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230 ゴブリンとご対面

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 部屋の入口から人の気配を感じた。


「やっぱりココだった!ただいま~」


 ミスフィートさんが狩りから戻ってきたようだ。


「おかえりなさ~い」
「どうでした?」

「楽しかったぞ!でもゴブリンも2階層への階段も見つからなかった」
「あ~~~、それはですね、実はココからすぐにでも行けるんですよ」
「なにッ!?」

 先に言っとけばよかったかな?

「じゃあまずはゴブリンとご対面してみますか。和泉も結構レベルが上がったから、見るくらいなら大丈夫かな?」
「レベルが上がらないと、見るのも危ないってこと!?」
「噂のゴブリンだな!戦ってもいいんだよな?」
「戦って構わないですよ。まあ見ればわかるけど、レベル1でアレに近寄ったら、人によっては心臓が止まるかもしれん」
「ひいぃぃぃぃ!で、でも逆に見てみたいわね!」
「よーーーし!お手並み拝見といこうじゃないか!」


 二人がどういう反応を見せるのか、楽しみではあるな。


「じゃあ俺について来て下さい。慎重に行きますよ」
「ほう?こっちの通路から行けば会えるのか」


 ゴブさんがいる通路に入って行く。


「いたいた!二人共、そっと覗いてみて下さい」


 そこから数歩進んだ所で、二人の動きが止まった。
 まあ無理もない。ゴブさん特有の殺気がだだ洩れだからな。


「ハハッ!!アイツが噂のゴブリンか!何という威圧感なのだ!」
「ちょ、ちょっと声が大きいです!気付かれちゃいますよ!!」


「グギャアアアアアアアアア!!!」

「き、来たああああああああ!?」


 ゴブさんが、もの凄い勢いでこっちに走って来た。
 和泉はその恐怖に、すぐさま俺の後ろに隠れる。
 それとは対照的にミスフィートさんは前へ出た。


 ドガアアアン!


 ゴブさんが振り下ろした拳が地面を砕く。


「なんという攻撃力だ!ジャバルグとの戦いを思い出すぞ」

「当たったら痛いですから気を付けて!」


 まあ強さは圧倒的にジャバルグの方が上だが、攻撃力だけならゴブさんもかなりのモンなんだよね。
 殺気と威圧感が尋常じゃないんで、似ているというのも頷ける。

 ゴブさんの怒りの拳が連続で襲い掛かるが、紙一重で全てミスフィートさんに躱される。
 残念ながら今回は相手が悪かったな!


 そして3分ほど戦闘を楽しんだ後、とうとうミスフィートさんが攻めた。


 ジャキン!


「グギギギ・・・」


 胸部を斬り裂かれたゴブさんが大地に沈んだ。

 うん。まあ本気を出さずとも、一撃で倒すだろうとは思っていたが。


 パチパチパチパチ


「アリアダンジョンのゴブリンの強さはどうでしたか?」

「小烏丸が言った通りだな!他の魔物とは強さの桁が違う!しかもゴブリンの中じゃ、今戦ったコイツが1番弱いのだろう?1階に住んでるくらいだから」
「ですね。まだ1階層のゴブリンだというのに、この強さなんですよ。3階層の赤いゴブリンからは、全力で行かないと危ないですよ?」
「ええええ!?今ので1番弱いゴブリンなの!?私本気で死ぬかと思ったんですけど!!」
「凄い!このダンジョンは凄すぎる!帰るまでに絶対全部倒すぞ!!」

「ハハハッ!残りは9体ですね。ここのゴブリンは3日経たないと復活しないので、今回は残念ながら1度倒したらおしまいです。あーでも4階にドラゴンがいたりと、ゴブリン以外にもなかなかの強敵はいますよ」
「ド、ドラゴン!?そんなのまでいるの!?」
「おおおおおっ!それは是非とも戦ってみたい相手だ!」


 ゴブリンから魔石を取り出した。


「見て下さい。デカいでしょう?」

「おお!流石に強かっただけのことはあるな。ゴブリンは中ボスだったか?」
「うわ~、ホントだ。大きな魔石ね」
「この大きさの魔石は尾張じゃ手に入らないんですよね。この魔石1個でデラックスガチャが回せるのですが、貴重品なのでコレは温存しましょう」
「デラックスガチャ?何種類かガチャがあるってこと?」

 和泉は日本人だけあって、専門用語が出てきても通じるから説明がしやすいな。

「そそ。ノーマルガチャ・デラックスガチャ・各種属性ガチャ・そしてレジェンドガチャ。欲しい物を選択できる感じになってるんだ」
「あれ?そういえば骨倒しても魔石出なかったよ?」
「えーとな、普通に倒せば出るんだけど、聖水ぶっかけて倒すと魔石も消えちまうんよ。だから和泉がガチャを回したいならば、まともに戦って倒す必要がある」
「なるほど~。世の中そんなに甘くないってことね!」


 いつまでもあそこにいてもしゃーないので、部屋に戻って来た。


「ねえねえ!私にも刀を貸して欲しいのだけど」

「お?骨と戦ってみるんか?」
「魔石を手に入れなきゃガチャが回せないんでしょ?ならもう、やるしかないじゃない!」

 和泉に刀を渡す。

「うわ~、これで実際に魔物と戦うと思うと、少し緊張して来たかも」


 和泉が鞘から刀を抜いて構えた。


「お?なかなか様になってるじゃないか」
「何度かナターシャ達に教わったの。『イズミは脆すぎて死んじゃいそう』って誰も立ち合ってくれなかったけどね!」
「レベル1じゃ、冗談でも何でもなく死んでまうわ」


 和泉が何度か刀を振ってるのだが、思ったより悪くない。


「思った以上に悪くないな。これならファントム倒せるんじゃないか?」
「私から見ても、たぶん大丈夫だと思うぞ?大幅にレベルも上がってるのなら斬られても死にはしないだろうから、一度やってみるといいだろう」
「やっちゃう?」


 城でただ料理を作ってたんじゃなく、刀の稽古もしてたとは感心だ。
 これならば、実戦でも何とかなるかもしれん。
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