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271 お嬢の決断

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 先程からずっと悩んでいたお嬢が、顔を上げて俺の方を見た。


「えーと・・・、弓に破壊強化は付けられませんの?」

「んとなー、弓って特殊みたいでさ、斬撃強化みたいな明らかに用途がおかしいモノとかは付けられないんだ。んで破壊強化も付けようと思ったが付けられなかった。たぶんその青弓に付与されてるのが、一番最適な並びだと思うぞ」
「なるほど~」


 弓そのもので攻撃なんてしないから、矢に効果を伝える感じなんだろうね。

 破壊強化が付与出来ない理由は結局わかなかった。『貫通とは共存できない』みたいな組み合わせの問題かもしれんけど、付与は時間がかかって大変だから、完全攻略するほど何度も試してらんないんだよな~。


「決めましたわ!ワタクシは青弓で!」
「ほぉ~、破壊兵器じゃなくていいのか?」
「迷ったのですけれど、戦闘は刀で戦いますでしょ?ワタクシの場合、元々剣が自分に合わなくて刀のお陰で強くなりましたから、今更他の武器で戦うつもりはありませんし。・・・となると破壊にしか使えない武器よりも、防衛戦で絶対に活躍する弓の方が良いと思いましたの」
「・・・なるほどな~、確かにお嬢の場合は青弓が最良の選択かもしれん。短剣を両手に持って戦うってのも結構面白いんだけどな。まあとにかく青弓にするのならば、骨弓の方は有能な部下にでも貸し出すといい」
「そうですわね~。ところで骨弓って名称も弱そうじゃなくって?」
「たしかに・・・、これも後で変更しよう」


 さて、これで侍大将の二人は選び終わった。
 カーラ・カトレア・リタ・リナにも恩賞表を見せて、ゴブリン武器の選択をしてもらわなきゃな。

 とりあえず集まったメンバーを解散し、俺は武器の強化をしに部屋に戻ることにした。





 ************************************************************





 さきほど紙に書いた恩賞方式は、出来るだけ丁寧な字で、身分の高い順に並べて書き直した。もちろん伝説のゴブリン武器に修正して、だ。
 あと骨弓って名称も魅力を感じないとの指摘で、呼び名をヴォイド弓に変更した。

 それを何枚も写真に撮りまくる。

 全ての城に3枚くらいずつあった方が良いと思ったのだ。
 城に入った所にある掲示板と、玉座の間あたりにも貼って、最後の1枚は城主が保持する感じで。

 とりあえずヴォイド弓の方は強化し終わった。
 手加減した軽い強化だったので、これはそれほど時間がかからない。

 ゴブリン武器の方は結構強い強化が必要なので、何日かかけて完成させようと思ってる。最初はチェリンに渡す大剣からだな。


 トントントン


「入れ」


「失礼します!御用件を伺いに参りました!」


「ご苦労!えーとな、この包みをルーサイアの城に届けてもらいたい。出来るだけ早く届けたいので急ぎで頼む」

「了解しました!」


 パタン


 まずはミスフィートさんと相談だ。包みには手紙も入れたので、確認次第すぐにでも通信が来るハズ。
 案が通ったら、トラネコ城とクロネコ城にも包みを送る。

 通信すれば手っ取り早く欲しい武器を聞けるんだけど、その前にまず恩賞方式の紙の写真を見せたいわけですよ。だらだらと口で説明されたってよくわからんからな。

 んでカーラ・カトレア・リタ・リナの4人には、実物を直接見せる為にシロネコ城に呼び寄せようと思ってる。
 適当に決めていいような武器じゃないからな。
 何となくで選んでしまうと、間違いなく他の武器はどんな感じなのか気になるに決まってるから。

 特にヴォイド弓と青弓の性能差なんかは、実際に使ってみないと体感出来ない。
 まあそれを言ったら、さっきのメンバーもヴォイド弓を体験してないんだけどね。
 後で完成したヴォイド弓の試射会せんとな~。


 それからしばらく付与三昧の日が続くことになる。





 ************************************************************





 プルルルル


 お!?ミスフィートさんからの通信だ!


「はい、こちら小烏丸です。どうぞー」

『小烏丸!包みが届いたぞ!』

「もう中の物は見ましたか?」

『うむ!面白いことを考えたじゃないか!』

「えーと、すなわち賛成してくれるってことで良いのでしょうか?」

『そうだな~。字で見ただけだから、足軽大将の所にあるヴォイド弓とかの強さがわからないのだが』

「えーとですねえ、ミスリル刀のワンランク下の性能って感じですね。ミスリル刀だと斬撃強化(強)が付いてますが、ヴォイド弓には矢威力強化(大)が付いています。えーと・・・、付与の強さで言いますと、付与の弱い方から(小)(中)(大)(強)(極)となっていますので、(大)でも十分強いですよ」

『ほほ~!あっ、一般兵が持っている普通の刀と同じ強さだな?』

「ああ、そうですね!んでヴォイド弓ってのは、ダンジョン9階にいた骨弓のことです。正式名称がヴォイドスケルトンアーチャーなので、ヴォイド弓ですね」

『ああっ!あの魔物か!私達は骨弓と呼んでいたから全然気付かなかったぞ!』

「それでですね、ゴブリン武器の性能はミスリル刀と一緒にしました。斧・大剣・大鎌・棍棒には破壊強化(強)も付きます。これは侍大将にならないと貰えませんので、強さ的には問題無いと思います」

『なるほど。破壊専用武器ってのは面白いな!よし、私はこの案に賛成だ』

「ありがとうございます!では侍大将以上の人達に、すぐゴブリン武器を渡しても構わないですか?」

『構わんぞ。いきなり強烈な武器が貰えるのだ。皆もきっと喜ぶだろうな!』

「だと良いですね!それでは、まず恩賞表の紙をトラネコ城とクロネコ城に届けてからシロネコ城にカーラ達四人を呼び寄せて、直に本人に武器を選択してもらおうと思います。強化したヴォイド弓は全ての城に届けようと思ってますので、足軽大将以上の人達に渡して下さい」

『了解だ!じゃあ強化の方は頼んだぞ!』

「お任せを!」


 よーし!流石はミスフィートさん、話が分かる!簡単に案が通ったぞ。
 んじゃ早速トラネコ城とクロネコ城に包みを送らんとな。
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