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554 託す

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 視界ゼロの植物男だったことが災いし、美しくなったレイリアの街並みを横目でしか見ることが出来ないまま、俺達一行はレイリア城に到着した。


「ここがレイリア城だ!」
「お前、葉が生い茂った植物を抱えてるくせに、何で前が見えるんだよ!?」
「俺くらいの紳士になると、前が見えないくらいでへこたれたりしないのだ」
「いや、紳士とか全然関係ねえだろ!」
「こがっちって、なぜか見えなくても戦えるんだよな~」
「街全体が暗闇に包まれたのに、怪我一つしないで黒龍を倒してたよね!」
「こがにゃんはちょっと頭がおかしいにゃ」
「マスクが怪しいと思って一度貸してもらったのだが、同じように植物を抱えたら前がまったく見えなかったぞ!」


 俺が平然と植物男をこなしている姿に疑問をもったセレスティーナに、マスクとヘルメットを貸してやったことがあるのだ。ショーナンの街を抜ける時だったかな?

 仲間とそんな会話をしながら、城門まで歩いて来た。


「止まれ!一般人の立ち入りは許可出来ない!」


 しかし葉っぱが邪魔で俺の姿が見えず、知らない面々を見て、門番に一般人だと思われてしまったようだ。お嬢は・・・ああ、俺の後ろにいたのか。

 抱えてた『コーヒーノキ』を地面に降ろした。


「うぇええええええええええ!?こ、小烏丸様!!・・・ですよね?本物!?」
「俺のことをまだ覚えていたとは、なかなか優秀だな」
「その声!本物だーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「尾張軍師、只今帰還した!同行者は旅の途中で集めた仲間だ。通るぞ?」
「ワタクシもいましてよ?」
「あっ!ベアトリーチェ様!あれ?確か美濃で戦っているとか・・・」
「美濃は平定しましてよ!ドワンゴ殿が後処理をしてくれていますわ!」
「なんと!?おめでとうございます!!あ、どうぞお通り下さい!!」


 再び地面に置いてあった『コーヒーノキ』を抱え、ようやく俺達は城内へと入って行った。

 一見どこにでもいる植物男だったのもあり、奇異な目で見られてはいたけど、俺だと気付かれることなく、玉座の間へと到着した。

 両手が塞がってる俺の代わりに、お嬢に扉を開けてもらう。


 ギィーーーーーーーーーーー


 さて、一体誰がこの城に残ってるんだろな?


「はあ!?」

「フローラ!只今美濃より帰還しましてよ!」

「お嬢じゃない!久しぶりね!!でもその植物は一体何!?」

 フローラがいたのか!
 当然姿は見えないけど、彼女が駆け寄って来たのがわかった。

「何の植物なのよ?こんなの城内に持って来てどうするつもり?」
「これは『コーヒーノキ』という植物だ。俺の宝物だから取り扱いには注意な!」
「コーヒーノキ?聞いたことないわね。・・・あれ?今の声って」

 植物を右側にそっと置いて顔を見せた。

「小烏丸じゃないの!!」
「おっと!」

 フローラに抱きしめられた。

 なんか城に寄るたびに毎度このパターンだな。
 それだけ皆に心配をかけたってことなのだろう。本当にごめんな!

「あれ?小烏丸くんがいる!!」

 声の方を見ると、そこにいたのはミリーだった。
 メイド服を着た彼女は、相変わらずそこにいるだけでほっこりするね!

「久しぶりだな!やっと北の大地より帰還したぞ!」

 そう言った直後にミリーが駆け寄って来て、彼女にも抱きしめられた。

「うわあああああああああああん!!」
「ぐすっ、ぐすっ」

「もう嫁が増えるのが当たり前になってきたな」
「これは嫁っつーか、普通に仲間に慕われてるだけじゃねえのか?」
「いや、嫁にゃ」
「嫁だよね?」


 フローラとミリーが泣き止むまで10分ほどあやし続けた。
 嬉しいんだけど、ガヤ席のヤツらに見られてるのが恥ずかしいんだよな・・・。


「えーとすなわち、ミスフィートさんの居城は一応レイリア城のままで、フローラとミリーが城の留守を任せられてる状態なんだな?」
「そういうこと!戦闘が得意な人達はほとんど最前線にいて、内政向きの面々が各城を守りながら物資の輸送なんかをしているわ」
「ちょっと前までイズミとナターシャもいたんだけど、京の都の統治が落ち着いたから、料理班として連れて行かれちゃった!」
「料理も士気を維持するのに重要だからな。それはしょうがない」

 和泉がこの城に居れば安心して『コーヒーノキ』を任せられたんだが、いないものはしょうがない。まあでもフローラとミリーの真面目な性格なら任せられるな。

「二人に大切なことを頼みたい!」
「「え!?何??」」
「そこにある植物を城の庭に植えてくから、お世話をしてもらいたいんだ」

 二人が床に置かれた『コーヒーノキ』を見た。

「えーと・・・、水をあげればいいだけよね?」
「育てるのが難しいとかだったら困るよ!」

「いあ、旅の間に枯れなかったくらいだから、そう弱い植物ってわけでもない。ただ絶対この地に繁殖させたい植物だから、毎日健康チェックをして欲しいんだ。育成方法は後で紙に書いて渡そう。いや待てよ?小まめに連絡を取りたいから通信機を預けておいた方がいいか。俺が直接見に来ればいいんだが、他にも仕事が盛沢山だからなあ・・・。でも京の都に畑を増やすのもどうかと思うから、やっぱ京の都ではなく、治安の良い伊勢の国をコーヒー産地にするべきだと思うんだよ。しかしこれは本当に難しい問題だぞ・・・なぜ俺の身体は一つしか無いんだ!!」

「話が止まらない!?」
「何かすごく大変そうなんですけど!!」

「さすが北海道からここまで植物男をやってただけあるな!情熱が半端無いぜ!」
「万が一植物を枯らしでもしたら大暴れしそうな予感がするよ!」
「コーヒーが大切なのはわかるけどアホにゃ!」
「絶対アホだよなコイツ」


 やはり『コーヒーノキ』は、フローラとミリーに託すしかないだろうな。

 しかし比較的信頼できる二人といえど心配だ・・・。
 定期的にこの城まで足を運んで、自分の目でも確認しなければなるまい。
 
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