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421 ファンヒーターからの卒業
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陸奥の冬は寒くて厳しい。
軍の人達は司令本部に籠って、俺が作ったファンヒーターで寒さとは無縁と言っていい暮らしをしているが、街の住民達は毎日震えながら寒さを耐え忍んでいるのだ。
そこで兵士達に薪ストーブを大量に作らせて全ての家に設置するといった、至れり尽くせりの政策を行ったナルティア軍により、非常に長い間厳しい生活をしていた住民達にもとうとう笑顔が戻った。
伐採した木材をすぐに薪として使えるように、魔法で乾燥させまくった俺の活躍も忘れてはならない。
「小烏丸さん!」
「ん?」
軍の重臣達と話し合いをするために会議室に入室した瞬間お声が掛かった。
とりあえず円卓のナルティアの真正面にある自分の座席に着く。
「街の住民達にストーブがすべて行き届きました。これでもう住民全員が暖かく冬を越すことが出来そうです!」
「おお!それは良かった。薪の配布はどうしてるんだ?」
「さすがに一軒一軒届けていては兵士達の訓練が出来ないので、住民達に司令本部まで取りに来てもらってます。水と食料も同様ですね」
冬の間は川まで水を汲みに行くのも大変なので、司令本部の隣に給水所を作って、住民達はそこから水を持ち帰ることが出来るようにしたのだ。
川から水を引いたり井戸を掘るなんてかったるいことはやってられんから、当然水生成機の出番だ。タンクに蛇口を何個も付けてあり、列を作ることなく何人も同時に水を入手することが出来るので、住民達もこれには大満足しているらしい。
「まあそれくらいはな。何だか住民達に至れり尽くせり状態だが、堕落させてブクブク太らせてもしゃーないし、春になったら農作業に勤しんでもらうぞ」
「「ハハハハハッ!」」
「それでですね、住民達の方はこれで問題無くなったのですが、今度は漁に出ている兵士達から『寒くて死にそうだから何とかなりませんか?』と言われたのです」
あ~、この寒空で船の上はたしかに厳しいな。
「冬の漁は辛いからな~。そうだな・・・」
冷気耐性の服は渡してあるけど、それは寒さに耐えられるってだけで、暖かいわけじゃないからなあ。肌が露出してる部分は当然寒いし、服の隙間から冷たい風も入って来るだろう。
あ、そっか!熱生成機でなんとでもなるか。
「よし、兵士にトイレでも持たせよう。アレなら暖かい」
「いやいやいやいや!トイレを抱えたまま漁なんて無理でしょうが!」
「「わはははははははははははは!」」
「まあそれは冗談だ。トイレみたいな熱を発生する装備品でも作るか」
「えーと・・・、鎧みたいな?」
「そんな感じだな。火傷しないよう細かい調節が出来るから、完成したら着用して外で実験してみよう」
「暖かいだけの鎧って面白いわね!それがあれば冬でも戦えそう!」
たしかに面白い。
暖かいだけの鎧なんで防御力は期待できないが、中に強化した服を着ているからそれで問題は無くなる。重けりゃ戦いになったら時に脱げばいいだけだし。
「確かにアリだな・・・、まあとりあえず一度作ってみてからだ」
「手伝えなくてすまんな。こればかりは小烏丸に頼るしかない」
ナルティアが申し訳なさそうな顔をしてるけど、付与魔法使いが俺しかいないんだからそれはしょうがない。そして俺が陸奥にいられるのもゼネトス軍を撃破するまでだ。それまで間に出来ることはやってあげようと思ってる。
なぜか陸奥をギャンブル王国にしてしまったので、少し責任を感じているのだ。もうなっちまったモノはしょうがないから、せめて魔道具で暮らしやすくしてやろうかなーって。
俺がこの国からいなくなっても魔道具はずっと残るから。
************************************************************
「これは素晴らしいですよ!司令本部の中よりも暖かいくらいだ!」
「本当に暖かいな!これなら船の上でもホカホカだろう!」
「ちょっと重いけど、寒いよりは全然良いと思う!」
「良い感じだな。よし、実験は大成功だろう」
成功すると思っていたので、ナルティアと重臣達の七名分とついでに俺の分も作った。見た目は鉄のフルアーマーだが、防御力は求めてないからペラッペラの紙装甲だけどね。
そしてトイレの量産で経験を積んでいた甲斐もあり、温度調節も完璧だ。これなら漁師達も凍えず仕事をすることが出来るだろう。漁師じゃなくて兵士か。
「おねえちゃん、でたーーーーーーーーー!!!」
「やったあああああああああ!!よく頑張ったわね、ミィ!!」
「ん?」
声が聞こえた方を見ると、パメラとチャミィが抱き合っていた。
気になったので傍まで歩いて行く。
「何を喜んでるん?」
「小烏丸!とうとうミィが魔法を使えるようになったのよ!!」
「マジか!?」
「びゅーーーんってとんでったよ!!」
いや、何が飛んでったんだ?
「もう一回やって見せてくれるか?」
「うん!!」
チャミィが空き地に向かって右手を前に出し、真剣な顔つきになった。
そして30秒ほど経った時、チャミィの右手から石礫がピューンと飛んで行った。
「おおおおおお!!土魔法じゃないか!素晴らしい魔法を覚えたな!」
「うん!!」
「良かった・・・、これでもう昔みたいに辛い思いをしなくていいのよね!?」
「魔力過多が病気の原因なのだから、魔力さえ放出できればもう大丈夫だ!これでファンヒーター幼女も卒業だな!」
「ミィ!病気が治ったのよ!!もう苦しまなくていいんだよ!」
「うわああああああああん!!おねえちゃん!!!」
パメラの悩み事もやっと解決したな・・・。本当に良かった!!
けどファンヒーター幼女は今すぐ卒業させることもないか。結局魔力の放出はしなきゃならんのだし。それにチャミィが近くにいるだけでポカポカ暖かかったから、なんか可愛らしかったんだよね!
軍の人達は司令本部に籠って、俺が作ったファンヒーターで寒さとは無縁と言っていい暮らしをしているが、街の住民達は毎日震えながら寒さを耐え忍んでいるのだ。
そこで兵士達に薪ストーブを大量に作らせて全ての家に設置するといった、至れり尽くせりの政策を行ったナルティア軍により、非常に長い間厳しい生活をしていた住民達にもとうとう笑顔が戻った。
伐採した木材をすぐに薪として使えるように、魔法で乾燥させまくった俺の活躍も忘れてはならない。
「小烏丸さん!」
「ん?」
軍の重臣達と話し合いをするために会議室に入室した瞬間お声が掛かった。
とりあえず円卓のナルティアの真正面にある自分の座席に着く。
「街の住民達にストーブがすべて行き届きました。これでもう住民全員が暖かく冬を越すことが出来そうです!」
「おお!それは良かった。薪の配布はどうしてるんだ?」
「さすがに一軒一軒届けていては兵士達の訓練が出来ないので、住民達に司令本部まで取りに来てもらってます。水と食料も同様ですね」
冬の間は川まで水を汲みに行くのも大変なので、司令本部の隣に給水所を作って、住民達はそこから水を持ち帰ることが出来るようにしたのだ。
川から水を引いたり井戸を掘るなんてかったるいことはやってられんから、当然水生成機の出番だ。タンクに蛇口を何個も付けてあり、列を作ることなく何人も同時に水を入手することが出来るので、住民達もこれには大満足しているらしい。
「まあそれくらいはな。何だか住民達に至れり尽くせり状態だが、堕落させてブクブク太らせてもしゃーないし、春になったら農作業に勤しんでもらうぞ」
「「ハハハハハッ!」」
「それでですね、住民達の方はこれで問題無くなったのですが、今度は漁に出ている兵士達から『寒くて死にそうだから何とかなりませんか?』と言われたのです」
あ~、この寒空で船の上はたしかに厳しいな。
「冬の漁は辛いからな~。そうだな・・・」
冷気耐性の服は渡してあるけど、それは寒さに耐えられるってだけで、暖かいわけじゃないからなあ。肌が露出してる部分は当然寒いし、服の隙間から冷たい風も入って来るだろう。
あ、そっか!熱生成機でなんとでもなるか。
「よし、兵士にトイレでも持たせよう。アレなら暖かい」
「いやいやいやいや!トイレを抱えたまま漁なんて無理でしょうが!」
「「わはははははははははははは!」」
「まあそれは冗談だ。トイレみたいな熱を発生する装備品でも作るか」
「えーと・・・、鎧みたいな?」
「そんな感じだな。火傷しないよう細かい調節が出来るから、完成したら着用して外で実験してみよう」
「暖かいだけの鎧って面白いわね!それがあれば冬でも戦えそう!」
たしかに面白い。
暖かいだけの鎧なんで防御力は期待できないが、中に強化した服を着ているからそれで問題は無くなる。重けりゃ戦いになったら時に脱げばいいだけだし。
「確かにアリだな・・・、まあとりあえず一度作ってみてからだ」
「手伝えなくてすまんな。こればかりは小烏丸に頼るしかない」
ナルティアが申し訳なさそうな顔をしてるけど、付与魔法使いが俺しかいないんだからそれはしょうがない。そして俺が陸奥にいられるのもゼネトス軍を撃破するまでだ。それまで間に出来ることはやってあげようと思ってる。
なぜか陸奥をギャンブル王国にしてしまったので、少し責任を感じているのだ。もうなっちまったモノはしょうがないから、せめて魔道具で暮らしやすくしてやろうかなーって。
俺がこの国からいなくなっても魔道具はずっと残るから。
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「これは素晴らしいですよ!司令本部の中よりも暖かいくらいだ!」
「本当に暖かいな!これなら船の上でもホカホカだろう!」
「ちょっと重いけど、寒いよりは全然良いと思う!」
「良い感じだな。よし、実験は大成功だろう」
成功すると思っていたので、ナルティアと重臣達の七名分とついでに俺の分も作った。見た目は鉄のフルアーマーだが、防御力は求めてないからペラッペラの紙装甲だけどね。
そしてトイレの量産で経験を積んでいた甲斐もあり、温度調節も完璧だ。これなら漁師達も凍えず仕事をすることが出来るだろう。漁師じゃなくて兵士か。
「おねえちゃん、でたーーーーーーーーー!!!」
「やったあああああああああ!!よく頑張ったわね、ミィ!!」
「ん?」
声が聞こえた方を見ると、パメラとチャミィが抱き合っていた。
気になったので傍まで歩いて行く。
「何を喜んでるん?」
「小烏丸!とうとうミィが魔法を使えるようになったのよ!!」
「マジか!?」
「びゅーーーんってとんでったよ!!」
いや、何が飛んでったんだ?
「もう一回やって見せてくれるか?」
「うん!!」
チャミィが空き地に向かって右手を前に出し、真剣な顔つきになった。
そして30秒ほど経った時、チャミィの右手から石礫がピューンと飛んで行った。
「おおおおおお!!土魔法じゃないか!素晴らしい魔法を覚えたな!」
「うん!!」
「良かった・・・、これでもう昔みたいに辛い思いをしなくていいのよね!?」
「魔力過多が病気の原因なのだから、魔力さえ放出できればもう大丈夫だ!これでファンヒーター幼女も卒業だな!」
「ミィ!病気が治ったのよ!!もう苦しまなくていいんだよ!」
「うわああああああああん!!おねえちゃん!!!」
パメラの悩み事もやっと解決したな・・・。本当に良かった!!
けどファンヒーター幼女は今すぐ卒業させることもないか。結局魔力の放出はしなきゃならんのだし。それにチャミィが近くにいるだけでポカポカ暖かかったから、なんか可愛らしかったんだよね!
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