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282 謎の光

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 弓の応酬は夕方まで続き、辺りも薄暗くなって来た。
 そして矢が見えにくいと消耗も激しいのだろう、伊勢軍が引いて行く。


「敵軍が下がった!」
「暗くなってきたからな。よーしみんな、今日は良く頑張った!敵も引いてくれたから一時休戦だ。メシにしよう!」

「「おおおおおおおおおおおーーー!!」」


 さすがに疲れたのだろう。俺の声を聞いた兵達はみんな地面に座り込んだ。
 そして中央にいる俺の所に、お嬢やチェリン達が集まって来た。


「みんなお疲れ~!」
「おう、お疲れ!」
「はふ~、死ぬほど疲れたわ・・・」
「圧倒的でしたわ!残念ながら何人かの戦死者は出てしまいましたけども」

 俺の部隊はエルフ達ばかりの精鋭だったので死者は出なかったけど、他の部隊は一般兵ばかりなので、死傷者ゼロってわけにはいかんよな。

「戦争なのだからこればっかりはしょうがない。遺体は手厚く葬ってやってくれ。遺族には命代を多めに渡そうと思う。一家の大黒柱を失った家族などは大変だろうからな」
「そうね、それが良いと思うわ。自分が死んでも家族が食べて行けるならば、兵士も皆心置きなく戦えると思う」
「それなら夕食後にでも皆の前でそれをしっかり伝えましょう。死んでも見返りがあるならば、士気も上がると思われます」

 そうだな・・・。ルシオの言う通り、戦争のマイナス面ですら士気を上げるのに使うべきだろう。と言っても、それで安心して死なれるのは困るが。


「はいは~い!夕食の用意は出来てるから下に降りて来てね~。一気に全員は無理なので、まずは半数だけよ!」


 お!?料理の為に先に戦線離脱していたフローラがお呼びだ。
 どっちみち敵を見張る必要もあるんで、最後まで戦闘してた者から行かせるか。


「夕食が出来たようなので、まずは今さっきまで戦闘していた者から食べに行ってくれ!防壁の下で控えていた者達は、悪いがもう少し我慢してくれ!一応敵襲に備えておく必要があるからな」

「「ハッ!」」


 ってなわけで、ずっと戦闘してた俺達はメシだ!
 ・・・だがその前に、俺には一つやることがある。


 皆を夕食に行かせてから、まずは1番近くにあるスイッチを押した。
 防壁の外へ向かって明かりが照らされる。


「おお~!すごくいい感じだな!」


 夜襲に備えて、照明の魔道具を量産しておいたのだ。

 門の前を照らしたり、自分らの足元も見えるように結構大量に作ったぞ。
 夜襲で門や壁を破壊しようと考えても、こう隙なく照らされてたんじゃ絶対に躊躇するハズだ。防壁から降りる階段も照らしているので、兵達が落ちて怪我する心配も無いだろう。
 ちなみに壁の外に向けての照明は、ダンジョン魔石を使った強烈なヤツだから、かなり遠くまで見渡せるぞ。


 設置した全ての照明を起動させた。
 当然照明は朝までつけっぱなしにする予定だ。


 俺相手に簡単に夜襲が出来るなんて思うなよ?


 さあて、メシ食いに行こっと!





 ************************************************************



 ―――――伊勢・ヒューリック視点―――――



「ん?何だあの光は!?」

「わ、わかりませぬ!魔法でしょうか??」
「なんかどんどん光が増えて行くぞ!?」


 何なのだ一体!?あれでは近寄ったら丸見えではないか!
 ・・・そうか!夜襲に備えての策!!!

 くそう、尾張め!これほどまでに手強い相手だったとは!

 いつもならば夜襲で門を破壊するのだが、その策は完全に封じられたな。
 まいったぞ・・・。これではバルバロス2号が到着するまで何も出来ぬ。
 今日のように弓での消耗戦を繰り返すか、兵を強引に門へ突っ込ませるか・・・。


 何か策を考えねば・・・、何か策を。





 ************************************************************



 ―――――小烏丸視点―――――



「食った食った~!ずっと戦闘してたからメシが美味すぎるな!」
「それもありますけど、フローラさんの料理がめちゃめちゃ美味しいです!」
「まあ、作ったのはフローラ1人ってわけじゃないけどな!料理班全員のレベルが着々と上がってきてるから、その中の誰か1人でもいれば美味い料理を食えるって段階まで来てると思うぞ」

 和泉から始まった料理道が、フローラを通じてシェルフィーユまで届いたわけだ。尾張全体が料理の国となる日も近いぞ!

「ねえ小烏丸~、夜はどうするの?」
「お?チェリン、もう食い終わったのか。さっき照明を全部起動させてきたんで、夜襲対策も万全だぞ!1000人ずつ交代させて見張らせるから、俺らは一晩ぐっすり眠ってても問題無いハズだ」
「あ~~~!防壁の上に取り付けてた照明って、夜襲対策だったのね!!」
「なるほど!僕も気が付きませんでした!」


 ルシオも気付いてなかったのか。そういや誰にも言ってなかったな。

 自分の中では当然の様に考えてたけど、普通は『戦争と照明』ってのが繋がらないのかもしれない。この世界はランプが主流だしな。俺が尾張の旗を考えつかなかったのも、自分の常識と現実がずれてるから、・・・いや、それは俺がボケてただけか。

 これからはもう少し他国のこともちゃんと調べて、この世界の常識ってのを知る必要がありそうだ。
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