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197 牛乳が欲しかっただけなのに

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 プルルルル


『小烏丸か?』

「おはようございます。最近お菓子にハマりつつある小烏丸です。今日は一つ、すごい報告がありますよ」

『ほう。何だ?』

「尾張で日本人を一人見つけました」

『マジか!来た経緯は小烏丸と同じパターンか?』

「まったく一緒でしたね。女性で、名前は北条和泉。年齢は19です」

『なるほど女か。しかし運が良かったな!尾張に来るのがもう少し早ければ、その娘は死んでいたかもしれん。例え殺されなくても悲惨なことになっていただろう』

「ですね~。俺も同じことを考えましたよ。ああ、それでですね、彼女は今ルーサイアにいるのですが、とにかく料理が上手いんですよ」

『あー、なるほど。それでお菓子にハマってんのか!』

「ですです!それでですね、昨日も和泉がお菓子を作ってくれたのですが、残念ながら今の尾張には卵も牛乳もバターも無いわけですよ。それで、三河でならば牛乳が手に入らないものかと思いまして・・・」

『牛乳ならあるぞ。牛とは少し違うが、まあ似たような動物だ。しかし残念ながら卵は無い』

「マジっすか!さすが三河だ!!それで牛乳を売ってもらうことは可能ですか?」

『牛もどきを売るのは無理だが、牛乳ならば良いだろう。だが新鮮さが大事だから、輸送手段の問題も出てくるんじゃねえのか?』

 あーそっか!牛乳は買い溜めってわけにいかんから定期的に買いに行くことになる。しかしその都度バスで取りに行くのも大変だよな・・・。

「バスで何度も買いに行くのは、ちょっとキツイですねえ・・・。あっ、そうだ!尾張から三河にレールを敷いてもいいですか?トロッコを使えば輸送の問題は解決します」

『トロッコか、それは名案だ!・・・フム、どうせ作るならば尾張から三河の牧場へ繋ぐだけじゃなく、三河中に張り巡らしたい所だな。高速な輸送手段があれば今よりも便利になるのは明白だ』

「トロッコならばルーサイアですでに実用化していますよ。ああ、尾張と三河をレールで繋げるならば規格を合わせる必要があるので、尾張準拠で構わないのであればレールのサンプルをお渡しします」

『それで構わない。ところで、トロッコってくらいだから人力だよな?ギッコンバッタンってやるヤツだろう?』

「まさにそれです」

『それよお、バスを作った小烏丸ならば自動化も出来るんじゃないか?』

 自動化か!確かにやろうと思えば出来るな。

「ズバリ、可能ですね。そうなるともうトロッコじゃなくて、機関車が誕生してしまいますけど」

『機関車レベルまで行くと、さすがに近代的すぎるか!?』

「いや、すでにバスが走ってるので今更ですね。問題は魔石の消費が大きそうな所でしょうか」

『そうだな、まあそれは何とでもなる。よし!ならば早速機関車作戦を開始させるとしようか。レールのサンプルは虎徹に取りに行かせるんで用意しておいてくれ。三河のレールは全てこっちで作るから、小烏丸はルーサイアから三河との国境までのレールと、エンジンの製作に集中して欲しい。んで完成したら売ってくれ』

「いきなり大事になりましたね!了解です。あと牛乳取引の話を牧場に通しておいて下さい」

『それは任せておけ!じゃあいつものように虎徹との連絡を頼むわ』

「了解!」


 牛乳が欲しかっただけなのに、なぜか機関車を作ることになってしまったぞ?

 こうなったらもう、三河と共に尾張も機関車計画を推進するしかないだろう。尾張国内にもレールを敷きまくって、全ての街を繋ぐか・・・。
 よし、今回は道路と違って鉄がメインだから、エルフではなくドワーフに話を持ち掛けよう。トロッコで滅茶苦茶喜んでたくらいだから、それが機関車ともなれば更にやる気になると思う。

 ・・・なんかすげえ面白くなって来たかも!



 ・・・・・



 トントントン


「入れ」


 何を始めるにしても、まずはミスフィートさんに報告だ。


「失礼します」

 ミスフィートさんは、いつものように書類と睨めっこをしていたようだ。
 机の上にはクレープが置いてある。・・・ハマったな?

「卵と牛乳の件で、清光さんに通信して話を聞いてきました」

「おお!?で、どうだったのだ?」
「残念ながら卵はありませんでしたが、牛乳は取引可能ということです」
「おおおおっ!ということは、和泉のお菓子が更に美味しくなるじゃないか!」
「美味しくなるってのもありますが、作れるお菓子の種類が今よりもかなり増えると思いますよ!ああ、それでですね、牛乳を輸送する手段をどうするかという話になりまして・・・」
「なるほど、確かに三河まで受け取りに行くのは大変だものな」

 1回で済むのならバスでいいんだけど、運ぶのは牛乳だからな~。
 マジックバッグを使えば新鮮なまま運べるけど、俺はこの先ずっと牛乳配達をするつもりなどない!

「そこでトロッコを使えばいいと結論を出したのですが、それには三河にもレールを敷く必要があります。その時の話し合いで、すぐにでも清光さんが三河のレール作りを開始することに決まりました」
「それはこちらで作らなくてもいいのか?」
「えーとですねえ、トロッコってのは人力で動かし高速で移動・輸送等が出来るのですが、魔道具を使って自動でトロッコを動かそうって話になったのですよ」

 ミスフィートさんもトロッコは知っているので、想像出来ると思う。

「そしてその高速輸送手段は当然清光さんも欲しいわけで、そうなると、どうせなら三河全体にレールを張り巡らせたいですよね?なので三河のレール作りは清光さんの問題なのです」

 牛乳の為に牧場までって話しならば俺が作るけど、鉄道ともなると話は別だ。

「えーと・・・、すなわちバスのような乗り物になるのか?」
「そんな感じです。敷かれたレールの上しか走れませんが、当然尾張にも張り巡らせようと思っています。ルーサイアからトラネコを経由し、ミルドナーガとシェルフィーユまでレールを敷きます」
「素晴らしいじゃないか!バス以外にも移動手段が出来るということだよな?」
「その通り!しかも尾張から三河にも繋がりますので、三河へ遊びに行ったりも出来るようになるのですよ。もっとも治安の問題とかもありますので、国を跨ぐ移動の方は清光さんと話し合う必要がありますけどね」
「は~~~、夢のような話だな。小烏丸のやることにはいつも驚かされるが、今回のは国民全体にとっても喜ばしい企画じゃないか!」
「そうですね~、バスは基本的に軍の人達にしか使っていませんでしたが、これからは一般人も気軽に隣街へ行けるようになるでしょう」


 それにしても、お菓子を作るって話から、なんで一大プロジェクトにまで発展してるのか・・・。牛乳が欲しかっただけなのに、どうしてこうなった!?
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