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562 両目の視力を失った子の治療
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皆が手伝ってくれたおかげで、まずは大浴場が使用可能となった。
しかしなぜかミスフィート軍の大浴場は女性専用の施設と決まっているので、男性陣から文句を言われないように、続けて男風呂を使用可能にした。
そして早速、親父やゼーレネイマス達が使用したんだけど、新城の男風呂はレイリア城のよりも大きく、しかもプールまであるので、これには仲間達も大満足だった。
もちろん大浴場の方は女性達が一気に雪崩れ込んだので満員状態だ。しかし今回はあえて男風呂の方を使わせてもらった。
ソフィアに魔法で癒してもらったんだけどさ、そういう身体的な問題じゃなく、今の俺は一切女体を求めていないのだ!
むしろ少し遠ざかりたい精神状態なのです。
夕食後に再戦らしいけど!!
風呂に入った後は夜勤に備えて少し寝る予定だったんだけど、このままでは城内での暮らしが不便すぎると思ったので、結局寝ないで魔道具を設置していった。
とはいえ、ミスフィートさんを含めた女性らも手伝ってくれたので、城全体の魔道具の設置も、夕食前に粗方終わらせることが出来た。
―――――そして夕食後は、ミスフィートさんへのリベンジマッチ。
当然、覚醒した彼女に勝てるハズもなく、フルボッコの惨敗でした・・・。
ただ寝不足なのはミスフィートさんも一緒なので、朝方になってようやく、ダブルノックアウトで眠りにつくことができましたよ!
************************************************************
翌日の朝、京の街外れにある建物にいた人達が、引っ越し荷物と共に新城へとやって来た。
中には俺のよく知る人達もいたんだけど、その前にまずは両目を斬られて視力を失った子の治療だ!
すぐ治療してあげたい気持ちが強かったので、急いで城内に用意されていた保健室みたいな部屋に彼女を連れて来た。
「グミ、視力を失いながらもよく頑張ったな!早速、今から目の治療を始めるぞ!聖水を飲むだけで効果があるのはご存じの通りだが、目にも直接聖水をかけて両方から治療してみるつもりだ」
彼女は反乱軍時代からミスフィートさんと共に戦っていた初期メンバーの一人で、本名を『グミリスティア』という。長いので皆に『グミ』と呼ばれている子だ。
「グミの目、治るの?」
「絶対とは言えない。だが今まで聖水に命を救われた人達を見てきただろう?少なくとも痛みなどは消え去るハズだ」
それに、昔ヴォルフの目を癒したことがあるんだよ!
だから、本当は『絶対治る!』と言って安心させてやりたいんだけど、もし視力が戻らなかったらぬか喜びさせてしまうので、今の段階で適当なことは言えない。
「ふぅ・・・、怖いけど・・・、怖いけど、治療をお願いします!」
聖水をぶっかけるだけだから、治療と呼べるような大層なもんじゃないんだけどね。だが人の命を預かる者として、緊張するのは医者と変わらないんだ。
「じゃあ包帯を外すぞ。聖水を飲み干したら座ってるベッドに仰向けになってくれ。その直後に聖水を目にかけていく。少し染みるかもしれないけど、絶対に嫌がらずに受け入れるんだ!」
「は、はいっ!」
「今から聖水の入ったコップを渡すけど、両手でしっかり持ってから、落ち着いて飲み干してくれ」
「ふーーー、ふーーー、見えないから緊張するーーーーー!!」
「大事なことだから真剣に話したけど、水を飲むだけなんだから気楽にな!」
聖水の残量が少ないのもあって、慎重にコップを手渡した。
そして一つ深呼吸した後、グミは聖水を飲み干し、ベッドに仰向けになった。
(少し痛いかもしれんけど我慢してくれ!)
指で彼女の瞼を開き、チョロチョロを聖水をかけていく。
グミは微々たる抵抗もせず、最後まで俺に身を任せてくれた。偉いぞ!
おそらく治療箇所に異変を感じているのだろうけど、グミはその異変が治まるまでじっと待った。
―――――そして意を決した彼女がそっと目を開く。
数回ほど瞬きしたグミは周囲を見渡した後、ベッドから起き上がり俺の目を見た。
その瞬間、彼女が視力を取り戻したことがわかった。
「見える!全部見えるよ!!うわーーー小烏丸だーーーーー!!」
「よかったな、グミ!」
駆け寄って来たグミに思いっきり抱きしめられた。
よっぽど嬉しかったのだろう。
完全に視力を失ったことが無い俺には、それがどれほどの喜びなのかはわかりようもないけど、抱きしめる力から彼女の感情が伝わって来て、こっちも嬉しくなってくる。ビショビショだけどな!
ガチャリ
治療の邪魔にならぬよう、心配ながらも部屋の外に控えていた女性達が、グミの喜ぶ声を聞いて保健室に飛び込んで来た。
「グミ!治ったの!?」
心配してたであろう和泉の質問に、グミが満面の笑みを浮かべながら返答する。
「見えるようになったよ!いや、前よりよく見えるようになったかも!?」
なるほど、グミは視力が悪かったのかもしれないな。
ニャルルも視力が回復したって言ってたし、やっぱ聖水スゲーわ。
「聖水を飲んだだけだよね?あ、もしかして視力も回復したのかなあ?」
その質問にグミがすぐさま答える。
「いっぱい飲んだあと、ぶっかけられたの!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
室内が凍りついた。
「なるほど。ミスフィートさん一人くらいじゃ全然物足りないと?」
「あの赤い男は、この密室で一体どんな行為をしてたんだ?」
「『せ』から始まって二文字目が『い』の、とんでもない液体をぶっかけられただって!?」
「不潔だわッ!!」
「少し目を離しただけでこうなるんだね・・・」
「また嫁が増えたにゃ」
いや、ちょっと待て。
なぜ一瞬にしてこっちの流れになるんだよ!!
一文字目が『せ』で二文字目が『い』なのは確かにあってるが、『せい水』な!
「いや、お前らわかっててやってるだろ!?」
「「小烏丸さん不潔よーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
またこのパターンですか!?
何にしても、グミに笑顔が戻ったからよしとすっか!
しかしなぜかミスフィート軍の大浴場は女性専用の施設と決まっているので、男性陣から文句を言われないように、続けて男風呂を使用可能にした。
そして早速、親父やゼーレネイマス達が使用したんだけど、新城の男風呂はレイリア城のよりも大きく、しかもプールまであるので、これには仲間達も大満足だった。
もちろん大浴場の方は女性達が一気に雪崩れ込んだので満員状態だ。しかし今回はあえて男風呂の方を使わせてもらった。
ソフィアに魔法で癒してもらったんだけどさ、そういう身体的な問題じゃなく、今の俺は一切女体を求めていないのだ!
むしろ少し遠ざかりたい精神状態なのです。
夕食後に再戦らしいけど!!
風呂に入った後は夜勤に備えて少し寝る予定だったんだけど、このままでは城内での暮らしが不便すぎると思ったので、結局寝ないで魔道具を設置していった。
とはいえ、ミスフィートさんを含めた女性らも手伝ってくれたので、城全体の魔道具の設置も、夕食前に粗方終わらせることが出来た。
―――――そして夕食後は、ミスフィートさんへのリベンジマッチ。
当然、覚醒した彼女に勝てるハズもなく、フルボッコの惨敗でした・・・。
ただ寝不足なのはミスフィートさんも一緒なので、朝方になってようやく、ダブルノックアウトで眠りにつくことができましたよ!
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翌日の朝、京の街外れにある建物にいた人達が、引っ越し荷物と共に新城へとやって来た。
中には俺のよく知る人達もいたんだけど、その前にまずは両目を斬られて視力を失った子の治療だ!
すぐ治療してあげたい気持ちが強かったので、急いで城内に用意されていた保健室みたいな部屋に彼女を連れて来た。
「グミ、視力を失いながらもよく頑張ったな!早速、今から目の治療を始めるぞ!聖水を飲むだけで効果があるのはご存じの通りだが、目にも直接聖水をかけて両方から治療してみるつもりだ」
彼女は反乱軍時代からミスフィートさんと共に戦っていた初期メンバーの一人で、本名を『グミリスティア』という。長いので皆に『グミ』と呼ばれている子だ。
「グミの目、治るの?」
「絶対とは言えない。だが今まで聖水に命を救われた人達を見てきただろう?少なくとも痛みなどは消え去るハズだ」
それに、昔ヴォルフの目を癒したことがあるんだよ!
だから、本当は『絶対治る!』と言って安心させてやりたいんだけど、もし視力が戻らなかったらぬか喜びさせてしまうので、今の段階で適当なことは言えない。
「ふぅ・・・、怖いけど・・・、怖いけど、治療をお願いします!」
聖水をぶっかけるだけだから、治療と呼べるような大層なもんじゃないんだけどね。だが人の命を預かる者として、緊張するのは医者と変わらないんだ。
「じゃあ包帯を外すぞ。聖水を飲み干したら座ってるベッドに仰向けになってくれ。その直後に聖水を目にかけていく。少し染みるかもしれないけど、絶対に嫌がらずに受け入れるんだ!」
「は、はいっ!」
「今から聖水の入ったコップを渡すけど、両手でしっかり持ってから、落ち着いて飲み干してくれ」
「ふーーー、ふーーー、見えないから緊張するーーーーー!!」
「大事なことだから真剣に話したけど、水を飲むだけなんだから気楽にな!」
聖水の残量が少ないのもあって、慎重にコップを手渡した。
そして一つ深呼吸した後、グミは聖水を飲み干し、ベッドに仰向けになった。
(少し痛いかもしれんけど我慢してくれ!)
指で彼女の瞼を開き、チョロチョロを聖水をかけていく。
グミは微々たる抵抗もせず、最後まで俺に身を任せてくれた。偉いぞ!
おそらく治療箇所に異変を感じているのだろうけど、グミはその異変が治まるまでじっと待った。
―――――そして意を決した彼女がそっと目を開く。
数回ほど瞬きしたグミは周囲を見渡した後、ベッドから起き上がり俺の目を見た。
その瞬間、彼女が視力を取り戻したことがわかった。
「見える!全部見えるよ!!うわーーー小烏丸だーーーーー!!」
「よかったな、グミ!」
駆け寄って来たグミに思いっきり抱きしめられた。
よっぽど嬉しかったのだろう。
完全に視力を失ったことが無い俺には、それがどれほどの喜びなのかはわかりようもないけど、抱きしめる力から彼女の感情が伝わって来て、こっちも嬉しくなってくる。ビショビショだけどな!
ガチャリ
治療の邪魔にならぬよう、心配ながらも部屋の外に控えていた女性達が、グミの喜ぶ声を聞いて保健室に飛び込んで来た。
「グミ!治ったの!?」
心配してたであろう和泉の質問に、グミが満面の笑みを浮かべながら返答する。
「見えるようになったよ!いや、前よりよく見えるようになったかも!?」
なるほど、グミは視力が悪かったのかもしれないな。
ニャルルも視力が回復したって言ってたし、やっぱ聖水スゲーわ。
「聖水を飲んだだけだよね?あ、もしかして視力も回復したのかなあ?」
その質問にグミがすぐさま答える。
「いっぱい飲んだあと、ぶっかけられたの!!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
室内が凍りついた。
「なるほど。ミスフィートさん一人くらいじゃ全然物足りないと?」
「あの赤い男は、この密室で一体どんな行為をしてたんだ?」
「『せ』から始まって二文字目が『い』の、とんでもない液体をぶっかけられただって!?」
「不潔だわッ!!」
「少し目を離しただけでこうなるんだね・・・」
「また嫁が増えたにゃ」
いや、ちょっと待て。
なぜ一瞬にしてこっちの流れになるんだよ!!
一文字目が『せ』で二文字目が『い』なのは確かにあってるが、『せい水』な!
「いや、お前らわかっててやってるだろ!?」
「「小烏丸さん不潔よーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
「うがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
またこのパターンですか!?
何にしても、グミに笑顔が戻ったからよしとすっか!
応援ありがとうございます!
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