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286 別動隊との激闘

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 側面ばかり気にしててもしゃーないので、とりあえず皆に作戦だけ伝えて、その後は正面の敵を少しでも削ることに集中する。



「来たぞーーーー!!!」

「なにッ!?」


 13時30分。大体読み通りの時間か!


「エルフ達は正面の敵は気にせず、右から来る敵兵を弓と魔法で殲滅してくれ!正面の敵はお嬢に任せる!梯子持ちを優先して倒してくれ!それ以外の者達は全て下に降りて別動隊との斬り合いだ!ミスフィート軍の強さを敵に知らしめてやれ!」

「「おおおおおおおーーーーーー!!!」」


 それぞれが急いで行動を開始する。
 俺は下に攻めて来る敵にビームライフルを撃つ為に、まずはこの場で待機だ。



 ドオオオオオン!
 ヒュンヒュンヒュンヒュン


 エルフ達の攻撃が始まった。ならば下にもそろそろ来るッ!

 ジッと目を凝らして森を見つめる。

(来たッ!)

 何人もの敵兵が動く影を捕らえた。


「「うおおおおおおおおおーーー!!」」


 次の瞬間、何人もの敵兵が声を上げながら森から飛び出して来た。

 精神を集中して1番効果が出そうな位置を狙う。


 ビュオン!


 ドガアアアアアアアアアアン!!!


 土煙がもうもうと上がるが、森がハゲてるのだけはわかった。


「やはりハゲてしまった。森くんスマン!」


 敵を何人倒せたのか気になるが、それを確認している暇など無い!
 急いで階段を駆け下りる。


「うがあああああ!」
「死ねッ!」
「うおあああああああああああ!!」

 下はすでにビームライフルの攻撃をすり抜けた敵兵と乱戦になっていた。


「やっと戦争らしくなって来たじゃないか!」


 門を守る味方の横を駆け抜け、敵軍の中に飛び込んだ。



 ・・・・・



 ザシュッ

「がハッ!!」

 キンッ ズズッ

「うおあああああッ」


 これで何人殺った?・・・30人くらいまではちゃんと数えていたんだが、こう斬り続けていると、もうごちゃごちゃでさっぱり分からなくなるな。

 地面に倒れている死体は明らかに鎧兵の方が多いんで、兵の質では間違いなく尾張の方が勝っている。だが万が一門を開けられると、防壁の向こうから大量の敵兵が飛び込んで来で超劣勢になるから、全く気が抜けない。
 気になったんで門の方を見てみると、味方がまだいっぱい見えたのでとりあえずは大丈夫そうだった。


「ハハッ!伊勢軍の強さはこんなもんかい!アタシを殺せるものなら殺してみろッッ!!」

 結構近くから勇ましい声が聞こえて来た。
 あの声はカーラだな。彼女も大概バトルジャンキー系だからなあ。

「がああアアッッ!!」
「おっと」

 ザシュ

 あぶねえあぶねえ。戦場の中で考え事なんかしてる場合じゃなかった。
 休んでる暇なんかねえぞ。俺が1人でも多く倒せば、その分味方を助けられるのだから。

 そして苦戦中の左側目掛けて敵を斬って斬って斬りまくってる時に、右後方から敵の大軍が突っ込んで来るのが見えた。





 ************************************************************



 ―――――ミスフィート軍・とある兵士視点―――――



「ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアッ」


 くそお・・・、敵は一体何人いるんだよ!聖水はさっき使っちまったし、次致命傷を負ったら俺はもう助からねえ。だが俺が逃げれば仲間が死ぬ。そんな真似は絶対出来ねえ!

 ダメだ!弱気になるな!今までひたすら刀の腕を鍛えて来た自分を信じろ!


「ヅオらあああああぁぁぁぁ!!」
「ぐおおおおッッ!!」


 敵兵の長剣を刀で防ぎ、鍔迫り合いになる。
 明らかに敵の長剣の方が太くて強そうなのに、圧し負けるなんてことはない。
 小烏丸さんが自ら鍛えたというこの刀は、その辺の剣とは質が違う!故に不安など無い!


 ―――しかし戦場は1対1での攻防が許されるほど甘い場所ではなかった。


 横から敵兵が突っ込んで来て、わき腹を斬られ吹き飛ぶ。


「ガハッッ!!」


 やられたッ!わき腹が焼け付くように熱い。
 そして鍔迫り合いをしていた敵が迫って来るのが見えた。


「死ねええええええええ!!」


 万事休すか・・・。母ちゃんごめん、俺はここまでらしい。


「ぐへアッッっ!」


 ・・・え?


 ザシュッ


「ぐああああああっっ!」


 直後、俺を吹き飛ばした敵兵も斬り捨てられた。


「どうやら間に合ったみたいですね」


 だ、誰だ!?・・・え?カトレアさん!?
 彼女はトラネコ城にいた筈では・・・。


「飲める?」


 カトレアさんが俺を抱き起こして、水の入ったコップを口の前に持って来てくれた。いや違う!これは聖水じゃないのか!?

 慌てて聖水を飲み干した。


「がふッ!ハアッ、ハアッ、ハアッ」
「よし、大丈夫みたいね」
「あ、ありがとうございます!本当に助かりました!!」
「ふふっ、運が良かったですね」
「で、でも、なんでカトレアさんがココにいるのです?」
「なぜって、もちろん援軍が到着したからよ」


 援軍?・・・援軍が来たのか!!!

 周りを見ると、味方の大軍が敵兵を蹂躙しているのがわかった。
 やったッッ!!!これで間違いなく俺達の勝利だ!!!


「さて、皆はどこかな・・・?」


 そう呟くと、カトレアさんは軽やかに戦場を駆け抜けて行った。
 俺はその後ろ姿から目が離せなかった。


「はぁ・・・、格好良いなあ・・・」


 ここに一人の兵士がカトレアに心を奪われたのだった。
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