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410 地底人からの卒業

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 ルクセリアの街を支配していたゼネトス軍を排除し、ようやく俺達は地上で暮らせるようになった。

 しかし街を陥落させたのは夕方だったので、その日は出入り口の見張りだけ残して結局アジトの地下で寝ることとなった。

 俺はともかく仲間達には衝撃的な一日だったので、何も考えさせることのないよう、皆で寝る前にトランプで遊んでから同じ部屋で雑魚寝した。

 精神を傷付けたのはニャルル達だけじゃなく、慰める側にいたパメラも同様なので、丸洗いから眠りにつくまでずっと当社比10倍で甘やかしたぞ。


 そして翌日。


「んじゃ今日は、街の真ん中にデッカイ建物を作るぞ!・・・パメラが」

「まあ私の出番だとは思ってたけどさ!」
「にゃはははは!パメにゃん頑張るにゃ!!」
「やっと地下生活とオサラバだーーーー!」
「けどボクらは何も手伝えないよ?」
「おねえちゃんのおてつだいするー!!!」

 たしかに建築に関して俺らが手伝えることは何もない。
 でもやらなきゃならんことは、他にいくらでもあるのだ。

「建築の方はパメラに任せるけど、俺達もやることはいっぱいあるからな?まずはナルティア軍が自分らでも漁が出来るように小型船を3隻造る予定だ。しかし俺一人で資材を集めるのは大変なので、ニャルル・シャイナ・ゴマちゃんの三人は船の方を手伝ってくれ。チャミィはおねえちゃんのお手伝いを頼む!」

「「アイアイサーーー!!」」

 いや、その掛け声はだな、・・・まあいいか。

「んでパメラ。住居は昨日話した通りの大きさで頼むけど、まずは建築する場所を決めなくてはならない。空き地を探すのではなく、ココだって思った場所に建物があったらぶっ壊すぞ。元からある古臭い建物なんて残さなくていいからな?」

「アハハハハハハハ!無茶苦茶強引ね!!」
「さすが、こがにゃんにゃ!」
「根本的に考え方が普通じゃないよね!?」
「もう派手に城とか建てた方がいいんじゃねえの?」

「いや、まだ目立つ建造物は作っちゃダメなんだよ。街の外からデカい建物が見えたら変に思われてしまうだろ?なのでパメラが作る建物も2階建ての予定だ。それくらいの高さならば外から見えないからな」
「なるほど!まだ目立っちゃマズイのか」

 城を建てるとしたら、それはゼネトスから陸奥の国を奪取してからの話だ。それに北の果てに城があったって、守りに役立つわけでもないただの別荘みたいになってしまうだろう。



 ・・・・・



 ナルティア軍の皆を引き連れ、街の真ん中まで来た。


「よーし、ココにすっか!」

「ん??家を建てるのだろう?見た感じ、近くに空き地なんて無いぞ?」
「ナルティアよ、この街はもうお前の物なんだぞ?空き地なんてのは強引に作りゃいいんだよ!」
「はあ!?本当にこの場所に建てるのか!!!」
「こんな薄汚い建物など、あっても邪魔なだけだ」

 ゼネトス軍が支配していた街の中央に一般人の民家なんてあるわけがなく、ここら一帯は現在空き家しかない状態だ。
 不思議なことに中の人がみんな天に召されてしまったので。

「軍の皆を連れて来た理由は、先ほど説明した通り、昨日倒したゼネトス兵の死体撤去作業をしてもらう為だ。それでまずは目の前にある建物の中から始めてもらいたい」
「わかった!それでは皆の者、キツイ仕事だが頑張ってくれ!これが全て終わってようやく我々の街となるのだからな!!」

「「了解!!」」


 俺もルーサイアの街を落とした時に経験しているんだけど、マジで辛い作業なんだよな。

 ・・・あれ?そういやルーサイアとルクセリアって、街の名前もすげえ似てないか?まさかとは思うけど、ゼネトスの居城もトラネコ城っぽい名前なんじゃねえだろうな!?

 ここまで状況が一致すると、ココに来るのが必然だったように感じてくる。まるで俺が運命に吸い寄せられたかのようじゃないか・・・。


 どうやら建築範囲内の撤去作業が終わったようだ。


「よし!パメラ、範囲内の建物を全て思いっきりぶっ壊してくれ」

「まかせて!」


 ドガガッ! ズズズズ・・・



 ・・・・・



 パメラの魔法によって指定した場所が更地になり、続けて建築が始まった。

 ナルティア達は今も全員動き回っており、俺達も造船を開始するために街の外へと向かう。


「じゃあ大体この太さの木をどんどん切って行ってくれ。一人につき船1隻分な。木の下敷きにならないよう注意しろよ?危ないから三人共バラバラの方角に進むんだ」

「「アイアイサー!!」」


 その間に俺はエンジン作りだ。
 頃合いを見て木の回収に行かなきゃな。



 ―――それぞれが仕事に没頭し、それだけで丸三日費やした。





 ************************************************************





「え?・・・パメラさんが一人でこれを!?」


 ナルティア軍の全員が暮らすことができる、二階建ての巨大な建物が完成した。

 個室が300以上あるってだけでも驚異的だが、俺監修による大浴場が目玉だな。当然ながら男女別に分かれていて、それぞれにプールも作ったぞ。

 ミケネコ城の時のように女風呂の中に飛び込んでって泳ぐような真似はできないから、俺達が使うための客人用的な中浴場ってくらいのプール付きお風呂も、別の場所に作ってもらった。
 何となくナルティア達三人も、コッチのお風呂を使うような気がするんだよな~。なぜかは知らんけど、アジトでも軍の皆がいる風呂を使ってなかったから。

 そして全員が入れる規模の食堂やミーティングルーム、重臣達だけで大事な話をするための円卓のある会議室なども完備しており、もはや司令本部と言えるレベルの内容だ。


「お疲れさん!注文通りの完璧な施設だ。あと窓ガラスさえあれば文句ナシだったんだけど、まあ贅沢は言うまい」
「さすがに疲れたわね~、ご褒美ちょうだい!」
「ご褒美か・・・、あ、戦勝記念も兼ねてドラゴンでも食うか?」
「わお!名案だわ!!でも良いの?大事に取っておいたのよね?」
「ド、ドラゴン!?」

 ちなみにこの場にいるのは、たまたま通りがかったナルティア軍のリンダって名前の女性と、俺とパメラの三人だ。

「食うのは火竜の方な。ゼネトスを倒した時も振舞いたいから食い放題にはしないけど、まあステーキ300人前って感じにすっか。あとホルモンも付けよう」
「やったーーーーーーーーー!!」
「はわわ、はわわわわ!」


 快勝した時くらいは大盤振る舞いせんとな!
 尾張に持ち帰る分が少なくなってしまうけど、皆なら笑って許してくれるさ。
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