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429 行き倒れⅡ

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 陸奥の国に隣接している国といえば、戦国時代の地図を思い浮かべた所、出羽・越後・下野・上野・常陸の五ヶ国だ。
 そこから俺達の目的地である尾張に向かうための最適ルートを考える。

 真っ先に排除できるのは出羽だ。
 ここは陸奥の左側に位置する国なんだけど、完全にスルーできる場所だからまったく行く必要が無い。

 陸奥の真下にある常陸の国も候補から外してもいいだろう。
 ここを通って進んで行くと東京方面へ向かうことになるのだが、距離が伸びるばかりか国の数が多いから、間違いなく苦労する。

 下野の国も常陸の隣で真下に位置するから、ここに行くくらいならばその西にある上野に進むべきだろう。ただし日本地図では、『陸奥とほんのちょっと繋がってるような気がする』って感じだったと思うから、地形の問題で直接行けない可能性がある。

 上野に入国するのに下野を経由するとなると、二ヶ国を跨ぐことになるのでこれも大変だ。そうなると、残るは越後の国だけとなる。

 戦国時代ではあの上杉謙信が統治していた国だから、もしかするとこの世界でも最強大名が君臨している可能性も否定できない。
 でも、だからこそ一度行ってみたいって気持ちもあるんだよね。

 あまりにも凶悪な国だったら、ビームライフルをぶっ放して引き返せばいい。大丈夫そうだったらそのまま進むってことでいいと思う。危険なのはどの国も一緒だしな。



 ―――目的地が決まったので、越後に向かってバスを走らせた。





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 キュルルルル! キュルルルル!


「あー、クソッ!また溝に嵌っちまった。悪い、みんな一旦降りてくれ!」

「「はーーーーーい!」」


 大型バスなんで、普通なら引っ張り出すのに苦労するのだろうけど、俺の場合はマジックバッグに収納して取り出すだけで解決するのだ。でも煩わしいのは変わらん!


 全員降りたので、バスをマジックバッグに収納する。


「・・・・・・ん?」


 バスが消えた先に、何か白っぽい物が見えた。


「あっ!!誰か倒れてるよ!?」
「なにッ!?」
「たぶん子供にゃ!!」
「大変!助けなきゃ!!」


 急いで駆け寄ると、そこには5歳くらいの痩せた子供が倒れていた。
 すぐに脈拍を計り、呼吸があるか確かめる。


「大丈夫だ。生きている!」
「でもどうしよう!?もう聖水が無いんだよね?」
「無い。ただ弱ってはいるが、空腹のあまり倒れたといった感じだから、何か食べさせることが出来れば元気になるかもしれん!」

 子供を抱き起こすと、薄っすらと瞼が開いた。

「ほら水だ。ゆっくり飲むんだ」

 水の入ったコップを傾けると、子供が少しずつ飲み始めた。

「パメラ、この子を頼む。俺はおかゆを作って来る」
「任せて!」


 近くの木陰に厨房を出し、ご飯に水を足しておかゆを作り始めた。
 それだけじゃ栄養的にどうかと思ったので、鳥肉も柔らかく煮込む。

 ただ俺達もそろそろ昼食の時間なので、ついでに全員分の食事も作ることにした。あの子も皆と一緒の方が食べやすいだろう。



 ・・・・・



 食事が出来たので皆を呼びよせると。パメラがあの子を優しく抱いて歩いて来た。チャミィも心配そうに見つめている。

 そういやあの子ってチャミィと年齢が近いな。
 例え一時の間だけでも仲良くなるといいんだけど・・・。

 こういうのは育児経験が豊富そうなパメラの方が得意だろうと、あの子におかゆを食べさせるのは一任した。いや、パメラは未婚だから、直接そんなことを言ったら怒られそうだけど!


「寝ちゃったわ。でもこの子どうするの?」
「近くの村で親御さんを探す。村の人達に聞いて回れば、こうなった原因もわかるだろうさ」
「少し前までゼネトス軍の統治下だった村だよね?村の住民すべてが苦しい生活してそう・・・」
「ゼネトスは絶対許さにゃいにゃ!!」
「いやもう死んでるだろ!」


 相変わらずこのメンバーでの会話は面白い。
 悲観するような内容でも空気が重くならないのはいいな。

 厨房をマジックバッグに収納し、全員歩きで近くの村まで移動する。



 ―――そして到着した村で、子供の聞き取り調査を開始した。





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 情報を集めた結果、この子の両親はすでに死んでいた。

 しばらくは村の住民達で世話をしていたらしいけど、ゼネトス軍がナルティア軍と戦う為に食料を根こそぎ持って行ったらしく、子供どころか自分達も食えない状況に陥ったようだ。

 そんな状況なので、子供がいなくなってたことにも気づいていなかったらしい。
 まあ村の住人達を責めるのはお門違いだろう。


「困ったな・・・。陸奥の民なのだからナルティア達に任せるのが良いのだろうけど、ここからじゃチワワ城に行くのですら何日もかかかってしまう」
「村も大変そうだしね・・・」
「ゼネトスは絶対許さにゃいにゃ!!」
「だからゼネトスは、もう死んだっつってんだろ!」

「ねえ小烏丸。この子も一緒に連れて行かない?一人増えると旅が大変になるかもしれないけど、この村に残して行ったらきっと死んじゃうわ」

 それは俺も考えていた。
 もし置いて行ったら、間違いなく心にしこりが残り続ける。
 それに、この年齢で天涯孤独の身の上ならば、幸を掴むのは至難の業だろう。

「お願い!私が世話をするからこの子を一緒に連れてって!!ミィと同じくらいの年齢だし、きっと良いお友達になれると思うの!」

「・・・・・・わかった。一緒に連れて行こう!チャミィ、この子と仲良くするんだぞ?」

 それを聞いたチャミィが、パッと笑顔になった。

「うん!!」


 パメラに言われなくとも、この子を見捨てるなんて選択は出来なかったと思う。
 しかしまさか陸奥を出る前に旅の仲間が増えるとは思わなかったな・・・。

 でも子供一人くらい増えた所で、今までとそう変わらんか!!
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