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585 タイヤが完成!次の目標は『学校』

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 鬼っ娘との異種格闘技戦から数日経ち、シドから連絡を受けた俺は驚愕することとなった。


 ―――――タイヤの試作品が完成したという知らせだったからだ。


 もちろん俺は今でも毎日、嫁をちぎっては投げちぎっては投げの激しいバトルを続けているのだが、それよりもダンジョンの送迎がキツくてしょうがなかったので、早速パメラと共に『雪丸屋』へ向かった。



 ・・・・・



 シドの店の前に到着すると、遠くの方から例のサンプルゴーレムが走って来て、俺達の目の前に停車した。


 ウィーーーーーーーーーーーーーーーーン

 キキッ


「小烏丸さん、音を聞いてくれましたか!?」

「こんなに早く作り上げたことにも驚いたが、文句無しの出来じゃないか!ゴロゴロうるさかったのは解消されているし、ゴーレム自動車独特の音のおかげで、近付いて来ることに気付けるのも良いな!」

 シドがサンプルゴーレムから降りて来た。

「問題はタイヤの耐久性なのですが、こればかりは走り続けてみないことには何とも言えませんね」
「そのサンプルゴーレムをしばらく預けておくので、耐久力テストの方はシドに一任する。もし壊してしまっても文句は言わんから、危険な走行をした場合のタイヤの摩耗量なんかも調べてみてほしい」
「了解致しました!」
「ところで予備のタイヤが4本余ってたりはしないか?」
「勿論あります。でもまだ試作品ですよ?」

 話ながら、サンプルゴーレムに装着されたタイヤを触ったり叩いたりしてるんだけど、すでに完成品と思えるほど俺のバイクに付いてるタイヤと相似している。使った素材の問題からか、シド製のタイヤは群青色だけどな。

「バイクのタイヤを鑑定しなかったのか。俺は付与魔法が使えるんだよ。これが耐久力に不安のある試作品だろうが、俺の手にかかれば完成品と変わらん」
「付与魔法使いだったのですか!なんとも貴重な御方だ・・・」
「そこに停めてあるバイクのタイヤを鑑定してみ」


 シドがバイクに近寄って行き、鑑定した直後にブルブルと震え出した。


「私は『赤い流星』という人物を過小評価していたようです。軍師としての知略、そして聖帝と互角以上に闘ったその武力しか見ていませんでした」


 そして俺と視線を交わした後、もう一度タイヤに触れた。


「神髄は此方でしたか・・・」


 本当に頭の良い男だ。

 シドは、一瞬でミスフィート軍の恐ろしさを理解したから震えたのだ。
 集団全てに影響を及ぼす付与魔法の危険性に。

 こんな男が部下にいたらなーって考えが頭に過ぎったけど、これから最強の商人となる人物を軍に誘ったところで無駄だろう。

 むしろその立場を利用し合う関係の方が、互いに大きな利益となるに違いない。

 気に入ったぞ!俺の思考を読み取ることが出来る人物など、そういるもんじゃない。そしてこんな短期間にタイヤを作り上げたその手腕、見事としか言い様がない。


「タイヤは店の裏にある倉庫に積んであります。少々お待ちを」
「こっちが頼んだんだ。俺が運ぼう」
「えーと・・・、はい。お願いします!」


 倉庫からタイヤを運んで来た。
 そしてマジックバッグから『ゴーレムバス』を取り出した。


「うわっ!・・・あれ?この前の乗り物と違いますね」
「そこにいるパメラに作ってもらった新型のゴーレムだ」
「ゴーレム!?ダンジョンにいた、あの魔物ですか!」
「いや、魔物のゴーレムではない。コレは土魔法を駆使して人工的に作られたゴーレムだ。っていうかさっきサンプルゴーレムに乗ってただろ?」
「うぇえええ!?いや、『サンプルゴーレム』という名前なだけで、魔物なんかのゴーレムとは全然別物なのかと思っていました!」

 そんな会話をしながら、最近作った『自動ジャッキ』を使って片足を持ち上げ、『ゴーレムバス』の車輪にタイヤを嵌め込もうとする。

「うわ・・・これは面倒臭いな!土魔法使いに車輪を変形させてもらわんと、強引にタイヤを履かせるだけじゃ、走ってる間に脱げてしまいそうだ」
「そうなのです!報告するのが遅れてしまいましたが、土魔法使いに頼んで、その手法で装着させていました」
「ならばもう、鉄の車輪にタイヤを装着させた状態で売りに出す感じにするか?」
「なるほど!確かに此方で車輪を用意した方が、安全で完璧な物を提供する事が出来そうですね。・・・えーと、サンプルゴーレム本体には車輪が無い状態にして、タイヤ付きの車輪を合体させるのですよね?」
「惜しいけど少し違う。少々面倒だが、実物を見せて説明した方が早いな」


 少々どころかとんでもなく面倒臭かったけど、大型バスのタイヤを外して見せ、どうやって本体と合体させているのかを詳しく説明した。


「これなら逆に手間が掛からないかもしれませんね!ただ鉄を使う分、どうしても値段が高くなってしまいますが・・・」
「それはしゃーない。だが鉄ならダンジョンから無限に入手することが可能だから、優先して『雪丸屋』に流してやろう。値段は俺の一存では決められん」
「有難う御座います!!」


 パメラに手伝ってもらいながら、ようやく『ゴーレムバス』にタイヤを装着することが出来た。その状態で付与魔法をかけてタイヤを強化する。

 そして三人ともバスに乗り込み、500メートルほど走ってから元の場所まで戻って来た。


「少なくともこの『ゴーレムバス』に関してなら完成だ!引き続きシドはタイヤの完成に向かって突き進んでくれ」
「お任せを!」
「これで小烏丸も楽が出来るようになるわね!」
「運転手を育成しなきゃならんけどな!・・・さて、これほど早くタイヤを完成させてくれたシドに敬意を表し、褒美を取らせよう」
「!?」
「ん?褒美が貰えるとは考えてもいなかったのか。此方から頼みごとをして、その期待に応えてくれたのだ。礼もしないで城に帰ったら、俺がミスフィート様に叱られてしまうだろ。受け取ってくれないと困るな」
「あ、有難き幸せに御座います!」


 店内に移動し、マジックバッグからいくつかの魔道具を取り出して、カウンターの上に並べていった。


「こ、こんなに沢山・・・」
「これらはすべて魔道具だ。では一つずつ説明しよう」


 照明10個・エアコン・掃除機・水生成機の説明が終わり、最後にカウンターの前に洗濯機を出して、その使い方を説明した。

 ちなみにエアコンとは名ばかりで、ファンヒーターとクーラーを一つに合体させて、温風と冷風の切り替えが出来るようにしただけの魔道具だ。


「この中の一つでもとんでもない値打ち物だというのに、それをこんな大量に頂けるとは・・・。本当に有難う御座います!!」
「感謝ならミスフィート様にな!それと一つ、面白い情報を教えてやろう」
「情報・・・ですか?」
「もうすぐ、京の都に『学校』が建設される。その学校というのはな、剣を学び、魔法を学び、学問を学び、そしてゴーレムを学ぶ場所だ」
「なんと素晴らしい!!・・・ん?ゴーレム!?」
「そうだ、学校でゴーレムの作り方を学ぶことが出来るのだ!大人は仕事で忙しいだろうから、基本的には未来を担う子供達が大勢集まる学び舎になると思うが、ゴーレム教室に関しては大人の参加を推奨するね」
「ゴーレムを作るということは、土魔法使い限定ですか?」
「正解だ。たぶん学校を卒業する頃には、あの『サンプルゴーレム』が作れるようになってるぜ?」
「なんと!!」


 シドの目がキラリと光った。

 聡明なシドのことだ。
 この情報にどれほどの価値があるか、一瞬で気付いただろう。

 何人の従業員を学校に送り込んで来るか、なかなか見物だぞ?
 
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