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341 奇跡
しおりを挟む―――――聖帝視点―――――
ドサッ
「ガハッ!ハアッ、ハアッ、ハアッ、とち狂いおって・・・」
凄まじい猛攻を受けたせいで全身が血濡れか。
我にこれ程の傷を負わせた男は初めてだ・・・。
地面に伏している男を視認する。
・・・・・・間違いなく死んでいるな。
過去に、雷撃掌を受けて生きていた者など1人も存在しないのだから当然か。
大技故に大量の魔力を消費してしまったが、こ奴が死した以上問題は無いだろう。
固有スキル:【絶望の領域】を維持するだけならば充分足りる。
しかし手強い男であった・・・。
誰がその名を付けたのかは知らぬが、赤い流星とはよく言ったモノだ。
だが我に傷を負わせた男の本名くらいは知っておきたい。
まあ、その辺の兵士から聞き出せばよいか。
とにかくこれで、我に対抗できる武将は居なくなったのだ。
手痛い損害を受けたが、徴兵すれば数だけなら何とでもなる。
使い物になるまで時間はかかるが、それは仕方あるまい。
ふむ。敵兵を全て殺さず従わせればいいのか。
だが今は戦意を喪失させる事が先決。もう少し敵兵を殺しておこう。
************************************************************
心臓の鼓動が停止し、その生涯を戦死という形で終えた小烏丸。
聖帝の『雷撃掌』を直接心臓に受けて、耐えられる者など存在しない。
―――だが、奇跡は起きていた。
本人ですら、もう全く記憶に無いであろう偶然の産物。
[赤い流星セット]
:これを着用することにより、3倍の速度で動けると言う伝説がある。評価SS
:上着、ズボン、ブーツ、ベルト
手袋、ゴーグル、ヘルメット、マントの8点セット。
:フル装備で全パラメータ5%アップ
:斬撃耐性+++ 刺突耐性+++ 衝撃耐性+++ 魔法耐性+++ 炎耐性+++
雷耐性+++ 熱耐性+++ 冷気耐性+++ 汚れ耐性+++ 精神耐性+++
:自動修復(強)サイズ自動調節 防水機能 消臭脱臭機能
そう、魔法耐性だけでは耐える事など出来なかった。
だが小烏丸は過去に、この衣装に『運命』とも言える付与を施していた。
【雷耐性+++】
アリアのダンジョンで、バフォメットに対抗する為だけに施した付与魔法。
今となって、その付与が奇跡を起こす。
ドクン
―――停止した小烏丸の心臓が再び動き始める。
************************************************************
―――――小烏丸視点―――――
ビクッ
気が付くと、俺は地面に倒れていた。
・・・は?・・・なんだこりゃ?なぜ俺は地面とキスをしている?
直前の記憶を思い出す。
怒りのまま、聖帝に滅茶苦茶攻撃したのは覚えている。
えーと、それで・・・、そうか!至近距離から直接魔法をくらったのか。
アレはマジでやばかったな。凄まじい衝撃だった。
・・・よく俺生きてたな!?
いや~、戦闘中に熱くなっちゃイカンね。
ミスフィートさんを殺すと言われたからって、近所の奥様方からも『温厚な紳士ね』と評判の俺が、まさか我を忘れて大暴れしてしまうとは・・・。
ムシャクシャしてやった。今は反省している。
・・・まあ冗談はさて置き、そろそろ起きねえとトドメを刺されちまうな。
激痛に顔を歪めながら、なんとか立ち上がる。
ぐおおお!どこもかしこも死ぬほど痛え。痛えけど、男は我慢だ!
聖帝の後ろ姿が見える。
この野郎!勝った気でいやがるな?後ろからザックリ斬ってやろうか!
・・・いや、その前に俺はやることがある。この機を逃すわけにはいかない。
「認めたくないものだな、若さ故の過ちというものを」
まさにドンピシャな名セリフ。ここで使わずいつ使うか!
その声を聞いた聖帝が即座に振り返り、目をカッ開いて驚愕する。
「な、なぜ生きている!?間違いなく貴様は死んでいた筈だ!!!」
「死ぬほど痛かったぞ。だが俺を殺すには不十分だったようだな」
「馬鹿なッ!有り得ぬ!!」
あ、しまった!名セリフの前に聖水飲んどけば良かったーーー!!
でもよく見たら聖帝も満身創痍か。俺、結構がんばったんじゃね?
そうだよな、ここで俺だけ回復するのはフェアじゃねえ。
スッキリ勝つには、対等な条件じゃねえとな!
地面に落ちたままの刀を拾い上げる。
「よし、戦闘再開だ。どちらかが死ぬまで休めないと思え」
聖帝の顔が引き攣る。
殺したと思っていた相手が実は生きていて、まだやる気マンマンだとわかったら、そりゃあんな顔にもなるか。
「・・・釈然としないが、生きていたのならばまた殺すだけだ!次に貴様が倒れた時は確実に頭を粉砕してやる!」
「怖いねえ。でも倒れるのは俺じゃなくてあンたの方だ。じゃあ教えてやるよ、死の淵より生還した人間の強さってヤツを!」
ずっと攻められっ放しで少しイライラしてたんだ。
身体のあちこちが泣くほど痛えが、それは向こうも同じ!
ダッ
聖帝の正面に真っすぐ駆け寄り、左から大振りの一閃。
当然そんな攻撃が当たる筈もなく、大剣に軽く弾かれる。
脳天への振り下ろし。弾かれる。
その衝撃により、苦痛で顔を歪める。
聖帝の口角が上がり、反撃の袈裟斬りが来る。
それを待っていたッ!
ガギン!
「ぐおっ!!」
急激に攻撃速度を速めた一撃が聖帝の頭部にヒットし、ヘルムの破片が宙を舞う。
本当は首を狙ったんだが、当たる寸前に身を屈められた。
―――その時だった。
「攻撃力上昇!防御力上昇!身体能力上昇!」
なにッ!?支援魔法?ルルか!いや違う、今のは男の声だった。
どうやら支援魔法を使ったのは聖帝軍の兵士。
すなわち、支援魔法の対象は聖帝。
・・・うん。対等な条件じゃなくなったな。
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