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574 和泉が大興奮してしまう

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 ドサドサドサッ

 厨房の床の上に皆で釣った魚の入った箱を置いた後、シートを敷いてから山の幸をぶち撒けた。


「お土産だぞ!」


「「お土産ですって!?」」


 ミスフィートさんの声を聞きつけ、こちらへツカツカと歩いて来た和泉が、近くにあった植物を持ち上げた。


「うそっ!これってワサビじゃない!!」

「この魚って初めて見たんだけど、海の匂いがしなくない?」
「もしかして川魚なの?」
「湖で釣った魚だ!」
「え?湖??」

 料理班の驚きに、ダンジョン組もドヤ顔である。

「ワサビなんて、一体どこで採って来たの?」
「ダンジョンだぞ!」
「はい??」
「えっと・・・、魚は?」
「ダンジョンだぞ!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」


 混乱している料理班に、ネタばらしをしてやった。


「・・・というわけで、11階層まで進んだ時に出現する階段を上がると大自然ゾーンに出るんだよ!今日はあまり時間が無かったから、採取出来たのは『ふきのとう』『ワサビ』『クレソン』『湖で釣った魚』『ウド』『ヨモギ』くらいだったけど、絶対他にも色々あるだろうし、森を調べれば更なる山の幸が期待できるぞ!」

「すごいじゃない!!」
「魚しかわかんないんだけど・・・」
「えーとね、ここにある草は全部食べられる山菜で、天ぷらなんかにすると最高に美味しいの!あっ、ワサビはお刺身に付ける醤油に入れるのが王道の使い方ね!」

 思った通り、和泉のテンションが有頂天だ!『海の幸』は得意分野なのだが、俺達に足りなかったのは『山の幸』の方だったんだな。

「なあ和泉、一度料理班を全員ダンジョンに連れて行って、食べられる植物の勉強会を開いてみるのはどうだろう?」
「明日やるよ?」

 和泉に、『何当たり前のこと言ってんだコイツ?』って顔で見られた。

「お、おう。もうすでに行く気マンマンだったのね・・・」
「森に入れば、山菜だけじゃなく果物もあると思うんだよね~。内容次第では毎日通うかもしれない!」
「えーーーーーーーーーーー!!イズミ毎日通うつもりなの!?」
「あ、魔物が出るんだっけ?私達の護衛も何人か必要だね」
「うはっ!『私達』とか言ってるんですけどーーー!!」

 ご愁傷様。和泉がこうなると料理班全員が道連れだ。
 でも山菜の美味さを知れば、自分から行きたいって思うようになるかもね。

「今からじゃ魚を捌いてる時間はないけど、山菜だけササッと天ぷらにして食べちゃおうか!美味しさがわかれば絶対明日採取しに行きたくなるよ!」

「「おおおおおおおおおお~~~~~~~~~~~~~!」」


 そうして料理班が山菜を洗い始めたんだけど、ニャルルがジーーーッと釣った魚を見ていたので、鮎とニジマスらしき魚を手に取り、塩焼きにしてやることにした。

 ニャルルだけ贔屓するのは良くないんだけど、ワサビ醤油を試すのに刺身も出すって話だったので、他の人にはそれで我慢してもらおう。

 いや我慢も何も、とんでもないご馳走なんですけどね!



 ・・・・・



「天ぷらはタレにつけて食べるのがオススメなんだけど、塩だけ振って食べても美味しいですので、自分に合う食べ方を見つけるといいかも。お刺身の醤油の小皿にちょこんとくっついてるワサビは、最初は辛くてビックリすると思うけど、一体どんな味なのか挑戦してみて下さい!きっと何人かは好きになると思うよ!」


 いつものように、和泉による音頭で場は最高潮に盛り上がった。


 ―――――そして実食。


「天ぷらヤバくね?つーかコレってもう懐石料理だろ!」
「山菜を食うのは本当に久しぶりだから、美味すぎて涙が出そうだ・・・」
「ふきのとう?も美味いが、この変な味がする植物も意外と癖になる味だな!」
「それは『ウド』ですね!独特なので結構嫌がる人もいると思うのですが、いきなりそれを美味しいと感じるならば、もうどんな山菜でも美味しく頂けますよ!」

 当然ながら、ワサビ醤油で刺身を食った人は全員悶絶していた。

「くっふーーーーーー!苦ッ、いや辛い!?」
「鼻の奥がツーーーーーーーンってする!!」
「本当に辛いわね!でも生臭いのが苦手な人にはいいのかも?」
「確かに辛いんだけど、わたしは結構好きかもしれない!」


 その中に一人だけ、真剣に料理と向き合ってるプロがいた。
 もちろんニャルルのことだ。


「これはッ!ホロホロとした身が舌を優しく包み込む、最高のさかにゃにゃ!」
「何でニャルル一人だけ焼き魚食ってんだよ!?」
「こがにゃんが焼いてくれたにゃ」
「すごく天ぷらが美味しいし、焼き魚が無くても別によくない?」
「いや、そうなんだけど!まあ、魚にうるさいニャルルが釣った魚をすぐ食えないのも可哀相だしな・・・。こがっちの気持ちもわかるか」
「こっちの大きい方も、メチャメチャ美味いにゃ!!」
「良かったね~!」
「あたいも明日食ってみっかな?でも城の皆が食うにはもっと釣らねえと!」
「決まり!じゃあ明日は朝から釣りだね!」


 ほうほう!ってことは、あの三人は釣り班に決定か。
 なんかダンジョンの深層を攻めるよりも、こっちの方が流行りそうじゃね?

 正直俺も山菜の方が気になって、ダンジョンどころじゃないもんな。
 親父も山菜に目覚めたようで、すでにやる気マンマンだし。

 ちなみに今日は採取に夢中になりすぎて、結局猫水晶を使って帰って来た。
 すなわち、あの大自然の先に何があるのか不明なままなのだ。
 山菜集めがメインだが、そこもちゃんと調べておかねばなるまいよ。

 ・・・あ、サンプルゴーレムってどうなったんだろ?

 仕事を頑張っているパメラやエルフ達の動きも把握しとかなきゃな。
 ぶっちゃけ、シドの店に行くのがすげぇ面倒臭いっス!!
 
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