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422 ゼネトス軍の巡回兵

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 ナルティア軍の皆は春の到来に備え、日々訓練に明け暮れていた。

 しかしラッコの街は元々ゼネトス領だったわけで、定期的にゼネトス軍の兵士が訪れるのだ。


「大変です!また南西の門にゼネトス兵が現れました!13人です」

「「なにッ!?」」


 また来たのかよ!えーと、これで4回目か?

 ちなみにここは会議室だ。

 越冬後にどの街から攻略して行くかの作戦会議中だったのだが、こうなっては一旦話を中断して対処せねばなるまい。


「すぐに門へ向かうぞ!」
「連れて行く兵士は50人ほどでいいですか?」
「それでいい。先行する我らだけで余裕だとは思うが、何が起きるかわからんからな」


 ガタン

 全員椅子から立ち上がり、会議室を出た。


 VIPルームを覗くとシャイナとニャルルが寛いでいた。


「お、二人いたか。パメラとゴマちゃんは?」

「にゃ?」
「チャミィが魔法の練習してるから、付き添いしてるんじゃないかな?」
「ううむ、となると訓練場か外か・・・。まあいいや、ゼネトス兵が西門に現れたらしいから倒しに行くぞ!急がなきゃならんから、チャミィに付き添ってるあの二人は置いてく」
「ゼネトス兵!?大変だ!」
「急ぐにゃ!!」


 司令本部3号店を出て、走って門へと向かった。



 ・・・・・



「ここで待てとは、どういうことだ!!!」
「街の防衛強化のために領主様が方針を変更したのです!急いで使いを飛ばしましたので、もうすぐここに来ますから少々お待ちを!!」
「アマダーの野郎がか!?防衛強化だあ?」
「んなもん待ってられっか!!コッチは雪の中歩いて凍えそうなんだよ!」
「あの豚野郎、領主になったからって調子こいてんじゃねえぞ!!」
「ま、待って下さい!あと3分、いや1分で到着しますから!」


 門の前で、鎧を着てゼネトス軍に変装したナルティア軍の兵士が、必死にヤツらの侵入を防いでいるのが見えた。


「急ごうよ!トムが斬られてしまうわ」
「門の外にいるから、此処からじゃ何人いるのか見えないな。全員を中に入れてから叩き斬るぞ!」
「「ハッ!」」


 俺が口出しするまでもなく、ナルティアが素晴らしい采配をしている。

 斬り合いになっても武器の性能の差で絶対に勝つ自信があるから判断が早いのだ。自分らの力に自信を持ってるのは良い傾向だ。

 こういう場合、俺は何も言わずにナルティアの決定に従うのみ。
 口を出すのは間違った判断をした時だけでいい。


「なんだアイツら?」
「ああん?女だあ!?」
「ケハッ!あのねーちゃんらが今夜のお相手をしてくれるのか!?」
「ほ~~~!アマダーの野郎、少しはわかって来たじゃねえか」

「待たせてすまなかった!皆ゼネトス兵のようだな。よし、寒い中ご苦労であった!全員中に入ってくれ」

「なんだその口の利き方は。商売女じゃねえのか??」
「この女って、もしかして兵士なのか?」
「ラッコに女兵士なんていたかあ??」


 ナルティアに商売女の演技なんか出来るわけがない。ミスフィートさんの妹って感じの性格してるから、残念ながらあまり柔軟性が無いのです。


 ゼネトス兵が全員中に入ったのを確認し、トムが速やかに門を閉めた。
 報告通りの13人だ。


「何で門を閉めたんだ?」
「まだ昼だろ?」
「どーでもいいからとっとと行くぞ。さみぃんだよ!」

「えーと、来たのは全部で13名か?」

「あ?見りゃわかるだろ。数えろや」
「そういう意味じゃねえだろ馬鹿。全員揃ってるのかって話だろ」
「馬鹿だと!?てめえぶっ殺すぞ!」
「あ!?殺してみろやゴブリン脳が!」
「お前らうるせえから少し黙れ!確か13名で来たハズだ」


 おいやめろ!ゴブリン脳で噴き出しそうになっただろ!


「あ?なんだこのマスク野郎は?」
「何ニヤけてんだテメー!」
「コイツもアマダーんとこの兵士なのか??」
「つーかやたらと女が多いな。あの豚野郎の趣味か?何人か貰って帰ろうぜ」


 ゼネトス兵の後ろにスタスタと歩いて行く。


「お、おい!!これは何だ!?」


 俺の驚いた声を聞いたゼネトス兵が、全員後ろを振り向いた。

 次の瞬間、ナルティアが攻撃の合図を出し、一斉に剣を抜いて襲い掛かる。


 ザシュッ!

「あがッッッ!!」

 ガギン!!

「な、なん?ごへァッ!!!」

 人数の都合で、まだ攻撃されていないゼネトス兵が騒ぎ出す。

「何のつもりだ!?まさか!!」
「嘘だろ!?」
「クソッ!!応戦だ!!」


 当然ながら戦闘は一瞬であっけなく終わった。
 ただでさえ武器の差があるのに、不意をつかれたらこんなもんだ。


「よしッ!今回は完璧だったな!」

「なんかもういい加減慣れて来たよ」
「大事件現場にゃ!!」
「こっちの方が人数少なかったけど、不意を付けば余裕ですね」
「小烏丸さんの『これは何だ!?』も洗練されてきましたよね!」
「ぷはははははッ!!次は他の人がやってみちゃう!?」
「あ、じゃあ今度来たら俺がやってみようかな?」
「ちゃんと練習しときなさいよ?」


 本当にパーフェクトだったな。

 もう慣れたせいか、凄惨な現場なのに皆余裕の会話をしている。ニャルルだけは少しトラウマが発動してるっぽいけど、表情をみた感じ大丈夫そうだ。


「さて、寒いけど門の前をこのままにはしておけないから皆もう一仕事だ。あ、向こうから救援が来たな!せっかく来てくれたのに何もせずに帰らせるのも可哀相だし、事後処理は彼らに任せるか」
「いや、事後処理させる方が可哀相だと思うのですが・・・」
「じゃあ手伝ってやるといい!」
「ええええええええ!?」
「あーっはっはっは!余計なこと言うから!!」
「いやあの、急にお腹が痛くなったので彼らに任せます!!」


 ゼネトス兵の遺体を前に変な和やかムードになってるわけだが、まあ何というか・・・、そういう世界なんだよね。

 それはともかく、今は作戦が上手く行ったことを素直に喜ぼう。
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