上 下
434 / 798

434 爆炎一夜10代目総長ケン

しおりを挟む
 瞬く間に俺達はツッパリの集団に取り囲まれた。
 結局女の子2人も、買い物に行く前に巻き込まれた形となってしまったか。


「・・・5人くらいって言ってなかったか?」
「おいおいおい!テメーら数も数えられねえのかよ!!」
「え?あ、いや、さっきより増えてるんだよ!」
「つーか幼女とかも混ざってるんだが?お前らまさか幼女に負けたんじゃねえだろうな?」
「幼女に負けっかよふざけんな!!えーと、ホラ、そこの三人だ!それと植物マスク!!」


 だから植物マスクって言うのやめろや!それに俺はまったく手を出してねえぞ~。


「とにかく場所変えっぞ。ねーちゃんら、俺らについて来いや!」
「逃げんじゃねえゾ?」

「えええええええええええ!?アタシ達無関係なんですけど!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!マイコ、何なのコレ!?」


 ツッパリ達が俺らに背を向けて、裏路地に入って行く。

 あ、戻って来た。


「ついて来いっつってんだろが!!」

「知るかよバーーーカ。なんであたいらがついて行く必要があんだよ?」

「こんな場所で暴れたら兵士を呼ばれるからに決まってんだろボケ!!」

「あ?さっきも街中で絡んで来たじゃねえか。なんで最初のは良くて今回は駄目なんだ?」

「はあ!?」

 それを聞いた茶髪の男が包帯男の方を見た。

「お前ら街ん中で喧嘩吹っ掛けたのか!?」
「違うッッ!俺らにガン飛ばしてる奴らがいたからよぅ、ちとシメてやろうと近寄っただけだ!先に手を出したのはコイツらの方だ!!」
「ぬ・・・、なら悪いのは女共の方なのか??」

「あ”?目の前に寄って来て『ぶち殺す』とか言われたら普通ぶん殴るだろ!」

「むむむ、確かに・・・、あっケンちゃん!!」


 茶髪の視線の方向を見ると、喧嘩慣れしてそうなパンチパーマの男がこっちに歩いて来ていた。

 アレが噂のケンちゃんか。うーむ、顔は強そうではあるが・・・。


「ウチのもんをボコったってのはお前ら?」

「へ~~~。ああ、包帯の奴らなら殴っといたぜ!殺すとか言われたからな」

 ケンちゃんがこっちのメンバーを見渡した。

「女子供じゃねえか。一応聞いとくが、お前らどこのチームのもんだ?」

「チーム?ああ、さっき聞いた六道椿リクドーとか爆炎一夜バクエンとか?よく分からんけどそういうのとは無関係だぜ。ただの通りすがりだ」


 ガンッ!

「げはッ!」

 ケンちゃんが包帯男をぶん殴った。


「堅気じゃねえか!!」


「はあああ?嘘だろ!?」
「俺、堅気のパンチ一発で気絶したんスけど・・・」
「こっちの女の膝蹴りも強烈だったぞ!?」

「あ~、確かに堅気つっても兵士に近い職業くせえな。こんなヤバそうな空気纏った連中に喧嘩売ってんじゃねえよバカタレが!!」


 ほ~~~!このケンって奴、チームの頭やってるだけのことはあるな。
 誰彼構わず喧嘩吹っ掛けてるわけじゃ無さそうだ。

 日本の暴走族が街でヤクザを見分ける感じに近いのかもしれんな、

 揉め事起こしてから実は相手がヤクザでしたじゃ洒落にならんから、そういった危ない気配を察する嗅覚が鋭くなったみたいな?

 俺らって、潜り抜けた修羅場の数がその辺の奴らとは違うからな。


「獣人は女でも気を付けろっつっただろ!しかも虎に銀狼に白猫とかよ・・・。手加減されてなかったらグシャにされてるとこだ」

 なにィ!?

「おいゴマちゃん!!」
「ん?」
「ゴマちゃんって虎獣人だったのか!!」
「はああああ!?今更何言ってんだ!・・・え?ずっと気付いてなかったのか!?」
「見たことない獣人だなーってずっと思ってた」
「いや、聞けよ!!なぜ疑問を長い間放置してんだよ!?」
「虎ならちゃんと虎縞模様付けといてくれなきゃわからんだろ!」
「えええええ!!あたいが悪いのか!?」

 獣人へのそういう質問って、結構ナイーブなとこあるから聞きにくいんだよ。

「狼獣人に『犬獣人かい?』って聞いたら怒られるって前に聞いたことあったからさ、自分からは質問しないようにしてたんだ」
「あ~、それはたしかにあるな。でも聞いたらちゃんと答えてくれるぜ?」
「怒らない?」
「そんなことでいちいち怒らねえだろ」
「本当かあ~?ゴマちゃんってフナムシ獣人なのですか?」
「誰がフナムシだ!!ぶっ殺すぞ!!」
「にゃははははははははははは!!」
「フナ・・・、くっ、ププッ!」
「やっぱり怒るじゃん!!」
「またアホな会話してるわね~。周りにもウケてるけどさ」


 見ればツッパリ達も大爆笑していた。
 なるほど・・・、フナムシネタはなかなか使えるな!

 ・・・ん?


 ―――ケンちゃんが俺の顔を見て顔を青くしていた。



「まあとにかく喧嘩はしないってことでいいんだな?」

「あ、ああ。爆炎一夜バクエンはもう、あンたらには二度と絡まないと約束する。だから手打ちにしてくれ」

「いいだろう。ああ、こっちの女の子二人にも絡むんじゃねえぞ?」

「もちろんだ」


 ってなわけで、とりあえず爆炎一夜バクエンとの揉め事は、ケンちゃんの登場により解決した。

 案外ツッパリともちゃんと話をすれば分かり合えるもんだな。





 ************************************************************



 ―――――ケンちゃん視点―――――



 去って行く一行を見ながら溜息を漏らす。


「ケンちゃんどうしたよ?顔が真っ青だぜ?」
「・・・・・・・・・」
「そういや途中から様子が変だったな」
「変な物でも食ったん?」


 ノーテンキな奴らだ。このバカタレ共は!


「さっきあの獣人らがヤベーっつったろ?」
「ん?ああ、言ってたな」
「そんなに危険な奴らなんスか?」

「恐らくアイツらは、何人もの人を殺している」

「「・・・・・・マジで!?」」

「でもな、獣人三人よりもヤベエのがいた。植物を抱えていた男だ・・・」

「はあ?あの植物マスクが??」
「たしかに派手な恰好はしてたが・・・。何故かマスク付けてるし」
「そんなに強そうな感じはしなかったけどな?」


「あの男は何人どころの話じゃねえ!間違いなく1000人以上殺してるぞ・・・」


「「・・・・・・はあ!?」」


 絶対だ!間違いねえよ!!
 人を見て震えが止まらなかったのなんて、生まれて初めての経験だ。

 いるんだな、この世にはあんな凄まじい人間が・・・。
しおりを挟む
感想 418

あなたにおすすめの小説

ド底辺から始める下克上! 〜神に嫌われ無能力となった男。街を追放された末、理を外れた【超越】魔法に覚醒し、一大領主へ成り上がる。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
この世界では、18の歳になると、創造神・ミーネより皆に魔力が授けられる。 捨て子だったハイネは教会に拾われたこともあり、どれだけ辛いことがあっても、ミーネを信奉し日々拝んできたが………   魔力付与式当日。 なぜかハイネにだけ、魔力が与えられることはなかった。日々の努力や信仰は全く報われなかったのだ。 ハイネは、大人たちの都合により、身体に『悪魔』を封印された忌み子でもあった。 そのため、 「能力を与えられなかったのは、呪われているからだ」 と決めつけられ、領主であるマルテ伯爵に街を追放されてしまう。 その夜、山で魔物に襲われ死にかけるハイネ。 そのとき、『悪魔』を封印していた首輪が切れ、身体に眠る力が目覚めた。 実は、封印されていたのは悪魔ではなく、別世界を司る女神だったのだ。 今は、ハイネと完全に同化していると言う。 ハイネはその女神の力を使い、この世には本来存在しない魔法・『超越』魔法で窮地を切り抜ける。 さらに、この『超越』魔法の規格外っぷりは恐ろしく…… 戦闘で並外れた魔法を発動できるのはもちろん、生産面でも、この世の常識を飛び越えたアイテムを量産できるのだ。 この力を使い、まずは小さな村を悪徳代官たちから救うハイネ。 本人は気づくよしもない。 それが、元底辺聖職者の一大両者は成り上がる第一歩だとは。 ◇  一方、そんなハイネを追放した街では……。 領主であるマルテ伯爵が、窮地に追い込まれていた。 彼は、ハイネを『呪われた底辺聖職者』と厄介者扱いしていたが、実はそのハイネの作る護符により街は魔物の侵略を免れていたのだ。 また、マルテ伯爵の娘は、ハイネに密かな思いを寄せており…… 父に愛想を尽かし、家を出奔し、ハイネを探す旅に出てしまう。 そうして、民や娘からの信頼を失い続けた伯爵は、人生崩壊の一途を辿るのであった。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます! 【※毎日18時更新中】 タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

処理中です...