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553 レイリアの街

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 シェルフィーユまでの機関車の旅は本当に楽しかった!

 車内販売でポテチを買ったんだが、食べるのは陸奥にいた時以来だったのもあってめっちゃ美味かった。

 けど一般客に聞いたところ、最近は尾張中の商店でポテチが買えるようになったらしい。それどころか菓子パンなども売っているそうだ。

 もう間違いなく和泉とルシオのおかげだろう。

 味噌・醤油の工場を稼働させただけじゃなく、食文化まで発展させていたことにマジで感動したよ。

 今までは俺が行動して初めて文化レベルが一つ上がる感じだったけど、俺が長期不在って状況でも尾張は発展するのだ!

 人を頼れるってのは、こんなに素晴らしいことだったんだな・・・。

 内政官を育てておいて本当に良かった!
 尾張はもう脳筋の国じゃないのだ。これで少しは三河に追いつけたかな?


 そしてシェルフィーユに到着した俺達はシロネコ城へとやって来たんだけど、俺の知らない間にセーラがシロネコ城主になっていた。

 実は彼女って、記念すべき第一回論功行賞で服をゲットした出世頭でもあり、物資の調達・伝令・情報収集などの全てをこなす、裏方仕事の達人でもあるのだ。

 セーラがシロネコ城を任された理由はそこにもあって、尾張の物資をシェルフィーユに集め、それをスムーズに伊勢へと輸送するのが主な任務となっているらしい。


「だから結構大変なんだよ~」
「それは重要な任務だな。尾張からの物資が速やかに前線へと送られて来るから皆安心して戦えるんだ。それにシェルフィーユの街も活気があって、素晴らしい成長を感じたよ。よく頑張ったな!」
「えへへ」

 セーラの頭をヨシヨシすると、彼女は満面の笑みを見せた。

「また嫁が増えたぞ!」
「あの表情は完堕ちしてるのじゃ」
「でも本当に可愛い娘だね~!」
「此処にも強敵が一人いましたのね!?レイリア会議で報告しなければ・・・」


 なんか後ろのガヤ席からレイリア会議とか聞こえてきたけど、なんのこっちゃ?





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 そしてシロネコ城に一泊した後、丁度レイリア城への輸送があるからと、軍用機関車に乗せてもらえることになった。


「マジか!レイリアの街ってそんなデカくなったの?」
「すごく綺麗な街並みだから、人がどんどん集まって来たんだよ!もう伊勢の首都と呼んでもいいんじゃないかなあ?近くに大きな港も出来たからね~!」
「ああ!レイリア城から半日くらいの所にある、伊勢海老を獲りまくったポイントか!エルフ達が頑張ったのかな?」
「うん!あそこをルーサイア規模の大きな港にしたの。小烏丸くんが置いていった船で毎日漁をしてるハズだよ」
「うおーーーーー!あんまり覚えてないけど、2隻の小船くらいしか無かったような気がするぞ・・・」
「正解だよ!レイリア城に着いたら、大きな船を作ってあげてね!」
「くっ、仕方あるまい。小船じゃ可哀相だしな・・・」


 あの時は聖帝軍との決戦間近で、罠を張り巡らせることに集中してたからなぁ。
 ミスフィートさんと合流したら、やることいっぱいで地獄ロード確定っスわ!


「じゃあそろそろ出発するか~」


 地面に置いてあった『コーヒーノキ』を抱えた。

 当然ながらセーラは頭に『?』をいっぱい浮かべている。


「なんで植物なんか持って歩いてるの?前が全然見えないんじゃ?」
「見えん。しかし俺くらいの男になると、見えなくとも障害物に屈しないのだ。ちなみにコレは『コーヒーノキ』って名前の植物で、育つと豆がなるんだが、その豆を使った飲み物が作れるんだよ」
「へーーーーーーーーーーーー!」
「しかしよくそんな物を抱えたまま北海道から旅して来たな?お前アホだろ?」
「なにおう!?」

 確かに親父が言うようにアホ評価も一理ある。どう考えても旅の邪魔にしかならんからな。しかしハンデを抱えるほどの価値がコイツにはあるのだよ!

「落ち着いたらまたシロネコ城に来てね!」
「ああ、いつって約束は出来ないけど絶対来るよ!」

「植物男、おせーぞー!」
「早くするにゃ!」

「おいゴマちゃん、その呼び方はやめろ!越後にいるような気分になるから!」



 そうして俺達と物資を乗せた軍用機関車は、レイリア城に向かって出発した。





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 素通りするのもどうかと思い、途中でパラスナグア城にも寄ったんだけど、この城は未だにレヴィンが城主をやっていた。

 聖帝と死闘を演じた俺は伊勢でも英雄扱いで、本当に心からの歓待を受けたのだけれど、この城はちょっと伊勢色が強くて俺にとってはアウェイ状態なんですよね。

 まあそれでも伊勢の国は広く、すぐにレイリア城に行けるわけでもないので、仲間達と共にココに一泊させてもらった。

 この城だけ仲間外れにするのもおかしいから、魔道具なんかは伊勢滞在中に設置してあったので、何の問題も無く快適に過ごせましたよ!



 そして再び軍用機関車に乗り込み、数日後、俺達一行はようやくレイリアの街へと到着した。



「めっちゃ栄えてるんですけどーーーーーーーーーー!!」


 まだレイリア駅に降りただけなんだけど、そこから見える景色はシェルフィーユに匹敵するレベルだった!

 短期間であの街に追いつくとか、一体どうなってやがんだよ!


「なんでご主人様が驚いているのだ?この地に滞在してたことがあるのだろう?」
「俺がいた当時ってのはレイリア城が完成した直後だから住民もそれほど多くなくてさ~、建物も数える程しか無かったんだよ」
「ほ~~~!それが短期間でこの様な美しき街に育ったのじゃな!」
「アニキ、あそこに見えるのがレイリア城ですよね?デカくないっスか!?」
「尾張の首都にあったミケネコ城と同等クラスだぞ!この地で聖帝と戦う為に、最前線に巨大な城を建てたんだ」


 おかげで2万の兵を滞在させることが出来たんだよな~。

 難攻不落としか言い様が無い巨大な城の存在は、味方の士気をこれ以上無いほどに高めて敵の戦意を低下させるのだ。

 ただ俺が手掛けた城って籠城戦になったことが一度も無いんだけどね。まあ城まで攻め込まれるってのはよっぽどの状況だから、そんなモノはやらん方がいいし。


「んじゃレイリア城まで歩いて行くぞ~」


 地面に置いてあった『コーヒーノキ』を抱えた。

 葉が生い茂っていて完全に視界ゼロの俺を見た全員からツッコミが入る。


「そろそろ抱えて歩くのも限界じゃないか?」
「もうその葉っぱ置いてけよ!」
「こいつ絶対アホだろ!」
「見ている方が心配になるよね~」
「通行人全員に見られるから、一緒にいると恥ずかしいのじゃ」
「でもそろそろ軍の本隊と合流するから、もう少しの辛抱じゃない?」


 そう!もう少しの辛抱なんだよ!ミスフィートさんと合流さえすれば!

 あれ?そういや最前線で植物なんか育てられるのか?
 尾張に置いてきた方が良かったような・・・。

 いや、尾張じゃ俺の目が届かねえ。決めた!レイリア城に置いていこう!
 誰か任せられる人がいればいいけど・・・。
 
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