上 下
514 / 803

514 ハクロウに切り札を見せる

しおりを挟む
 チョビヒゲの男に案内された場所は、ベルピタンの西端にあるデカい城だった。

 兵士に門を開けてもらい、チョビヒゲゴーレムの後ろについて行く。


「うぇっ!?ハクロウ様!!城内にいるとばかり思っていましたが、ゴーレムの整備中でしたか!」


 その声を聞き、ゴーレムのコックピットに上半身を入れていた、40代くらいと思われる銀髪の男が振り向いた。


「ん?ジャガピか。後ろの者達が取引を持ち掛けてきたという?」

「はい!武器などは非所持でしたので、問題無いと判断しお連れしました!」

 このチョビヒゲ、『ジャガピ』って名前なのか!
 まあ武器は持ってないようで、実はすんごいのを持ってるんですけどね。

 『ハクロウ』という名の男がこちらに近寄って来た。

 そしてジャガピの頭をぶん殴った。

 ボコッ!

「いだッ!!ファッ?一体なぜ」

「迂闊過ぎる!!武器もゴーレムも無くとも、他国には己の身一つで数百の兵を屠ることが出来る猛者が何人もおるのだ!この仮面の男、そしてその後ろにいる青い髪の男がまさにそれだ!!」

 へ~~~~~~!
 この一瞬で要注意人物を見抜いたのか!流石は武田二十四将だ!!

「だが取引きをするためにやって来たのだったな?まずは素性を言ってもらおう。話はそれからだ」

 ジャガピも涙目になりながらこっちを見た。


「尾張ミスフィート軍軍師、小烏丸だ。またの名を『赤い流星』」


 その名を出した途端、ハクロウの目が大きく開いた。
 そしてジャガピは、顎が外れるほどあんぐりと口を開いた。


「尾張ミスフィート軍・・・。聖帝軍を撃破したというのは真実まことか?」

「本当だ。だが俺が信濃に来た理由は国同士のいざこざとは全くの無関係。同盟を結びたいわけでも敵対したいわけでもない。ただの通りすがりだ」

「通りすがりだと!?」

「ちょっと北国まで行っててな。越後を通って尾張に帰る途中なんだ。信濃ってその中間地点にあるだろ?」

「北国に!?いや、まあ越後から尾張に向かっているのならば、信濃を経由するのもわかるが・・・。ではなぜ真っ直ぐ帰らず、我らに取引きを持ち掛けた?」

「それな~、話すと長くなるんだよ。線路を敷きたいだけなんだが、まず『線路』の説明をしなきゃならんだろ?」

「センロ?初めて聞く単語だな。・・・もう一度確認するぞ?甲斐と敵対する気は一切無いのだな?」

「ない。むしろ友好的な関係でいたいと思っている」

「ならば城内で座って話をしよう。ついて来い」


 そしてハクロウと一緒に会議室らしき部屋に移動し、線路の素晴らしさと利点について一生懸命熱弁した。



 ・・・・・



「なるほど。確かに迅速な移動・輸送が出来るというのは素晴らしいな。しかし我が国にとって移動手段は小さな問題だ。それはすでに理解していよう?」
「ゴーレムの国だからな。線路を使った方が速いのは間違いないが、無くても全然問題無いというのもわかる」
「それでもその『センロ』というモノを、どうしても我が国に敷きたいのか?」
「何がなんでも敷きたい。理由は一つ!ここに線路を敷けなければ、当初の計画が破綻するからだ」
「その計画は話せるか?」

 ・・・言っても問題無いよな?

「信濃に線路を敷くことが出来れば、陸奥から京の都まで繋がるんだよ!一ヶ月かからずに世界の最北端まで行くことが可能になるんだぞ!?あンただって京の都を見てみたいとは思わんか?」
「京の都か!そう言われてみると興味無くはないな!」
「それならば!」
「・・・・・・・・・・・・」

 ハクロウが腕を組んで静かに目を閉じた。

「御屋形様次第だな・・・。ん?待てよ。そういや取引きと言っておったな?それは『センロ』を敷く為の取引きか?」
「そうだ。そして俺は取引きで小さな駆け引きなどしない。必ず首を縦に振らせる自信がある」
「ほう!言ったな?ならばまずは俺を納得させてみろ!!」


 ニヤリと不敵な笑みを浮かべた後、テーブルの上に魔石を並べていく。


「こ、これは、魔石(大)ではないか!」


 その声を無視してどんどん魔石を並べていく。
 そして10個を超えた時、ハクロウからストップがかかった。


「ちょ、ちょっと待て!いくつ持っているのだ!?これって魔石(大)だよな?」
「好きなのを手に取って、じっくり見て構わないぞ」

 ハクロウが目をまん丸くさせて魔石を触っている。

「間違いない・・・本物だ。こんな貴重なモノを一体どこで・・・」
「コイツがあれば、すげえゴーレムが作れるんだろ?」
「その通りだ!!甲斐との交渉で一番喜ばれるのはまさにこれだ!しかし魔石(大)など、ダンジョンの相当深い場所まで潜らなければ手に入れることなど出来まい。いや、宝箱からも出る可能性はあるのか?」

 やはりこの国の人間らしく、魔石の話になると誰もが饒舌になるんだな。
 だが俺のターンはまだ終わっちゃいねえ!


「ちなみにそれはオマケだ」


 ハクロウが顔を上げてこっちを見た。


「・・・は?」


 マジックバッグから三つの指輪を取り出し、ハクロウの前に並べた。
 取引き用として作った物なので、美しい装飾を施してある。


「指輪?」

「鑑定してみ」


 指輪を鑑定するハクロウの指先が震えだした。


「何という代物なのだ!!これだ!これがあれば三河に一泡吹かせられるぞ!!」


 賽は投げられましたよ?清光さん。
 マジでどうなっても知りませんからね!
 
しおりを挟む
感想 419

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

処理中です...