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393 本州上陸

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 良い感じの崖を見つけたので、慎重に船を寄せて上陸した。
 コーヒーの苗木をそっと地面に置き、船をマジックバッグに収納する。

 うーむ・・・、コーヒーの栽培は俺の使命でもあるが、クッソ嵩張るなコイツは。
 コーヒーの苗木を持って日本縦断とか、なんの新企画だよ!?

 それはさて置きだ。

 さっきの警告もあってか、みんな上陸の達成感など皆無で緊張感に包まれてしまっている。


「あーー、さっきの警告は最悪の事態にならんよう心構えを説いた感じであって、出会う人全員悪者ってわけではないからな?治安の悪い国もあれば、治安の良い国だって当然ある。まあ、危険な奴ってのは大抵見ただけですぐわかるから、気楽に行こうや!」

「そ、それもそうね。最初から緊張しっぱなしじゃ疲れちゃうわ!」
「だな!少なくとも街に入るまでは安全だろ!」
「にゃはははは!悪者にゃんてやっつければいいだけにゃ!怖がることにゃんてにゃいにゃ!」
「ねえ、そこって街じゃない?」

 シャイナの一言で、緩くなりかけていた空気が一瞬で張りつめた。


「たしかに建物が見えるな。いきなり街に入る必要があるのか・・・、いや、俺らってすでに街の中にいるんじゃねえのか?なんせ海から来たしな」

「いきなり安全じゃなくなったじゃねえか!!」
「うにゃーーー!!良い街であることを祈るにゃ・・・」


 パメラはチャミィをぐっと抱き寄せていた。


「しゃーねえ、どうせ何の情報もねえんだ。行き当たりばったりで普通に歩いてくぞ!何かあったら俺が何とかするから、皆は自分らの身を守ることだけを考えろ」

「「アイアイサー!」」

「いや、もう海じゃないからその掛け声じゃなくていいんだぞ?」


 今の一言で少し緩んでしまったが、気を引き締め直して慎重に進んで行く。



 ・・・・・



「やっぱりココはもう街の中だな。活気の無い寂れた街のようだが・・・」


 どうも雰囲気の良い街ではなく、非常に辛気臭いのもあって俺達も口数が少なくなっていく。建物一つ見ても廃墟同然の有様で、昔の嫌な記憶が蘇って来る。


 その時、俺のすぐ横を男が通り過ぎて行った。

 服はボロボロ。一瞬しか顔が見えなかったが、死にそうなほど痩せていたように感じた。

 緊張感に包まれている仲間達に気を取られていると、その向かい側から鎧を着た男が三人歩いて来ていた。


「ん?」


 どこかで見たような光景だ。
 俺は青森になんか来たことないハズなんだが・・・。


「ぎゃあああああああっっ!!」

 ボロの男が、革の鎧を来た大男に剣でバッサリ斬られて倒れた。
 地面に血溜まりが出来ていく。

「あっ!」

 すべて思い出した!!!
 俺がこの世界に来た当時の、尾張の光景そのモノじゃねえか!


「剣が汚れちまったじゃねえか、糞野郎が!」

 狼藉者が血溜まりの中に倒れている男に蹴りを入れる。


 俺、タイムスリップしたとかじゃねえよな?

 心配になって自分の服装を見てみると、いつもの赤い流星コスだった。
 うん・・・、タイムスリップとかではない、たぶん。


「オイ!そこのお前らだ!何見てんだコラ!!!」


 傭兵みたいな恰好をした三人の狼藉者が、俺たちの方に駆け寄って来た。


 モヒカンとハゲではないが、短髪の男二人に長髪の男が一人、全員無精ヒゲを生やして薄汚れている。少なくともコイツらの髪型だけで、ここが昔の尾張ではないと判断出来るな。


「ウヒョーーーーーッ!!獣人か?良い女が4人もいるぞ!!!」
「ちっこいのもいるから5人だな!大漁だぜ!!」
「この赤いマスクの奴は、男・・・だよな?」

「男は必要ねえ!死ねや!!!」

 ザンッ

「ゴヘアッ!?」


 いきなり斬りかかって来た大男を、抜刀術でぶった斬った。

 残った狼藉者2人が呆気あっけに取られている。


「・・・なっ!?お、おい、ジャニス!!」
「うっ、駄目だ、死んでるぜ・・・」
「てっ、てめえ!」

「お前らは青森の、いや、陸奥の兵士か?」

 確か青森県は戦国時代で言うと、縦長になっている陸奥の国の一部のハズだ。

「よくもジャニスをやりやがったな!この野郎!!!」

 シュッ 

「お、オごっ・・・」

 ドサッ

「で?お前らは、いや、お前は陸奥の兵士なのか?ロン毛」

 短髪の2人は肉片となってしまったので、もうロン毛しか残っていない。


「ヒ、ヒイィィィィィ!!!」

 ロン毛が慌てて逃げ出した。

「逃がすわけねえだろ」

 タンッ! ザシュッ

「あガアアァッッっ!!!」


 長髪の男の左足を斬り落として、逃げられないようにした。


「うあああああああああッッッ!いでェ、いでえよおおおお!!!」

「黙れ!!俺の質問が聞こえなかったのか?次無視しやがったら右足もぶった斬るぞ!」

「・・・ぅぅ、うぎッ」

 よし、大人しくなったな。

「お前は陸奥の国の兵士か?」

「あ、ああ!いや、ハイ」

「いやとか、ハイとか、どっちなんだよ!?」

「ヒ、ひぃぃぃぃ!!む、陸奥の、ゼネトス軍の兵士だ、です!そ、そうだ!俺達に逆らったことがゼネトス様に知られたら、テ、テメー殺されるぞ!!」


 やはり陸奥の兵士だったか。んでゼネトスってのが大名の名前ね?
 なんだか昔の尾張と色々共通しすぎてて、ジャバルグの顔しか思い浮かばねえぞ。


「お前は馬鹿なのか?知られたら殺されるのならば、俺は知られないようにするしかないわけだ。さてここで問題です!ゼネトスに知られないようにするには、俺はどうするのが最善でしょう?」

「・・・・・・あ」

 ザンッ

 ロン毛の首を跳ねた。


「ハイ時間切れ。正解は『目撃者を全員消す』でしたー!」


 まあコイツらを消したところで、街の住人に見られてるだろうから、一瞬でお尋ね者だろうけどな。

 思い出したように振り返ると、一部始終を見ていたパメラやシャイナが顔を青くさせているのがわかった。


「まあそんなわけで、この国はハズレだな。とっとと別の国を目指した方が良いかもしれん」


 不意にゴマちゃんが飛びついて来た。

「うおおおおおおおーーー!こがっちカッケエ!!あの容赦の無さ!最高じゃねえか!!!」

 ・・・え?と思った瞬間、ニャルルも飛びついて来た。

「すごくカッコ良かったにゃ!!さすがこがにゃんにゃ!!!」


 いや、もっとこう、俺の暗黒面にドン引きしてるのかと思ってたんだけど・・・。
 え?今のでいいの?
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