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600 小烏丸、覚醒する

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 セレスティーナの想いに心を打たれた俺は、『わかった。そのささやかな望み、俺が必ず叶えてやる!』と言い放った。

 ・・・だがその直後に、自分の浅はかな言動を後悔することになった。

 裸で街を一周するという、とんでもない事態になったからだ!!

 セレスティーナが言ったことは、冗談でも何でもなくガチだ・・・。
 なぜなら、すでに隣で素っ裸になっているのだからな!

 もう罰ゲームとしか思えない突発イベントが始まろうとしているのだが、『そのささやかな望み、俺が必ず叶えてやる!』と言ってしまったからには、やはり望みを叶えなくてはならないだろう。例えそれが生き地獄だとしてもだ!


 ―――――服を脱ぎ棄て全裸になった。


「キャーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「なんでこの人達、街の中で裸になってんの!?」
「変態よ!変態カップルだわ!!」
「うっひょーーーーーーー!お姉ちゃんおっぱいデケーなあ!!」
「おいおい、一体何が始まるんだよ!?」
「この人達、最低ね!!」


 死にたい。というか誰か俺を今すぐ殺してくれ。


 ・・・いやちょっと待て。


 セレスティーナは、人間を創り出すなんてのは不可能とか言ってたよな?
 このギャラリー達って、明らかに俺達を見て反応してるんだが?


「おい、セレスティーナ!この周りの人達って幻影とか言ってなかったか」
「うむ」
「どう見ても、素っ裸の俺達を見て大騒ぎしてるんだが?」
「この蔑まれている感じが素晴らしいな!」
「素晴らしいだと!?・・・いや、そうじゃなくて!それぞれが意思を持っているとしか思えないんだけど!」
「意思を持たぬ幻影では風景と変わらぬ。それじゃあつまらないだろう?だからちゃんと私達を見て反応するようにしたのだ!これが思ったよりも難しくてな、寿命を10年分注ぎ込むことで、ようやく人間らしい行動が出来るようになったのだ!」
「めっちゃ凄いけど、この機能に寿命10年分もぶっ込んだのかよ!?」

 頑張るポイントって、もっと他にあったんじゃないっスかね!?家とかさあ!!

「よし、私が創った街の隅々まで案内するぞ!こっちだ」
「マジかよ!?いや、せめて脱いだ服だけでも家に置いて来ていいですか?」
「しょうがないご主人様だなあ」



 そして素っ裸のセレスティーナに腕を引かれたまま、街の人々の悲鳴や冷やかしの言葉を浴びつつ、街を1周して戻って来た。



「あっ!変態カップルが戻って来たよ」
「ホント最っ低ね!!」

 くっ、殺せ!

「なんという解放感なんだ!裸で街を歩くのって、こんなに楽しくて気持ちいいモノだったんだな!」
「いや、何でキミは恍惚の表情になってるんスかね?最低とか言われてんのに」
「それが良いのではないかっ!」


 くっころさんって、もしかして露出狂なのでは・・・。
 しかも蔑まれて喜んでいる所を見ると、かなりのドMなのでは・・・。

 思えば佐渡ヶ島の探索をしてる時から、少し怪しい感じではあったんだよな。すぐ裸になりたがるから裸族の人かと思ってたんだけど、露出狂の方だったのか!


「そろそろかな?」

 またセレスティーナに目を覗かれた。

「もう少しといった所か・・・」
「だから一体何なんだよ!?」


 結局その日は子作りに励むことなく物置ハウスで寝た。
 そしてとうとう服を着ることすら禁じられ、俺も裸族の仲間入りを果たした。





 ************************************************************





 その翌日。

 セレスティーナと二人で、露天の正面にあったベンチに座ってお茶を飲みながら大福を食べていると、中学生くらいの女の子5人が目の前で立ち止まった。


「あっ!噂の変態がいた!!」
「うわっ、男の人のアレとか初めて見たし!!」
「もっと近くで見せてもらおうか?」
「やだーーー!キモーーーーーイ!」
「とか言いながら、しっかり見てるくせに!」

 くっ、殺せ!

「よし、みんな行くよーーーーーーーー!」

 たたたたっ

「ねえねえお兄さん、何で丸出しなんですか~?」
「いや、あ~、これには海よりも深い事情があってだね・・・」
「もしかして見られて喜ぶ人?」
「うそーーー!やっぱり変態じゃない!!」

 くっ、殺せ!

「ぬう・・・、ご主人様もなかなかしぶといな・・・」
「何がだよ!?」
「大勢の人達に見られていると、こう胸が高鳴らないか?」
「いや、街中の噂になってる状態では、もう地獄でしかないんだが・・・」
「私の世界でなら、変態と噂になっても別に構わないではないか」


 ハッ!?

 そうか・・・、ココは『くっころワールド』だ。

 いきなり変態のレッテルを貼られてしまって、一ヶ月の間どうしようとか考えていたけど、逆に言うと一ヶ月が過ぎれば変態も無かったことになるのか!!



 ―――――抑え込んでいた性衝動リビドーが解き放たれ、全身に力が漲って来た。



「いきなり立ち上がったし!」
「うそっ、ちょっと見てよコレ!」
「うわー!うわー!うわー!」


 セレスティーナの目が光を放つ。


「今だ!ここで子作りを始めるぞ!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・」


 くっころさん、今何かとんでもないことを言いませんでした?


「え?ここで?」

「初めてに相応しい完璧な場面じゃないか!ご主人様の全てを解き放つのだ!」


「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」


 こうして俺は変態紳士の壁を見事打ち砕き、完全体パーフェクト小烏丸へと覚醒した。



  ◇◇◇



 (´・ω・`)記念すべき第600話なのに、どうしてこうなった!?

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