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382 ニャルルの涙
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街の近くまで来たので、バスから箱を降ろして台車に積み替える。
「あ、魚の箱はマジックバッグに入った」
そりゃそうか。
生き物を収納することは出来ないけど、アレからもう結構な時間が経っている。
貝などはまだご健在なようで、収納することは出来なかったけど、台車で運ばなきゃならない箱は半分くらいにまで減った。
すまんな、美味しく頂くので成仏して下さい。
一応ギルドに顔を出したけど、パメラはすでに帰宅しているようだ。
四人で台車を押しながらニャルル宅に向かう。
・・・・・
「ただいまーーー!」
「やっと到着だーーーー!」
「さすがにちょっと疲れたにゃ」
靴があるんで、パメラ姉妹は家の中にいるようだ。
「あ、みんなお帰り~」
「おかえりなさーーーい!!」
よし、全員揃ったな。
「ところで、その箱は何?」
「それは良い質問ですね!」
「パメっち!ちょー大漁だぞ!!」
「今日は御馳走にゃ!!」
「ちょっと待った。どうせなら全部見せたいから庭に行こう」
貝だけがごっそり入った箱を見せてもピンと来ないだろうからな。
みんなで庭に移動して箱をいっぱい並べてから、チャミィを抱きかかえ、蓋を外していく。
「わあああああああああああ!おさかなさんいっぱいだーーーー!」
「ちょっ!!何なのよ、この凄まじい量の魚介類は!?」
「何度見ても圧巻だよな!」
「でもこう暑いと、すぐ悪くなっちゃうよ?」
「その通りにゃ!急いで捌かなきゃダメにゃ!」
「いや、そう急がなくても大丈夫だぞ。実はこの箱って魔道具になっていてな、冷気生成を付与してあるから中はヒンヤリ冷たいのだ」
「「な、なんだってー!?」」
付与魔法使いの俺に隙など無い。ただそれでも直射日光を浴びてる部分はやはりよろしくないので、こうして庭に出しっ放しとかはマズいけどな。
「えーと、北海道って刺身食う習慣とかある?」
「刺身こそ、この世の至宝にゃ!」
「新鮮な海の魚がお店に並んだ時は、お刺身にして食べられるよ!すごく値段が高いから滅多に買えないけど」
「漁師が仕入れて来てすぐじゃないとダメだから、その時は争奪戦になるんだぞ!大抵競りになるから、高いしすぐ無くなるしで中々手に入らねえんだ!」
「私も数回しか口にしたことないわね」
「なるほど良く分かった。刺身を食う習慣があるならば話が早い!今日の夕食は刺身祭りにするから、みんな箱から食いたい魚を選んでくれ。あ、そうだ!一つルールを決めよう。何匹でも選んで良いが、自分で選んだ魚は全部自分で捌くこと!でも、選んだ魚は自分のモノというわけじゃなくて、みんなで分け合って食うんだ」
それを聞いて、皆の視線が魚の箱の中に向いた。
このルールなら選びすぎると大変な思いをするから、数はそこまで多くならないんじゃないかな?それでいて色々な種類の魚を楽しめるってもんだ。ちなみに俺はマグロを解体する予定。
「すごく面白いかも!!」
「選び過ぎると大変な目に合うわけか。狙いを定めて厳選した方がいいな」
「素晴らしい作戦だわ!ミィも好きなの選んで良いからねー!」
「やったああああああああ!」
「こがにゃん、カニとか貝とかでもいいにゃ?」
「ん?もちろん何を選んでも構わんぞ」
皆がワーーッと魚に群がっているが、ニャルルだけは冷静に選んでいる。
マジでプロじゃねえか!ランスロットと無茶苦茶話が合いそうだ。
それぞれが魚を選び終わる。
家の中じゃ狭くて無理だから、台になるモノを家の中から運んで来て、それぞれが庭で捌くことになった。水生成機があるからこそ出来る大技だな。
皆が作業に入ったので、俺もマグロの解体を始めた。
************************************************************
家の中のテーブルの上には、色取り取りの魚が大量に並んでいる。
俺も地味に解体のプロなので、マグロの後は魚以外を中心に下拵えしていった。
お陰でテーブル上の豪華さは有頂天。
「皆様、今日はすごくご苦労様でした!お陰で超豪勢な夕食を堪能できます。今までは刺身というと、たぶん塩を振って食していたかと思われますが、今日は皆様の目の間に置かれてある醤油に付けて食べてみて下さい。きっと新たなる扉が開かれることでしょう!」
「なんか、丸洗い師の時の口調に似てないか?」
「こがにゃんさんって、たまに馬鹿丁寧な話し方になるよねー」
「二人とも黙るにゃ!こがにゃんが大事な説明中にゃ!」
「小烏丸も変だけど、ニャルルもなんか変になってない?」
「魚介類が絡むといつもこうなるんだよ・・・」
「・・・さて、料理を前にして長話も何ですから、そろそろ頂くとしましょうか。では、食材となってくれた魚達に感謝の気持ちを込めて、いただきます!!」
「「いただきまーーーす!!」」
職人が寿司を客に出す時、さっぱりしたモノから出していくと聞いたことがある。
でも俺が最初に食いたい刺身ってのはいつも決まっている。
―――マグロだ。
それも今回は、分厚く切った大トロだ!
醤油に付け、意を決して口の中に放り込む。
「「うめええええええええええええ!!!」」
もう箸が止まらない。
マグロを筆頭に、さんま・イワシ・マグロ・ハマチ・甘えび・ホタテ・マグロ・カンパチ・マグロと食って食って食いまくる。
北海道の海って、俺が知ってる大抵の魚が泳いでる感じだな。まあ異世界だから、細けぇこたぁどーでも良いんだよ!って感じなのかもしれない。さすがに伊勢海老はいなかったけど。
黄色いアイツを食ってみる。
「ウニうんめええええええええええ!」
そう、コレだよコレ!!ダンジョンのは毒入りだったから、いつか食いたいと思ってたんだ。
もうこれだけでも北海道に来て良かったって思えるよ。
「全部美味しいよおおおおおおお!」
「刺身を腹いっぱい食える時が来るなんてな!もう最高すぎる!!」
「ミィ、お魚さん美味しいわねー!」
「おいしーーーーーーー!!」
皆が舌鼓を打っている中、ニャルルは一人、感動の涙を流していた。
「あ、魚の箱はマジックバッグに入った」
そりゃそうか。
生き物を収納することは出来ないけど、アレからもう結構な時間が経っている。
貝などはまだご健在なようで、収納することは出来なかったけど、台車で運ばなきゃならない箱は半分くらいにまで減った。
すまんな、美味しく頂くので成仏して下さい。
一応ギルドに顔を出したけど、パメラはすでに帰宅しているようだ。
四人で台車を押しながらニャルル宅に向かう。
・・・・・
「ただいまーーー!」
「やっと到着だーーーー!」
「さすがにちょっと疲れたにゃ」
靴があるんで、パメラ姉妹は家の中にいるようだ。
「あ、みんなお帰り~」
「おかえりなさーーーい!!」
よし、全員揃ったな。
「ところで、その箱は何?」
「それは良い質問ですね!」
「パメっち!ちょー大漁だぞ!!」
「今日は御馳走にゃ!!」
「ちょっと待った。どうせなら全部見せたいから庭に行こう」
貝だけがごっそり入った箱を見せてもピンと来ないだろうからな。
みんなで庭に移動して箱をいっぱい並べてから、チャミィを抱きかかえ、蓋を外していく。
「わあああああああああああ!おさかなさんいっぱいだーーーー!」
「ちょっ!!何なのよ、この凄まじい量の魚介類は!?」
「何度見ても圧巻だよな!」
「でもこう暑いと、すぐ悪くなっちゃうよ?」
「その通りにゃ!急いで捌かなきゃダメにゃ!」
「いや、そう急がなくても大丈夫だぞ。実はこの箱って魔道具になっていてな、冷気生成を付与してあるから中はヒンヤリ冷たいのだ」
「「な、なんだってー!?」」
付与魔法使いの俺に隙など無い。ただそれでも直射日光を浴びてる部分はやはりよろしくないので、こうして庭に出しっ放しとかはマズいけどな。
「えーと、北海道って刺身食う習慣とかある?」
「刺身こそ、この世の至宝にゃ!」
「新鮮な海の魚がお店に並んだ時は、お刺身にして食べられるよ!すごく値段が高いから滅多に買えないけど」
「漁師が仕入れて来てすぐじゃないとダメだから、その時は争奪戦になるんだぞ!大抵競りになるから、高いしすぐ無くなるしで中々手に入らねえんだ!」
「私も数回しか口にしたことないわね」
「なるほど良く分かった。刺身を食う習慣があるならば話が早い!今日の夕食は刺身祭りにするから、みんな箱から食いたい魚を選んでくれ。あ、そうだ!一つルールを決めよう。何匹でも選んで良いが、自分で選んだ魚は全部自分で捌くこと!でも、選んだ魚は自分のモノというわけじゃなくて、みんなで分け合って食うんだ」
それを聞いて、皆の視線が魚の箱の中に向いた。
このルールなら選びすぎると大変な思いをするから、数はそこまで多くならないんじゃないかな?それでいて色々な種類の魚を楽しめるってもんだ。ちなみに俺はマグロを解体する予定。
「すごく面白いかも!!」
「選び過ぎると大変な目に合うわけか。狙いを定めて厳選した方がいいな」
「素晴らしい作戦だわ!ミィも好きなの選んで良いからねー!」
「やったああああああああ!」
「こがにゃん、カニとか貝とかでもいいにゃ?」
「ん?もちろん何を選んでも構わんぞ」
皆がワーーッと魚に群がっているが、ニャルルだけは冷静に選んでいる。
マジでプロじゃねえか!ランスロットと無茶苦茶話が合いそうだ。
それぞれが魚を選び終わる。
家の中じゃ狭くて無理だから、台になるモノを家の中から運んで来て、それぞれが庭で捌くことになった。水生成機があるからこそ出来る大技だな。
皆が作業に入ったので、俺もマグロの解体を始めた。
************************************************************
家の中のテーブルの上には、色取り取りの魚が大量に並んでいる。
俺も地味に解体のプロなので、マグロの後は魚以外を中心に下拵えしていった。
お陰でテーブル上の豪華さは有頂天。
「皆様、今日はすごくご苦労様でした!お陰で超豪勢な夕食を堪能できます。今までは刺身というと、たぶん塩を振って食していたかと思われますが、今日は皆様の目の間に置かれてある醤油に付けて食べてみて下さい。きっと新たなる扉が開かれることでしょう!」
「なんか、丸洗い師の時の口調に似てないか?」
「こがにゃんさんって、たまに馬鹿丁寧な話し方になるよねー」
「二人とも黙るにゃ!こがにゃんが大事な説明中にゃ!」
「小烏丸も変だけど、ニャルルもなんか変になってない?」
「魚介類が絡むといつもこうなるんだよ・・・」
「・・・さて、料理を前にして長話も何ですから、そろそろ頂くとしましょうか。では、食材となってくれた魚達に感謝の気持ちを込めて、いただきます!!」
「「いただきまーーーす!!」」
職人が寿司を客に出す時、さっぱりしたモノから出していくと聞いたことがある。
でも俺が最初に食いたい刺身ってのはいつも決まっている。
―――マグロだ。
それも今回は、分厚く切った大トロだ!
醤油に付け、意を決して口の中に放り込む。
「「うめええええええええええええ!!!」」
もう箸が止まらない。
マグロを筆頭に、さんま・イワシ・マグロ・ハマチ・甘えび・ホタテ・マグロ・カンパチ・マグロと食って食って食いまくる。
北海道の海って、俺が知ってる大抵の魚が泳いでる感じだな。まあ異世界だから、細けぇこたぁどーでも良いんだよ!って感じなのかもしれない。さすがに伊勢海老はいなかったけど。
黄色いアイツを食ってみる。
「ウニうんめええええええええええ!」
そう、コレだよコレ!!ダンジョンのは毒入りだったから、いつか食いたいと思ってたんだ。
もうこれだけでも北海道に来て良かったって思えるよ。
「全部美味しいよおおおおおおお!」
「刺身を腹いっぱい食える時が来るなんてな!もう最高すぎる!!」
「ミィ、お魚さん美味しいわねー!」
「おいしーーーーーーー!!」
皆が舌鼓を打っている中、ニャルルは一人、感動の涙を流していた。
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