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467 小烏丸vsゼーレネイマス
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バスから降り、広くて足場の良い場所へ移動しているのだが、皆はなぜかバスから降りてゾロゾロついて来た。
「近くで見るつもりなのか?」
「当たり前だろ!こがっちの本気なんて滅多に見れねえんだ!バスの中からワーワー観戦なんて勿体ねえことすっかよ!!」
「黒い大剣で闘うにゃか?」
「ゼネトス軍との戦で使ってたカタナじゃない?」
「黒龍の大剣じゃゼーレネイマスにフルボッコされるだろな~。当然ながら今日使うのは愛用の刀だ。アイツが強いのは確実だが、刀ならば十中八九俺が勝つ」
俺の発言を聞いたゼーレネイマスがこちらを見た。
「随分と自信家だな?吾輩を侮っておるのか?」
「侮ってなどいない。強さが同等なら勝敗はどこで決まると思う?」
「武器のことを言っておるのか?吾輩の大剣は魔剣だぞ?」
「その魔剣の性能は元から用意されていたモノだろ?俺の武器は自分でカスタマイズしたモノだ。付与魔法使いが自分の為に本気で作り上げた武器だぞ?」
「成程。アダマンタイトにダークマターを混合した魔鎧に傷をつけられるのか、これは見物だな」
「まがい?ああ鎧のことか・・・」(魔鎧《まがい》って何だよ!?)
なんか強そうな鎧がキターーーーー!流石は魔王の鎧だなオイ!!って、それは俺の天国で貫けるんだろな!?刀が折れたら泣くぞ!!
いや、弱気になるな。俺を信じろ!俺を信じるニャルルを信じろ!
・・・いや、ニャルルを信じたら刀が折れそうだ。やっぱりチャミィにしよう。
「俺と闘うなら予備の鎧に着替えることだ。自慢の鎧が壊れてしまうぞ?」
「構わぬ。寧ろこの鎧を破壊出来る武器が在るのならば、見てみたい程だ。例え破壊されようとも悔いは無い」
そう来ましたか・・・。ならば砕いて見せようじゃないの。頼むぞ天国!!
広くて足場の良い場所を見つけたので、5メートル程離れてゼーレネイマスと向かい合った。
「首に剣を寸止めで勝ちにはなるのか?」
「即死する攻撃は無しだと言ったろう?相手の首を落とせば自分の負けなのだから、それは只の脅しであり、決着になどならぬ」
「じゃあ身体の部位欠損、もしくは手足の骨折で決着といった所か?」
「それで異論は無い」
「たとえ殺さずの決闘でも、そこまでやる奴なんて普通いないだろ!こんなヤバイ勝負を受ける人間なんて俺くらいなもんだからな?他の奴と闘う時は、もっと緩めの試合っぽい条件にしろよ?」
「仲間の事を言っておるのか?安心しろ、貴様以外に興味など無い」
俺の仲間だけじゃなくて、他の人間も含めて今度からそういう条件にしろって意味だったんだが、面倒臭いからもう問答はいいや。
「じゃあ始めっか。猫ちゃん、開始の合図をよろしく!」
「任せるでござる!」
刀を鞘から抜いた。
ゼーレネイマスはヘルムを投げ捨て、大剣を構えた。
なるほど・・・。即死攻撃が禁止ならば、ヘルムなんて重いだけだものな。
「始め!!」
いざ闘うとなって、ようやく本当に理解した。
漠然とした『強い』ではなく、ゼーレネイマスは本当に強い。
剣を合わせなくたって雰囲気でわかる。なるほど。これが魔王か・・・。
あっちから来る気はナシ。ならば俺の方から仕掛けてやろう。
戦闘での駆け引きは得意とする所だ。
ダダッ
一気に距離を詰め、長身の魔王の左脛を狙って刀を一振り。
魔王の大剣が刀の進路を塞ぐ。
刀の軌道を真上に逸らしながら右膝の側面に蹴りを放つ。
ガッ
魔王が咄嗟に膝の正面で蹴りを受ける。
右足に気をとられた瞬間を狙った刀の薙ぎ払いが魔王の側頭部を狙う。
ゼーレネイマスは顔色一つ変えず、攻撃を避けようともしない。
この決闘で即死攻撃は厳禁。故に俺の攻撃はフェイクと判断したのだろう。
「甘いな」
瞬時に刀を反転させ、側頭部に刀の峰をぶち当てた。
ガゴッ!
「なッ!?」
ズザザザザザッ!
衝撃で弾かれたゼーレネイマスが大地に片膝を落とした。
こめかみの辺りから顎にかけてツツーっと血を流している。
「ルールだから刃で攻撃はしないが、頭蓋骨が砕けたらさすがに俺の勝ちだよな?」
「クッ、片刃の剣か!!血は出たが吾輩の頭蓋骨は折れてなどいない。続行だ!」
残念ながら天国に破壊強化の付与はしていない。頭部の皮膚が割れたことによる流血だけど、確かに骨を砕いた感じではなかった。
それに奴は、当たる寸前に自ら飛んで衝撃を和らげやがった。
ギリギリで、頭部を狙った攻撃がフェイクじゃないことに気付いたのだろうな。
しかし今の攻撃で、頭への攻撃を無視することは出来なくなったわけだ。頭を守れば下半身の防御に隙が出来る。俺とのバトルに安全ゾーンなんかねえぞ?
「剣じゃなくて刀だ。これを見るのは初めてか?」
「細くて貧弱そうな武器だが、それで魔鎧を砕くというのか?確かに軽量故に剣速が尋常でない事だけは身を以って知ったが・・・」
「砕いてみせよう。さあ立て!まだ戦闘は始まったばかりだ」
「フン。次は此方が攻める番だ!もう貴様を見縊らぬ」
ダンッ!
その瞬間ゼーレネイマスの足元の地面が陥没し、強烈な一蹴りにより一瞬で距離を詰め、俺の目の前に魔剣が迫る。
「くっ!」
ガインッ!
何とか刀で魔剣の起動を逸らすことは出来た。
しかし俺の態勢が乱れたこの機会を魔王が見逃すはずもなく、大剣による連撃が襲い掛かって来る。
ギンッ ドゴッ ガッ ギギン!
速いッ!
この巨体で得物は大剣なのに、瞬き一つで剣の軌道を追えなくなる程だ!
魔法が無い分聖帝よりはマシだが、間違いなくジャグルズ以上の腕前。
このまま連撃が止むのを待つは悪手。反撃にて活路を見出すしかねえ!
―――奴の魔剣を弾き、懐に潜り込もうとした時だった。
ツルン
「うぇっ!?」
なぜ突然足が滑って・・・、なにィ!!地面が凍ってるだとおおお!?
ゼーレネイマスの口端が上がったのが見えた。
・・・拙い!
キンッ ゴシャッッ!!
「がはッッ!!」
ズシャーーーッ
刀で防ごうとはしたが、滑って宙に浮いてる状態じゃ話にならず、ゼーレネイマスの大剣の一撃を脇腹にくらって弾かれながら凍った地面を滑って行く。
ザクッ
「クッ!!」
刀を地面に刺して、ようやく何とか止まることが出来た。
くそがああああ!あの野郎、いつの間に地面を凍らせやがった!?
魔法を使わない脳筋タイプとばかり思っていた俺の落ち度だ。この闘いに魔法が禁止なんてルールは無い。俺も奴のことを侮っていたわけか・・・。
ギャラリー達が見ているのを思い出し、恥ずかしいので立ち上がった。
「地面を凍らせていたとはな・・・。全く気付かなかった」
「まさかこれで降参するなんて事は無いだろうな?」
「するわけねえだろ!ちょっと肋骨が2~3本折れたような気はするけど、全然余裕だし!!」
斬られないよう咄嗟に大剣と脇腹の間に刀を挟んで耐えはしたけど、正直、刀がめり込んだ脇腹が死ぬほど痛ぇ。
でもツルっと滑って負けましたじゃ格好悪すぎるだろ!!ギャラリーがいっぱいいる以上、俺に負けは許されないのだ。
しかしこの辺一帯の地面が凍ってツルンツルンやん。
これを何とかせんと闘いにならんぞ?
「ロードヒーティング!」
地面に右手をついて、広範囲型の高温魔法を放った。
こんなことするのは初めてだけど、どうやら謎魔法は成功したみたいで、どんどん地面の氷が溶けていく。
・・・よし!氷河期は去った。
「雪国に生きる人達の生活の知恵をなめんじゃねえぞ!!」
俺は愛知県生まれですけどね!!
「近くで見るつもりなのか?」
「当たり前だろ!こがっちの本気なんて滅多に見れねえんだ!バスの中からワーワー観戦なんて勿体ねえことすっかよ!!」
「黒い大剣で闘うにゃか?」
「ゼネトス軍との戦で使ってたカタナじゃない?」
「黒龍の大剣じゃゼーレネイマスにフルボッコされるだろな~。当然ながら今日使うのは愛用の刀だ。アイツが強いのは確実だが、刀ならば十中八九俺が勝つ」
俺の発言を聞いたゼーレネイマスがこちらを見た。
「随分と自信家だな?吾輩を侮っておるのか?」
「侮ってなどいない。強さが同等なら勝敗はどこで決まると思う?」
「武器のことを言っておるのか?吾輩の大剣は魔剣だぞ?」
「その魔剣の性能は元から用意されていたモノだろ?俺の武器は自分でカスタマイズしたモノだ。付与魔法使いが自分の為に本気で作り上げた武器だぞ?」
「成程。アダマンタイトにダークマターを混合した魔鎧に傷をつけられるのか、これは見物だな」
「まがい?ああ鎧のことか・・・」(魔鎧《まがい》って何だよ!?)
なんか強そうな鎧がキターーーーー!流石は魔王の鎧だなオイ!!って、それは俺の天国で貫けるんだろな!?刀が折れたら泣くぞ!!
いや、弱気になるな。俺を信じろ!俺を信じるニャルルを信じろ!
・・・いや、ニャルルを信じたら刀が折れそうだ。やっぱりチャミィにしよう。
「俺と闘うなら予備の鎧に着替えることだ。自慢の鎧が壊れてしまうぞ?」
「構わぬ。寧ろこの鎧を破壊出来る武器が在るのならば、見てみたい程だ。例え破壊されようとも悔いは無い」
そう来ましたか・・・。ならば砕いて見せようじゃないの。頼むぞ天国!!
広くて足場の良い場所を見つけたので、5メートル程離れてゼーレネイマスと向かい合った。
「首に剣を寸止めで勝ちにはなるのか?」
「即死する攻撃は無しだと言ったろう?相手の首を落とせば自分の負けなのだから、それは只の脅しであり、決着になどならぬ」
「じゃあ身体の部位欠損、もしくは手足の骨折で決着といった所か?」
「それで異論は無い」
「たとえ殺さずの決闘でも、そこまでやる奴なんて普通いないだろ!こんなヤバイ勝負を受ける人間なんて俺くらいなもんだからな?他の奴と闘う時は、もっと緩めの試合っぽい条件にしろよ?」
「仲間の事を言っておるのか?安心しろ、貴様以外に興味など無い」
俺の仲間だけじゃなくて、他の人間も含めて今度からそういう条件にしろって意味だったんだが、面倒臭いからもう問答はいいや。
「じゃあ始めっか。猫ちゃん、開始の合図をよろしく!」
「任せるでござる!」
刀を鞘から抜いた。
ゼーレネイマスはヘルムを投げ捨て、大剣を構えた。
なるほど・・・。即死攻撃が禁止ならば、ヘルムなんて重いだけだものな。
「始め!!」
いざ闘うとなって、ようやく本当に理解した。
漠然とした『強い』ではなく、ゼーレネイマスは本当に強い。
剣を合わせなくたって雰囲気でわかる。なるほど。これが魔王か・・・。
あっちから来る気はナシ。ならば俺の方から仕掛けてやろう。
戦闘での駆け引きは得意とする所だ。
ダダッ
一気に距離を詰め、長身の魔王の左脛を狙って刀を一振り。
魔王の大剣が刀の進路を塞ぐ。
刀の軌道を真上に逸らしながら右膝の側面に蹴りを放つ。
ガッ
魔王が咄嗟に膝の正面で蹴りを受ける。
右足に気をとられた瞬間を狙った刀の薙ぎ払いが魔王の側頭部を狙う。
ゼーレネイマスは顔色一つ変えず、攻撃を避けようともしない。
この決闘で即死攻撃は厳禁。故に俺の攻撃はフェイクと判断したのだろう。
「甘いな」
瞬時に刀を反転させ、側頭部に刀の峰をぶち当てた。
ガゴッ!
「なッ!?」
ズザザザザザッ!
衝撃で弾かれたゼーレネイマスが大地に片膝を落とした。
こめかみの辺りから顎にかけてツツーっと血を流している。
「ルールだから刃で攻撃はしないが、頭蓋骨が砕けたらさすがに俺の勝ちだよな?」
「クッ、片刃の剣か!!血は出たが吾輩の頭蓋骨は折れてなどいない。続行だ!」
残念ながら天国に破壊強化の付与はしていない。頭部の皮膚が割れたことによる流血だけど、確かに骨を砕いた感じではなかった。
それに奴は、当たる寸前に自ら飛んで衝撃を和らげやがった。
ギリギリで、頭部を狙った攻撃がフェイクじゃないことに気付いたのだろうな。
しかし今の攻撃で、頭への攻撃を無視することは出来なくなったわけだ。頭を守れば下半身の防御に隙が出来る。俺とのバトルに安全ゾーンなんかねえぞ?
「剣じゃなくて刀だ。これを見るのは初めてか?」
「細くて貧弱そうな武器だが、それで魔鎧を砕くというのか?確かに軽量故に剣速が尋常でない事だけは身を以って知ったが・・・」
「砕いてみせよう。さあ立て!まだ戦闘は始まったばかりだ」
「フン。次は此方が攻める番だ!もう貴様を見縊らぬ」
ダンッ!
その瞬間ゼーレネイマスの足元の地面が陥没し、強烈な一蹴りにより一瞬で距離を詰め、俺の目の前に魔剣が迫る。
「くっ!」
ガインッ!
何とか刀で魔剣の起動を逸らすことは出来た。
しかし俺の態勢が乱れたこの機会を魔王が見逃すはずもなく、大剣による連撃が襲い掛かって来る。
ギンッ ドゴッ ガッ ギギン!
速いッ!
この巨体で得物は大剣なのに、瞬き一つで剣の軌道を追えなくなる程だ!
魔法が無い分聖帝よりはマシだが、間違いなくジャグルズ以上の腕前。
このまま連撃が止むのを待つは悪手。反撃にて活路を見出すしかねえ!
―――奴の魔剣を弾き、懐に潜り込もうとした時だった。
ツルン
「うぇっ!?」
なぜ突然足が滑って・・・、なにィ!!地面が凍ってるだとおおお!?
ゼーレネイマスの口端が上がったのが見えた。
・・・拙い!
キンッ ゴシャッッ!!
「がはッッ!!」
ズシャーーーッ
刀で防ごうとはしたが、滑って宙に浮いてる状態じゃ話にならず、ゼーレネイマスの大剣の一撃を脇腹にくらって弾かれながら凍った地面を滑って行く。
ザクッ
「クッ!!」
刀を地面に刺して、ようやく何とか止まることが出来た。
くそがああああ!あの野郎、いつの間に地面を凍らせやがった!?
魔法を使わない脳筋タイプとばかり思っていた俺の落ち度だ。この闘いに魔法が禁止なんてルールは無い。俺も奴のことを侮っていたわけか・・・。
ギャラリー達が見ているのを思い出し、恥ずかしいので立ち上がった。
「地面を凍らせていたとはな・・・。全く気付かなかった」
「まさかこれで降参するなんて事は無いだろうな?」
「するわけねえだろ!ちょっと肋骨が2~3本折れたような気はするけど、全然余裕だし!!」
斬られないよう咄嗟に大剣と脇腹の間に刀を挟んで耐えはしたけど、正直、刀がめり込んだ脇腹が死ぬほど痛ぇ。
でもツルっと滑って負けましたじゃ格好悪すぎるだろ!!ギャラリーがいっぱいいる以上、俺に負けは許されないのだ。
しかしこの辺一帯の地面が凍ってツルンツルンやん。
これを何とかせんと闘いにならんぞ?
「ロードヒーティング!」
地面に右手をついて、広範囲型の高温魔法を放った。
こんなことするのは初めてだけど、どうやら謎魔法は成功したみたいで、どんどん地面の氷が溶けていく。
・・・よし!氷河期は去った。
「雪国に生きる人達の生活の知恵をなめんじゃねえぞ!!」
俺は愛知県生まれですけどね!!
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