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363 武器を渡す条件

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 大蜘蛛を倒した後、ワームの討伐にも成功し、これにて依頼は達成。
 ニャルルと出会った崖の上まで戻って来た。


「ふーーーっ!さすがにちょっと疲れたね」
「汗びっちょりだよ!・・・ん?ニャルルは何で涼しい顔してるんだ?」
「そんにゃに暑くにゃいにゃ」

 頭に?を浮かべながら、ゴマちゃんが俺の方を見た。

「こがっちもだ。今日は日差しも強いし結構暑くない??」
「確かに強い日差しだが、俺は平気だな」

 赤い流星の衣装に隙など無い。
 ニャルルもダンジョン産の服を着てるから平気なのだろう。
 この二人だけ辛いってのはちょっと可哀相だけど、暑けりゃ汗をかくのは普通のことだしなあ。

「ってかね!ニャルル強くなり過ぎでしょ!!」
「視力が良くなって動きが良くなったってのはわかるけどさ、その強すぎる武器は何なのさ!?」
「こがにゃんにもらったにゃ!」

「いやニャルルよ、それは貸しただけだぞ!」
「えーーーーーーーーーッ!?」

 ゴブリン武器を獲得するには、ミスフィート軍に所属しているのが絶対条件であり、そこで頑張って出世して、ようやく手にすることが出来るといった代物なのだよ。

「だが条件次第ではやらんこともない」
「条件を言うにゃ!!」

「まず俺はミスフィート軍に所属している。そこでの身分は軍師だ。こう見えて結構偉い立場なんだぞ?」
「よくわからにゃいけどすごいにゃ!」

「その武器はな、軍で努力を積み重ねた結果、一定の身分にまで出世をしたご褒美として受け取ることが出来るといった代物なんだ。ただ、ニャルルにその条件を達成しろとまでは言わん。海を渡って尾張の国まで辿り着き、ミスフィート軍に入隊し、俺の部隊に所属するのを条件としよう」

「軍に入るにゃ!!」
「即答かよ!!」

 まあ、なんとなくニャルルは即決するような気はしてたけど!

 軍に入るといっても、最前線で敵と殺し合う戦闘員以外に、和泉のような内政官、ヴォルフのような偵察部隊なんかもあるから、まあそこは好きなのを選ばせてやろうと思う。

「な、なあ!あたいもその軍に入れば凄い武器が貰えたりするのか!?」
「ちょっとゴマちゃん!尾張の国って海の遥か向こうなのよ!?」
「でもこがっちって、余裕で海越えそうじゃね?」
「・・・・・・」

 ゴマちゃんや、あなた武器に釣られて海を渡るつもりですか?
 一人だけまともなシャイナがちょっと不憫だ。

「ニャルルだけを贔屓するなんてことはないぞ。しかしゴマちゃん、俺の住んでた所には弱い魔物しかいないからな?軍に入れば剣を振るう相手は人間だ。とはいえ大名のミスフィートさんは平和を愛する人だから、自分から侵略戦争を仕掛けるようなことはしない。俺らは仲間を守る為に剣を振るう」

 それを聞いて二人は考え込む。
 ん?シャイナも考えてるだと!?

「こがっちのいた所って、どんな国なんだ?」

 ただ平和な国って説明してもダメだな。
 海を渡って新天地を目指すかどうかという大事な話なのだから、国の成り立ちを説明して、それでも来る気があるのか選択させなければならない。


「えーとな、最初は最低最悪な国だった。ただ歩いてるだけで悪者に囲まれ、問答無用で斬られるような、クソみたいな大名が支配する国だ。だがミスフィートさんが作った軍がその悪党共を全て駆逐し、尾張は平和な国となったのだ。そこで俺達は尾張の国を、廃墟同然の状態から素晴らしい国へと作り変えた」

 俺が来た当時はマジで廃墟しかなかったからな。
 街を美しくするまで、どれほど大変だったか・・・。

「尾張国内に関しては、これ以上無いほど治安の良い国と言えるだろう。ココに来る時に乗ったバイクあるだろ?あれより高速で走る機関車というデカい乗り物が尾張にはあってだな、それに乗れば隣の国までも簡単に行き来することが出来るんだ」

「あの乗り物より速いのか!」

「機関車に乗ったら自分の常識がひっくり返るぞ。しかしだ!尾張は平和な国なのだが近隣国はそうじゃない。強き者が国を支配し、常に隣の国を虎視眈々と狙ってるワケよ。そんなのが侵略して来たら尾張の国は滅茶苦茶にされるかもしれない」

「何よそれ!なんで自分の国を良くしようと思わないの?」

「いや、その国の大名なりに良くしようとは思ってるんじゃないか?ただ、それはそれとして、自軍の領土を拡大する野望を持った大名が多いんだ。強き者が国を支配するだろ?すると次の行動は他国に攻め込むってのが、もう風習のようになってる感じだな」

 こんな話を聞いたら来たくなくなるかもしれんな。
 それでも来るってんなら受け入れるだけだ。

「なので平和を維持する力が必要となるわけだ。俺はミスフィート軍を強くする為に強力な武器を作り出した。ニャルルが持っている武器もその中の一つだ」

 マジックバッグからゴブリン武器を全種類取り出す。

「わお!!」
「か、格好良い・・・」
「うにゃっ!大剣があるにゃ!!」

 ニャルルは大剣、ゴマちゃんは槍、そしてなんとシャイナは短剣を手に取った。

 素晴らしいチョイスじゃないか!その短剣も三大不人気武器の一つで、長い間使い手を待ち続けていたのだよ。ちなみに不人気武器の最後の一つは大鎌だ。

 三人が武器を素振りして、その感触を確かめている。

「この槍すげーな!!どの武器屋にもこんなの売ってねえよ!」
「なんて使いやすい短剣・・・、すごく手に馴染むよ!」
「この大剣すごいにゃ!!めちゃめちゃ速く振れるにゃ!」

「ニャルルに条件を付けた理由がわかっただろ?」

「・・・行く。あたいも一緒について行って軍に入るぞ!」
「うん、ボクも行く。っていうか悩むまでもないよね」
「おおおっ!二人も行くにゃか!これは面白くにゃって来たにゃ!!」

 はい?
 俺、ちゃんと説明したよね?近隣国が攻め込んで来るって。

「えーと、結構頻繁に戦争とかあるんだけど、簡単に決めていいのか?」

「だって、オワリって国は平和なんでしょ?強い魔物もいないんでしょ?」
「いつ魔物に襲われて死ぬかもしれない暮らしより、どう考えてもそっちの方が魅力的だろ!考えるまでもねーよ!」
「こがにゃんの国とか、面白いに決まってるにゃ!」


 俺は少し勘違いをしていたようだ。
 この国の人達はみんな、魔物の脅威に怯えながら暮らしていたのだ。

 理不尽な魔物の襲来よりも、対人戦の方が楽って考え方もあったんだな・・・。
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