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517 ゴーレムツアーという苦行

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 ガシン! ガシン! ガシン! ガシン! ガシン! ガシン!


 軍用ゴーレムに乗ってみたかったという思惑もあり、今回俺達はバスではなく、軍用ゴーレムで甲斐大名の元まで行くことになった。

 そして『ベルピタン』という、指定第2類医薬品みたいな名前の街から出て、次の街へと向かっているわけだが・・・。


「最初は軍用ゴーレムに慣れてなかったから面白かったんだけどな~。たかが数時間程度で辛いと思うようになってきた・・・」
「私は楽しいぞ!」
「えええええ?マジかよ!!1週間以上この状態が続くんだぞ?」
「一人で操縦していたのならば辛かったかもしれんな~」
「あ~、それはあるかもだ。俺達は話し相手がいるだけマシなのか・・・。ボタンを切り替えれば外部と会話が出来るらしいけど、操縦してるとあまりそんな気分にならんから皆大人しく走ってるな~」

 複座型じゃ好きなことが出来ないとか思ったけど、目的地に向かって走ってる時は結局好きなことなんて出来ないのだから、結果的に複座型で正解だったらしい。


「同乗者がいるおかげで退屈しないというのには納得だ。しかーーーし!!」


 クルっと振り向いて、後部座席のセレスティーナをビシッと指差した。


「同乗者が素っ裸じゃ、退屈しないとかそういうレベルじゃねえんだよ!せめて服くらい着ろ!!」

 指を差されたセレスティーナは、恥ずかしがるどころか逆に胸を張った。

「だが断る!」

 そのセリフが返って来ると思いましたとも!

「それに後部座席って少し高い位置にあるだろ?この位置からだと色々と丸見えなんだって!」
「小烏丸、前!前!」

 振り返ってモニター画面を見ると、前を走るハクロウ機に激突しかけていて、慌ててアクセルを緩めた。

「あぶねーーーーー!興奮してアクセルを強く踏み込んでしまっていたようだ」
「なにッ!私の裸に興奮したのか!?」
「なぜか同乗者の女が服を着ようとしない意味不明さにだよ!!」

 これが男だったら確実にゴーレムから蹴り落としている所だ。

 しかし狭い空間に裸の金髪美女がいるってのも、逆の意味でヤバ過ぎる。
 マジで危ないから後ろはあまり見ないでおこう・・・。


 そして走り続けているうちに夜になり、初日はゴーレムの中での寝泊りに興味があったので、パメラハウスじゃなくゴーレムの中で毛布にくるまって眠りについた。





 ************************************************************





 目覚めると、身体がバキバキってほどではなかったけど、疲れは半分しか取れていなかった。硬めの椅子に寝たんだから当然か・・・。

 ゴーレムの外に出て、マジックバッグから簡易洗面台を出して、顔を洗って歯を磨く。次々に仲間達も起きて来たので、終わった人からどんどん交代していく。


「洗面台!?なぜ野外にこんなモノがある??」


 ハクロウが目をかっ開いて驚いている。


「こがにゃんは普段から洗面台を持ち歩いてるにゃ」
「意味がわからんぞ!!この水は一体どこから出ているのだ??」
「水は蛇口を捻ると出るもんにゃ」
「何を言っているのかさっぱり意味が分からん!!」

 これはレトロタイプって趣旨で作ったので、ボタンじゃなく蛇口を捻ることで水が出てくるのだ。厳密には蛇口の栓を捻るのだが、細かいことはどーでもいい。

 しかしよく考えたら、知らん人に見せるもんじゃなかったな・・・。

 俺の周りじゃ水生成機なんて珍しくもないんだけど、常識的に考えると異常としか言い様がない魔道具なのだった。

 ちなみに洗面台に流れ込んだ水は、太いホースで2メートル向こうに流れて行く仕組みになっているぞ。

「まあ気にすんな!これはそういうモノなのだ。ニャルル、ハクロウに使い方を教えてやってくれ」
「わかったにゃ」

 使い方と言っても蛇口を捻ったら水が出るってだけなんだけど、アホの子に説明させた方がいい場合もあるのだ。

 ニャルルなら不思議現象を当たり前のように言うので、理解不能のまま諦めるしかなくなるわけですよ。


 それから間もなく出発し、朝食・昼食はゴーレムの中でパンと干し肉のみという辛い体験をしつつ、俺達は夜までゴーレムで走り続けた。





 ************************************************************





「何だこりゃあああああああああああああああああああああああ!!」


 パメラハウスを見たハクロウの驚愕の声が轟いた。


「言ってなかったけど、パメラは凄腕の土魔法使いなんだ。基本的に俺達は野宿などしない。旅の間でも普通に家で寝泊まりだ」
「ほんの少し目を離した隙に、この様な立派な家を建てたというのか!?」
「その通り。イチイチ驚いてたら脳の血管が切れるかもしれんから、あまり気にせんほうがいいぞ?」
「しかしこれは・・・、いくら何でも異常だ!!」
「落ち着けハクロウ。いずれ慣れる」
「こがにゃん、もう干し肉は飽きたにゃ!海鮮丼が食いたいにゃ!」
「いいけど冷凍だぞ。文句言うなよ?」
「わかってるにゃ!」
「??」


 家の中に入ると、すでに内装まで完璧に整えてあったのを見てハクロウが大騒ぎ。
 そして魔道具で光り輝くリビングにて海鮮丼を御馳走した。


「こ、これは刺身ではないか!!なぜ内陸で刺身が出てくる!?」

「刺身じゃにゃいにゃ。海鮮丼にゃ!」


 面白いけど、仲間以外の同行者が一緒だとめんどくせーな!!
 
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