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555 涙の別れ
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レイリア城に到着した俺達一行は、フローラとミリーにこれ以上無いほどの歓待を受けた。
最高級の料理を頂いた後は食後のデザートまでご馳走になり、これには同行した仲間達も感動していたな。
そして大浴場でフローラやミリーに背中を流してもらった後はプールで泳ぎまくり、夜は懐かしい自分の部屋でゆっくりと寛いだ。
今回親父は別室に案内されて、そこでぐっすり寝たらしい。
とても素晴らしい城だと喜んでたぞ!
―――そして翌日。
「試される大地・北海道から、よくぞこんな遠くまで俺について来てくれた。辛い時も悲しい時も、お前がいたからこそ俺は耐え忍ぶことができたんだ」
「辛い時や悲しい時なんてあったか?」
「思ったより余裕シャクシャクの旅だったよね?」
「猫にゃんとの別れは辛かったにゃ・・・」
「長き旅を経て、とうとうお前をレイリア城のある伊勢の地まで連れて来ることに成功した!向こうとは気温が違うが、あの過酷な旅に耐えたお前ならきっと、この地で繁殖することも可能だろう。俺と共に伊勢をコーヒーの国にしような!」
「あの植物は、なぜあんなにも小烏丸の寵愛を受けているのかしら?」
「小烏丸はコーヒーが唯一の趣味なのじゃ」
「あの植物に語り掛けている姿は何度も見たぞ。ご主人様にとって、あの植物だけが友達と呼べる存在なのだろう」
「植物としか友達になれない男の人って・・・」
「しかし残念ながら俺はしばらくこの地を離れなければならない。だが育成方法はフローラとミリーに伝えてあるので安心してくれ。きっと良くしてくれるハズだ」
「紙に字がビッシリ書いてあって驚いたわ。しかもそれが10枚よ!?」
「10000字を超えてそうだったよね・・・。アレって寝ないで書いたのかな?」
「絶対アホだろコイツ」
ガヤ席がうるさいな。気が散るだろ!
命より大切ともいえる『コーヒーノキ』は、レイリア城の野菜農園でもあるガラスハウスの隣に植えた。
このたった一本の木が、いずれは伊勢の大地にどんどん広がって行くのだ。
すべての国民がコーヒーを飲めるようになるには今しばらくかかりそうだが、俺は必ず成し遂げて見せるからな!
「ではしばしのお別れだ!たまに様子を見に来るから、そんなに寂しい顔をするな」
久しぶりに大地に根を降ろした『コーヒーノキ』を優しく撫でた。
「じゃあな!」
そして仲間達と合流した途端、堪えていた涙が溢れ出てきた。
「人と別れても泣いたことなんか無いのに、何で植物との別れで泣いてんだよ!」
「この人やっぱりちょっとおかしいと思う!」
「アホにゃんにゃ。そっとしといてやるにゃ」
笑顔のまま別れることはできたが、泣いてる姿を仲間に見られてしまったか。
「ところで、すぐに京の都に向かって出発するの?」
フローラの質問に答えるため、ハンカチで涙を拭いた。
「ああ。成長したレイリアの街も気になるが、やはりまずはミスフィートさんへの帰還報告を優先したいからな」
「そっか~、でもレイリアの港に船を作りに来るのよね?」
「船の優先順位は高いぞ。しかしその前に聖帝領を完全支配しなければならない。四国をどうするかは、ミスフィートさんと相談して決めようと思ってる」
「そうだ、四国があったね!たぶん近畿地方は、残ってるとこもほぼ最終局面だと思うよ?」
ミリーはかなりの情報を握ってるハズだから、本当にそんな感じなのだろう。
「悪いなゼーレネイマス、四国まで出番が無いかもしれん」
「ふむ・・・。まあ何にせよ京の都を見てからだな」
「オレも楽しみっスけど、尾張の方が栄えてるんスよね?」
「見もせずに言うのも早計だが、間違いなく尾張の勝ちだと思うぞ?ただし俺が京の都を成長させるけどな!」
でも腹黒い商人達の好きにはさせねえよ?
尾張から京の都への転売なんかじゃ稼がせねえ!儲けたいなら己の血と汗を流せ。
「ところで線路はどこまで伸びた?」
「京の都まで開通してるわよ!今は摂津の国に向かって伸ばしてるところ」
「そうか!じゃあ機関車は京の都まで行ったら返すよ」
「落ち着いたら機関車も作ってね。正直全然足りてないから」
「くっ、わかってる。やることが山積みで涙が止まりませんぞ・・・」
更に溢れ出た涙をハンカチで拭いた。
「じゃあ早速出発しますか。二人とも、『コーヒーノキ』を頼んだぞ!」
「なんか責任重大過ぎて、こっちも涙が止まらないんですけど!」
「わたし達との別れじゃ泣かないんだね!うん、知ってた」
こうしてフローラ&ミリーと別れ、俺達一行は京の都へ向かって出発した。
************************************************************
「これが『大和の国』か~」
まだ京の都がある『山城の国』ではなく、伊勢の隣国である『大和の国』に入ったばかりだ。雰囲気はヒューリック統治下だった頃の伊勢みたいな感じかな?
ただポツポツ見える家が瓦屋根だったりするので、伊勢と比べるとこの国の方が情緒ある風景と言えるだろう。
こういう風に歴史を感じてしまうと、尾張や伊勢のような近代的な街にはせず、この国独特の雰囲気を残すのがいいのかもしれないと考え直した。おそらく京の都も歴史を感じる建造物だらけだと思うんだよね。
ただガラス窓は国民全員が欲しがるだろうから、少し違った感じに育ってしまうのはしょうがないかな・・・。
「小烏丸も初めて来る国なのよね?」
「俺が知ってるのは伊勢の国までだ」
「じゃあ質問しても答えられないわね」
パメラってこういう国が好きなんかな?
「そうだな~。でもまだ田舎を通過してるに過ぎないから、この国の首都がどんな感じなのかは興味がある」
「本当にいい景色よね~!」
正直、『大和の国』の首都に寄り道したい!
でも今回ばかりは素通りしなきゃダメなのだ。もういい加減ミスフィートさんの所に行かないと文句を言われそうだし、何よりも話が進まんからな!
というわけで、残念ながら『大和の国』はスルーします。
ミスフィートさん、もうすぐ到着しますからねーーーーー!!
最高級の料理を頂いた後は食後のデザートまでご馳走になり、これには同行した仲間達も感動していたな。
そして大浴場でフローラやミリーに背中を流してもらった後はプールで泳ぎまくり、夜は懐かしい自分の部屋でゆっくりと寛いだ。
今回親父は別室に案内されて、そこでぐっすり寝たらしい。
とても素晴らしい城だと喜んでたぞ!
―――そして翌日。
「試される大地・北海道から、よくぞこんな遠くまで俺について来てくれた。辛い時も悲しい時も、お前がいたからこそ俺は耐え忍ぶことができたんだ」
「辛い時や悲しい時なんてあったか?」
「思ったより余裕シャクシャクの旅だったよね?」
「猫にゃんとの別れは辛かったにゃ・・・」
「長き旅を経て、とうとうお前をレイリア城のある伊勢の地まで連れて来ることに成功した!向こうとは気温が違うが、あの過酷な旅に耐えたお前ならきっと、この地で繁殖することも可能だろう。俺と共に伊勢をコーヒーの国にしような!」
「あの植物は、なぜあんなにも小烏丸の寵愛を受けているのかしら?」
「小烏丸はコーヒーが唯一の趣味なのじゃ」
「あの植物に語り掛けている姿は何度も見たぞ。ご主人様にとって、あの植物だけが友達と呼べる存在なのだろう」
「植物としか友達になれない男の人って・・・」
「しかし残念ながら俺はしばらくこの地を離れなければならない。だが育成方法はフローラとミリーに伝えてあるので安心してくれ。きっと良くしてくれるハズだ」
「紙に字がビッシリ書いてあって驚いたわ。しかもそれが10枚よ!?」
「10000字を超えてそうだったよね・・・。アレって寝ないで書いたのかな?」
「絶対アホだろコイツ」
ガヤ席がうるさいな。気が散るだろ!
命より大切ともいえる『コーヒーノキ』は、レイリア城の野菜農園でもあるガラスハウスの隣に植えた。
このたった一本の木が、いずれは伊勢の大地にどんどん広がって行くのだ。
すべての国民がコーヒーを飲めるようになるには今しばらくかかりそうだが、俺は必ず成し遂げて見せるからな!
「ではしばしのお別れだ!たまに様子を見に来るから、そんなに寂しい顔をするな」
久しぶりに大地に根を降ろした『コーヒーノキ』を優しく撫でた。
「じゃあな!」
そして仲間達と合流した途端、堪えていた涙が溢れ出てきた。
「人と別れても泣いたことなんか無いのに、何で植物との別れで泣いてんだよ!」
「この人やっぱりちょっとおかしいと思う!」
「アホにゃんにゃ。そっとしといてやるにゃ」
笑顔のまま別れることはできたが、泣いてる姿を仲間に見られてしまったか。
「ところで、すぐに京の都に向かって出発するの?」
フローラの質問に答えるため、ハンカチで涙を拭いた。
「ああ。成長したレイリアの街も気になるが、やはりまずはミスフィートさんへの帰還報告を優先したいからな」
「そっか~、でもレイリアの港に船を作りに来るのよね?」
「船の優先順位は高いぞ。しかしその前に聖帝領を完全支配しなければならない。四国をどうするかは、ミスフィートさんと相談して決めようと思ってる」
「そうだ、四国があったね!たぶん近畿地方は、残ってるとこもほぼ最終局面だと思うよ?」
ミリーはかなりの情報を握ってるハズだから、本当にそんな感じなのだろう。
「悪いなゼーレネイマス、四国まで出番が無いかもしれん」
「ふむ・・・。まあ何にせよ京の都を見てからだな」
「オレも楽しみっスけど、尾張の方が栄えてるんスよね?」
「見もせずに言うのも早計だが、間違いなく尾張の勝ちだと思うぞ?ただし俺が京の都を成長させるけどな!」
でも腹黒い商人達の好きにはさせねえよ?
尾張から京の都への転売なんかじゃ稼がせねえ!儲けたいなら己の血と汗を流せ。
「ところで線路はどこまで伸びた?」
「京の都まで開通してるわよ!今は摂津の国に向かって伸ばしてるところ」
「そうか!じゃあ機関車は京の都まで行ったら返すよ」
「落ち着いたら機関車も作ってね。正直全然足りてないから」
「くっ、わかってる。やることが山積みで涙が止まりませんぞ・・・」
更に溢れ出た涙をハンカチで拭いた。
「じゃあ早速出発しますか。二人とも、『コーヒーノキ』を頼んだぞ!」
「なんか責任重大過ぎて、こっちも涙が止まらないんですけど!」
「わたし達との別れじゃ泣かないんだね!うん、知ってた」
こうしてフローラ&ミリーと別れ、俺達一行は京の都へ向かって出発した。
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「これが『大和の国』か~」
まだ京の都がある『山城の国』ではなく、伊勢の隣国である『大和の国』に入ったばかりだ。雰囲気はヒューリック統治下だった頃の伊勢みたいな感じかな?
ただポツポツ見える家が瓦屋根だったりするので、伊勢と比べるとこの国の方が情緒ある風景と言えるだろう。
こういう風に歴史を感じてしまうと、尾張や伊勢のような近代的な街にはせず、この国独特の雰囲気を残すのがいいのかもしれないと考え直した。おそらく京の都も歴史を感じる建造物だらけだと思うんだよね。
ただガラス窓は国民全員が欲しがるだろうから、少し違った感じに育ってしまうのはしょうがないかな・・・。
「小烏丸も初めて来る国なのよね?」
「俺が知ってるのは伊勢の国までだ」
「じゃあ質問しても答えられないわね」
パメラってこういう国が好きなんかな?
「そうだな~。でもまだ田舎を通過してるに過ぎないから、この国の首都がどんな感じなのかは興味がある」
「本当にいい景色よね~!」
正直、『大和の国』の首都に寄り道したい!
でも今回ばかりは素通りしなきゃダメなのだ。もういい加減ミスフィートさんの所に行かないと文句を言われそうだし、何よりも話が進まんからな!
というわけで、残念ながら『大和の国』はスルーします。
ミスフィートさん、もうすぐ到着しますからねーーーーー!!
応援ありがとうございます!
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