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315 歓喜する者達と夢見る者達
しおりを挟む―――――今回は小烏丸以外の視点でぐるぐる回ります―――――
「おい!見たか!?あの武器」
「城門に貼り出された紙に書いてある『伝説のゴブリン武器』ってのを見た時は、なんのこっちゃ?と思ったが、ありゃあ凄まじい武器だな!!」
「遠目で見ただけだが、正直アレは異常だ。大名でも手に入れられないような、とんでもない代物だぞ!」
「ミスフィート様の隣の席に座っていたあの凶悪そうなゴブリンが、伝説のゴブリンなのか?」
「アレは人形らしいけどな。尾張の兵士が言っていたのだが、あの人形と全く同じ大きさの本物のゴブリンが、どこぞの高難度ダンジョンに実在するらしいぞ」
「まあ、それを倒したから武器が手に入ったのだろうな」
「でも色々な種類の武器があったぞ?もしや伝説のゴブリンってのは、何種類も存在するのではないか!?」
ゴブリン人形の凶悪な見た目は記憶に新しい。
そして、それが何種類もいる高難度ダンジョンに恐怖すら覚える。
「かもしれぬな。まあ、とにかく侍大将まで出世すればアレが手に入るのだ!それに足軽大将が授与されていた弓も、間違いなく家宝に成り得る代物だ!ミスリル刀もきっと凄まじいのであろうな。刀はまだ使ったことが無いのでようわからぬが。何にせよ、家老まで行かずとも侍大将であの凄まじい武器が手に入るのならば、我らにとっても夢物語ではないぞ!」
「その通りだ!ミスフィート軍はまだ新興勢力。聖帝との戦の前に軍に入れたというのは大きいぞ!重臣たちが固定されて飽和している国よりも、遥かに出世しやすい境遇と言えよう!次の戦で活躍し、己の力を上に印象付けるのだ!」
「おおっ!なんか凄くやる気が出て来たぞ!」
論功行賞で、何名もの家臣に授与された強烈な武器の数々。
それは、出世を夢見る一般兵達に多大な影響を与えることとなった。
そして今回昇格した古参の面々も、当然ながら滅茶苦茶盛り上がっていた。
「ピピンが戦斧を選ぶとは思わなかったっス!」
「だって1番格好良かったんだもん!」
「え?見た目だけっスか!?」
「けど、ウチの隊はみんな大きな武器だよ?」
「わたし達には刀があるからね~」
「そうそう!短剣とか爪も興味無いわけじゃないけどさ、狭い場所で戦うのなら脇差しで十分だしね」
「だよね~!ピピンみたいな小柄な子が、巨大な戦斧を振り回して戦うなんて格好良いじゃない!」
「小柄な子って酷いよ!!」
「アハハッ!悪い悪い!」
場面は変わって、部将に昇格した人達。
「やっとカーラに追いついたわ!」
「みんなおめでとー!今回アタシだけ昇格出来てないから少し悔しいけど、次の論功行賞では絶対家老になってみせるから!」
「カーラなら余裕でしょ!聖帝軍相手に大暴れする姿が目に浮かぶもの」
「名前がすでに家老っぽい」
「ぷっ!!」
「アーーッハッハッハ!確かに似てるわね!」
「ふふっ!ワタクシは服の最大強化が楽しみですわ」
「あ~、それよそれ!聖帝軍との戦の前に防御力が高まるなんて素晴らしいわ!」
カトレアは少し考えた後、ハッとした顔になり話し始める。
「私達皆が今回昇格出来たのは、一大決戦が近いからではないでしょうか?」
「なるほど!普通に考えると、論功行賞やるなら戦後よねえ?」
「流石は隊長ね!いや、小烏丸くんが提案したのかな?聖帝との決戦に勝つ為、みんなを強くしてくれたんだわ!」
「防御力が上がれば心置きなく突撃出来る」
「負ける気がしない」
「気持ちはわかりますけど、自分だけ突出しすぎるのは駄目ですわよ?敵中で孤立したら非常に危険ですし、ついて来られない部下達が死んでしまいますわ」
「ぐぬぬぬ・・・、じゃあ少し気を付ける」
「少しじゃなくて、いっぱい気を付けなさいよ!」
足軽大将に昇格し、ミスリル刀を手にしたボヤッキー達も興奮を抑えられないでいた。
「憧れのミスリル刀をようやく手に入れたぞ!!」
「こいつぁ格好良いや!しかも汚れ耐性で血糊なんかも付着しないんだろ?」
「えーと、フローラさんから聞いたんだったかな?魔物を斬ったすぐ後でも新品のような状態だったって。しかも斬った感触が無いほどサクサク斬れるんで、間違って自分の腕なんかを斬り落としてしまわないかちょっと怖いって言ってた」
「それほどなのか!確かに自滅しないよう気を付けないとな。まあ俺の場合は汚れ耐性が嬉しいねえ!見ての通り片腕が無いだろ?だもんで連戦がキツかったんだよ。これからは血糊を気にせず戦えるぜ!」
「ヴォルフ殿も苦労したんだな。あっ、ルシオ!2階級特進おめでとう!」
近くを通りかかったルシオがボヤッキーに呼び止められ振り返った。
「ありがとうございます!いや~、まさかいきなり侍大将になれるなんて、思いもしませんでした!」
「男性陣の出世頭だな!男連中が肩身の狭い思いをしないで済むよう、どんどん出世して、尾張は女性陣だけじゃないって所を見せてやれ!」
「いやいやいや!そこはみんなで頑張りましょうよ!ああ、皆さんも昇格おめでとうございます!」
「ありがとよ!よし、後で男連中だけの祝勝会やろうぜ!」
「そりゃあいい!ドワーフ達にも声かけとくよ」
兵士達は大いに盛り上がり、皆それぞれが集まってどんちゃん騒ぎが繰り広げられた。論功行賞の後は休みなので、城内は夜遅くまで喜びの声が絶えなかった。
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