上 下
428 / 726

428 ナルティア達とのお別れ

しおりを挟む
 最後に思い出を作ろうってことで、開店前のカジノにナルティア軍の兵士達をいっぱい招集した。

 何号店も作った司令本部も充実していたので、1号店を披露した時よりかは衝撃を与えられなかったけども、これほど大きな遊び場となると、誰もが目を輝かせたのは言うまでもないだろう。

 その日は大いに盛り上がり、もう皆が無邪気にはしゃぎ回った。

 大浴場でサッパリしてからルーレットやビリヤードなどで盛り上がる。
 しかし3階に行って概要を説明をした途端、ギャンブラー達の目の色が変わったのが面白かったな。

 兵士達の話ではリュウが戦場で死にかけたらしいけど、どう見ても怪我一つ無くピンピンしていた。たぶん持って生まれた強運でピンチを切り抜けたのだろう。流石は伝説のギャンブラーである。

 4階に全員が泊まることは出来ないので一般兵達には城に帰ってもらったけど、豪華な部屋は素晴らしく快適で、お客様を満足させるには十分な出来だと再認識した。
 客として来たのに、経営者目線で考えてしまう自分に少し悲しくなったけど!

 その翌日は、城でやり残しが無いかの最終チェックに勤しんだ。

 陸奥が広大なのもあって、この土地でもドワーフ達に線路を張り巡らせるよう指示を出し、ルクセリア城からチワワ城、そして平泉まで線路を伸ばしている最中だ。

 さすがに機関車を作る時間までは無かったし、事故が起きても対処することが出来なくなるのもあって、移動・輸送手段はトロッコだ。
 これならば現地の人達だけで、製造や修理をすることが出来るだろう。

 尾張から陸奥まで、機関車で来られるようになれば最高なんだけどな!

 それには尾張と陸奥の間にある国々と仲良くなって線路を敷く許可を貰う必要があったりと、クリアしなきゃならない難題が数多く待ち構えてる。

 その為だけに領地を奪いに攻め込むって考えもアリっちゃアリだけど、それじゃあやってることが聖帝軍となんら変わらんから却下だろう。

 出来れば友好的な方向で夢が叶うといいなあ・・・。



 ―――そしてとうとう、陸奥を旅立つ日が来た。





 ************************************************************





「ぐすっ」
「うええええええええん!!」
「ひぐっ、ひぐっ・・・」


 お別れの日、所詮は他国の人間でしかない俺達のために、この街にいる全てのナルティア軍の兵士達が見送りに来てくれた。

 とても嬉しくはあるんだけど、ちょっと恥ずかしいのも事実だ。


「ナルティア、フレイア、スカーレット。俺達にはミスフィート軍の元へ戻らないといけないって目的があるけども、これが今生の別れとなるわけじゃないぞ?誓ってもいい、俺達は必ずこの国へ戻って来ると!なぜならば、そこにカジノがあるからだ!!」

 ギラギラと輝く巨大カジノを指差した。

「・・・ってのは半分冗談だ。俺達が種を撒いた陸奥の国がどう繁栄して行くのかも気になるし、何よりもまたナルティア軍の皆と会いたいからな!」

「だな!こんな面白い国、何度だって遊びに来たいぜ!」
「せっかく国が平和になったのに、出て行くのがちょっと寂しいです」
「絶対また来るにゃ!!」
「リンダ、魔法の鍛錬は続けるのよ?陸奥の未来は貴女の成長にかかってるんだから!」
「わたしもまたくるー!!」

「「うえええええええええええん!!」」


 感極まったリンダがパメラの胸に飛び込んだ。
 そしてナルティア・フレイア・スカーレットの三人は俺の胸に。
 ニャルル達も軍の皆に抱きつかれてもみくちゃだ。


「小烏丸!!あ、あたしは、小烏丸のことを・・・」
「うええええええん!私も!!」
「す・・・、好きなんだ!どうしても出て行ってしまうのか!?」

 いや、鈍感な俺でも人の好意くらいは察していたさ。
 でもミスフィート軍の皆が俺の帰りを待っているんだ。

「ありがとう。この国も人もみんな大好きだけど、しかし俺には帰らなければならない場所があるんだ。陸奥の国は一段落着いたと言えるが、向こうはまだ聖帝軍との戦闘が続いている」

 このまま陸奥に滞在し続けると、忘れられてしまうかもしれんしな・・・。

「聖帝がどこへ飛ばされたのかは不明だが、俺は奴との決着をつけねばならない。少なくとも聖帝軍を滅ぼして反撃の芽を潰す必要があるんだ。落ち着いて家庭を持つなんてのは、今はちょっと考えられない状況と言えばわかってもらえるだろうか?」

「・・・それが全部終わってからならばいいのか?」

 ぬう、全部終わったらか・・・。
 平和になったら俺は一体どうするつもりなんだろ?

「正直まったく考えてなかった。そうだな・・・、未来の可能性は無限大だ!陸奥の地で暮らす未来だってあるかもしれない。でも俺はミスフィート軍の軍師だからな、できればあまり期待はせずに新しい恋を見つけて欲しい。本当に申し訳ないんだけど、自分でも未来の姿が思い浮かばないんだ」

「隊長、彼を困らせちゃだめだよ」
「私達だってやることはいっぱいだもんね。落ち着いたらさ、みんなで尾張まで遊びに行こうよ!」
「うん・・・、そうだな!今は近隣国への備えをしなければならないし、恋などしている場合では無かった!・・・でもあたしは諦めないぞ!絶対いつか振り向かせてやる!」

「!!」

 隙をみせた一瞬で、ナルティアに唇を奪われていた。

「隊長!それはずるい!!」
「わ、私も!!」

 続けてフレイアとスカーレットにも唇を奪われてしまった。


「よしッ!これでしばらくの間戦えるぞ!!」
「小烏丸、絶対に勝って来なさいよ!!」
「また陸奥に来るのを、私達はずっと待ってるからね!!」


 カハッ!それは反則だろう!!

 こんなのミスフィート軍の皆にバレたら、『コイツ、旅の間に現地妻作ってきやがったっス!』って騒がれるに決まってる。

 なぜかルーシーが思い浮かんだけど、とにかく今の出来事は胸の内にしまっておこう。

 あ、そうだ!


「ナルティアにこれを渡しておく。離れた相手とも会話することが出来る通信機だ。前にミスフィートさんと話したことがあったろう?」
「あーーーーっ!覚えてるぞ!あたしにもくれるのか!!」
「ナルティアだけを贔屓したわけじゃないからな?陸奥の国と通信する手段があった方がいいと思ったんだ。フレイアとスカーレットにも使わせてやってくれよ?」
「「おおおおおおおおーーーーっ!!」」


 実際に通信機で会話しながら、三人に使い方を教えた。



「よし、ニャルル・シャイナ・ゴマちゃん・パメラ・チャミィ!そろそろ出発するぞーーー!!」

「「アイアイサーーー!!」」


「道中気を付けてね!」
「武運を祈ってるぞ!!」
「落ち着いたら絶対連絡してね!」

「ありがとう!では、行ってきます!!」

「「みんな達者でねーーーーーーー!!」」


 こうして陸奥での長い戦いが終わり、俺達は次の国へと出発した。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

新妻・遥の欲情~義父の手ほどきで絶頂に溺れ逝く肉体

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:404pt お気に入り:19

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

恋愛 / 完結 24h.ポイント:284pt お気に入り:1,041

決められたレールは走りません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:43

【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:414

異世界で【スキル作成】を使って自由に生きる!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,180pt お気に入り:26

幸せな番が微笑みながら願うこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:979pt お気に入り:5,022

処理中です...