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458 乗り越えなければならない試練
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バスが走り出してほんの10分ほど。
「こがっち!唐揚げが走ってるぞ!!」
・・・はあ?唐揚げが走ってるだと!?
ゴマちゃんの座席は左側の一番前だ。
そこから見えるとなると左前方・・・、ああ!コカトリスか!
「唐揚げって言うから何のこっちゃと思ったら、コカトリスじゃん!」
「名前が出て来なかったんだよ!!」
北海道で函館に向かってる時に、何度かコカトリスを狩って唐揚げにして皆で食ってたんで、ゴマちゃんの中でアレは唐揚げって認識されていた模様。
「まあコカトリスを見つけちまったからには、狩らないわけにはいかないな。おーいケンちゃん!コカトリスでレベル上げすっぞ!」
「うぇええええええええ!?俺生き物なんて殺したこと無いんスけど!!」
あれ?ゴブリンすらまだ倒してなかったのか・・・。
「魔物程度すら殺せないようじゃ、いつまで経ってもミスフィート軍最弱だぞ?」
「うっ!そうっスよね・・・、クソーーー!やるしかねえ!!」
「頑張るでござるよ~」
ある程度コカトリスに近づいてからバスを停車させた。
そして急いで下車する。
「待たんかい!唐揚げ!!」
大声でコカトリスに呼び掛けると、俺の声に気付いたコカトリスが進路を変えて突っ込んで来た。
まだ距離は空いているけど、所詮は鳥頭。すぐ怒って突進して来るのだ。
「遠いからわからんと思うけど、実はアイツってデケエしそれなりに強い。俺が正面から抑えとくから、ケンちゃんはコカトリスの後ろから近付いて、金属バットでヤツの頭をぶん殴れ。死ぬまで何度もだ」
それを聞いたケンちゃんがすごく嫌そうな顔をした。
「後ろから殴るとか卑怯じゃないっスか!!」
「魔物をなめんな!越後郊外にいるゴブリンなんかと違って、ヤツはずっと魔境で生きているんだ。今のケンちゃんがコカトリスと正面から戦ったら一瞬で殺されるぞ」
「い、一瞬で!?」
「レベル1がどうこう出来るような魔物ではない。死にたくなかったら素直に言うことを聞け」
「りょ、了解っス!!」
若いなあ。
しかしいきなり魔境でのスパルタ教育だから、自分の実力と相手のレベルが釣り合ってないんだよね。
アリアのダンジョンと違って裏技が使えないから、最初はこういう手段で行くしかないのだ。
「ひっ!デ、デケエ!!」
おっと戦闘開始だ。
『コケーーーーーーッ!!』
ガシッ!
コカトリスの突進を両手で受け止め、首根っこを掴んだ。
「よーしケンちゃん!どこからでもいいからコカトリスの頭を思いっきり殴れ!俺の手に当てんなよ?」
「ハ、ハイっ!!」
ドゴッ!
ケンちゃんの金属バットがコカトリスに命中したが、俺の手を気にしてかフルスイングじゃなかった。これじゃあ何度も殴らなきゃダメだな。
「もっと力強くバットを振れ!それでいて俺の手に当てないよう頑張ってみろ!」
「くッ!やってみます!!」
ドガッ!
ガゴッ!
下手くそな屠殺を目の前で見せられてかなり気分が悪くなったが、やってるケンちゃんはもっと最悪な気分だろう。
でもこれを乗り越えなきゃただのお荷物だ。最後までやり遂げてみせろ!
レベル1の攻撃とはいえ、強化された金属バットの威力は高く、6発目のアタックでようやくケンちゃんはコカトリスを倒すことが出来た。
「よし!もう十分だ。攻撃を止めていいぞ」
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
極度のプレッシャーと魔物と初めての戦闘で、ケンちゃんの顔面は蒼白だ。
「うぐっ、オ、オエッ!オエエエエエエエエエ」
ついには吐き出してしまったので、汚物を浴びないよう獲物を避難させた。
・・・・・
ケンちゃんは涙を流していた。
魔物とはいえ、命を奪う行為ってのはホント最悪な気分なんだ。
俺も初めてゴブリンを倒した時はこんな感じだったな・・・。
「少しは落ち着いたか?気分は最低だろうけど、これは誰もが乗り越えなければならない試練なんだ。それは越後の兵士になっていても同じ。早いか遅いかの違いでしかない」
ケンちゃんを慰める一言なあ・・・。
「何で魔物が襲い掛かって来るかわかるか?ヤツはヤツで俺らを食おうとしてたわけだ。勝った者が相手を喰らう!これは自然の摂理だ。何も悔やむことは無い」
ケアはこんなもんでいいか。あとは時間が解決してくれるだろう。
「ところでレベルが上がったろ?自分の身体能力の向上に驚くぞ~!」
「ぐしゅっ、あっ、そうだ!めちゃくちゃ上がったっス!!」
ケンちゃんが自分のステータス画面を見ている。
「うおおおお、スッゲーーーーー!!一体の魔物を倒しただけでこんなに!?」
「ちょっと走ったり跳ねたりしてみ」
それを聞いたケンちゃんが全力で走って行き、そして飛び跳ねた。
「なんだこりゃああああああああ!!今までと全然ちげえーーー!!」
「それが強くなるということだ!これからは積極的にどんどん魔物を狩って、俺達と肩を並べるほど成長してもらうからな!」
「俺めっちゃ頑張るっス!!アニキの前では泣いちまったけど、でも女性達に情けない姿を見られなくて良かったあ・・・」
・・・いやケンちゃん、間違いなくバスの中から全員に見られてたと思うぞ?
※不評だろうとは思いますが、あえてこの話を書きました。
現実の厳しさとケンちゃんの優しさを伝えたかったのです。すみません。
「こがっち!唐揚げが走ってるぞ!!」
・・・はあ?唐揚げが走ってるだと!?
ゴマちゃんの座席は左側の一番前だ。
そこから見えるとなると左前方・・・、ああ!コカトリスか!
「唐揚げって言うから何のこっちゃと思ったら、コカトリスじゃん!」
「名前が出て来なかったんだよ!!」
北海道で函館に向かってる時に、何度かコカトリスを狩って唐揚げにして皆で食ってたんで、ゴマちゃんの中でアレは唐揚げって認識されていた模様。
「まあコカトリスを見つけちまったからには、狩らないわけにはいかないな。おーいケンちゃん!コカトリスでレベル上げすっぞ!」
「うぇええええええええ!?俺生き物なんて殺したこと無いんスけど!!」
あれ?ゴブリンすらまだ倒してなかったのか・・・。
「魔物程度すら殺せないようじゃ、いつまで経ってもミスフィート軍最弱だぞ?」
「うっ!そうっスよね・・・、クソーーー!やるしかねえ!!」
「頑張るでござるよ~」
ある程度コカトリスに近づいてからバスを停車させた。
そして急いで下車する。
「待たんかい!唐揚げ!!」
大声でコカトリスに呼び掛けると、俺の声に気付いたコカトリスが進路を変えて突っ込んで来た。
まだ距離は空いているけど、所詮は鳥頭。すぐ怒って突進して来るのだ。
「遠いからわからんと思うけど、実はアイツってデケエしそれなりに強い。俺が正面から抑えとくから、ケンちゃんはコカトリスの後ろから近付いて、金属バットでヤツの頭をぶん殴れ。死ぬまで何度もだ」
それを聞いたケンちゃんがすごく嫌そうな顔をした。
「後ろから殴るとか卑怯じゃないっスか!!」
「魔物をなめんな!越後郊外にいるゴブリンなんかと違って、ヤツはずっと魔境で生きているんだ。今のケンちゃんがコカトリスと正面から戦ったら一瞬で殺されるぞ」
「い、一瞬で!?」
「レベル1がどうこう出来るような魔物ではない。死にたくなかったら素直に言うことを聞け」
「りょ、了解っス!!」
若いなあ。
しかしいきなり魔境でのスパルタ教育だから、自分の実力と相手のレベルが釣り合ってないんだよね。
アリアのダンジョンと違って裏技が使えないから、最初はこういう手段で行くしかないのだ。
「ひっ!デ、デケエ!!」
おっと戦闘開始だ。
『コケーーーーーーッ!!』
ガシッ!
コカトリスの突進を両手で受け止め、首根っこを掴んだ。
「よーしケンちゃん!どこからでもいいからコカトリスの頭を思いっきり殴れ!俺の手に当てんなよ?」
「ハ、ハイっ!!」
ドゴッ!
ケンちゃんの金属バットがコカトリスに命中したが、俺の手を気にしてかフルスイングじゃなかった。これじゃあ何度も殴らなきゃダメだな。
「もっと力強くバットを振れ!それでいて俺の手に当てないよう頑張ってみろ!」
「くッ!やってみます!!」
ドガッ!
ガゴッ!
下手くそな屠殺を目の前で見せられてかなり気分が悪くなったが、やってるケンちゃんはもっと最悪な気分だろう。
でもこれを乗り越えなきゃただのお荷物だ。最後までやり遂げてみせろ!
レベル1の攻撃とはいえ、強化された金属バットの威力は高く、6発目のアタックでようやくケンちゃんはコカトリスを倒すことが出来た。
「よし!もう十分だ。攻撃を止めていいぞ」
「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」
極度のプレッシャーと魔物と初めての戦闘で、ケンちゃんの顔面は蒼白だ。
「うぐっ、オ、オエッ!オエエエエエエエエエ」
ついには吐き出してしまったので、汚物を浴びないよう獲物を避難させた。
・・・・・
ケンちゃんは涙を流していた。
魔物とはいえ、命を奪う行為ってのはホント最悪な気分なんだ。
俺も初めてゴブリンを倒した時はこんな感じだったな・・・。
「少しは落ち着いたか?気分は最低だろうけど、これは誰もが乗り越えなければならない試練なんだ。それは越後の兵士になっていても同じ。早いか遅いかの違いでしかない」
ケンちゃんを慰める一言なあ・・・。
「何で魔物が襲い掛かって来るかわかるか?ヤツはヤツで俺らを食おうとしてたわけだ。勝った者が相手を喰らう!これは自然の摂理だ。何も悔やむことは無い」
ケアはこんなもんでいいか。あとは時間が解決してくれるだろう。
「ところでレベルが上がったろ?自分の身体能力の向上に驚くぞ~!」
「ぐしゅっ、あっ、そうだ!めちゃくちゃ上がったっス!!」
ケンちゃんが自分のステータス画面を見ている。
「うおおおお、スッゲーーーーー!!一体の魔物を倒しただけでこんなに!?」
「ちょっと走ったり跳ねたりしてみ」
それを聞いたケンちゃんが全力で走って行き、そして飛び跳ねた。
「なんだこりゃああああああああ!!今までと全然ちげえーーー!!」
「それが強くなるということだ!これからは積極的にどんどん魔物を狩って、俺達と肩を並べるほど成長してもらうからな!」
「俺めっちゃ頑張るっス!!アニキの前では泣いちまったけど、でも女性達に情けない姿を見られなくて良かったあ・・・」
・・・いやケンちゃん、間違いなくバスの中から全員に見られてたと思うぞ?
※不評だろうとは思いますが、あえてこの話を書きました。
現実の厳しさとケンちゃんの優しさを伝えたかったのです。すみません。
応援ありがとうございます!
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