にちょっと手本を見せるだけで十分だ。後は仲間達に任せよう。
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物資集積市場に到着すると、すでに市場の前には商人たちが集まっていた。
この世界には時計ってモノが無いので、何時オープンみたいには出来ないのだ。
ミスフィートさんと20名ほどの販売員と一緒に裏口から物資集積市場の中に入り、マジックバッグから新鮮な果物を取り出し、商品棚に山積みにしていった。
「もう十分じゃない?」
「そうだな。圧倒的物量で商人達の度肝を抜く作戦だったけど、果物が崩れて転がってしまうと傷んでしまう。これくらいが適量かもしれん」
「壁の大きな貼り紙に書いてある値段で売ればいいんでしょ?」
「そうだ。商人達が安くしてくれと交渉して来ても応じる必要は無いからな。この値段で買えない商人には帰ってもらって結構だ」
「強気ね~~~~~!」
「俺達は元々商売で儲ける気などなかったからな。国民の喜ぶ顔が見たいから食材を商人に流すんだ。ただ腐らすのが勿体ないって理由もあるけどな~」
「私も果物を売った方がいいのか?」
「大名はそんなことしなくていいです!じゃあ試食用の果物を切って下さい。全部一口サイズでいいですからね~」
「わかった!」
大名が果物を売ってたりしたら、庶民派で好かれるかもしれんけど、ミスフィート軍の威厳も下がってしまうからな~。
試食用の果物を大きな皿に乗せ、残りの皆を指定のポジションにつかせた。
「準備オッケーだ!」
正面の扉が開くと、商人達が恐る恐る中に入って来た。
「「おおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~~~!!」」
「なんて大きな建物なんだ!」
「果物が山のように積まれているぞ!!」
「これが市場なのか・・・本当に凄いな・・・」
そして先頭を歩いているのは、この前営業に行った食料品店の店主だった。
「よう、一週間ぶりだな!ちゃんと宣伝してくれたようで感謝するぞ!」
俺の声を聞いた店主がこっちを振り向いた。
「赤い流星様!市場が開くとは聞いてましたけど、こんなに大きな建物だとは!」
店主はそう言いながら、他の商人達と一緒に俺の方へ歩いて来た。
「他の商人達もよく来てくれた!商品を仕入れに来たのに世間話は無用ってことで、早速試食会を始める!」
「「おおおおおおおおおお~~~~~~~~~~!!」」
「これらの皿に乗っている果物は全て試食会の為に用意したモノだ。手掴みだと手が汚れてしまうから、爪楊枝を使って試食してみてくれ。爪楊枝ってのは皿の横に置いてある細長い木の棒のことなんだが、こうやって使う」
一口サイズに切ってある桃に爪楊枝を刺し、口の中に放り込んだ。
「美味い!!・・・とまあ、それを果物に刺して食うだけだ。皿に乗った果物は好きなだけ食っていいが、仕入れに来たことを忘れずに全種類試食してくれよ?」
「この前口にしていない果物もあるじゃないですか!まずは味を知らないヤツから試食してみよう!」
店主が柿を口にすると、その甘さに大きく目を開いた。
「これも美味い!!ほら皆も遠慮せず試食してみるといい!本当に全てが美味くて驚くぞ~~~~~!」
様子を伺っていた者達も、果物に爪楊枝を刺して試食を始めた。
「な、何だこの美味さは・・・」
「美味すぎる!!」
そらそうよ!
元々口が肥えてた俺が食っても、過去最強クラスの美味さだもの。
「こんな美味しい果物を口にしたのは初めてですよ!」
「有り得ん・・・、そっちの果物もこっちの果物も、全てが極上品ではないか!」
食料品店の店主達は、30分もの間果物を試食しまくった。
その後『従業員達に試食させてみても宜しいでしょうか?』と聞かれたが、最初からそのつもりだったので許可した。
「う、美味過ぎます!!でもコレって高いんじゃ・・・」
「あの壁の貼り紙を見てくれ!値段はそこに書いてある通りの金額だ。一般人の誰もが食べられるように相当安くしてあるのがわかるだろう?だからどれだけ大量に購入しても値切り交渉は一切受け付けない」
「桃っていうのは・・・、あっ!この最強果物が桃ですか!」
「え?安くない!?本当にあの値段で買えるの??」
「買えるだけ買うに決まってるでしょう!!こんなの絶対売り捌ける!!」
「革命だ・・・革命だよこれは!!」
そしてもう30分ほど経った頃にようやく全員が満足し、果物の売買が始まった。
当然ながら店主による鶴の一声で従業員達が総動員され、誰もが買えるだけの果物をどんどん購入していった。
本当に飛ぶように売れまくるので、ちょっと価格設定をミスったかな~とも思ったけど、庶民の口に入ることが重要なので良しとした。
ただ俺は一睡もしてないので、皆に販売を任せて市場を離脱。
ダンジョン入り口に布団を敷き、夕方までぐっすりと寝たのだった・・・。
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