上 下
162 / 803

162 ルーサイア近郊ツアー

しおりを挟む
 バスが走り出すと、当然みんな大騒ぎだ。


「わわわっ!動いてるよ!?」
「この透明な壁のお陰で、外の動いている景色が見られるわ!」
「マリアナ!外の木が動いてるのじゃ!!」
「外が動いているのではなく、このバスという物が動いてるみたいですよ」

 馬車の世界でいきなり大型バスだからな。そりゃあもう全てが新鮮だろう。

『ご乗車の皆様、もしバスの揺れでご気分が悪くなりましたら、座席手前にある袋をご利用下さい。まあ簡単に言いますと、車内にゲロされると堪らんので、その袋の中にゲーゲー吐いて下さいという意味で御座います』

「バスって、乗ってると気分が悪くなったりするのか?」
「この揺れがダメな人って結構いるんですよ。道が良ければ大丈夫なんですけどね」


 そろそろみんな慣れただろうと地味にバスの速度を上げてくと、遠くにパラゾンの街が見えて来た。


『まもなくパラゾンに到着します。そこで一旦トイレ休憩にしますので、少しでも便意がある人は必ずトイレに行って来て下さいませ。そうしないと、その辺の原っぱで用を足すことになりますので』


 パラゾンの入り口まで行ってバスを停車させると、衛兵が目をまん丸くさせながら慌てふためいていた。


『パラゾンに到着しました。一旦降りてみることをお勧めしますが、用を足したら必ず戻って来て下さい。もしいくら待っても戻らない場合、パラゾンに置いて帰りますんでヨロシク!』

 ボタンを押して入口のドアを開けた。
 ドアは中からも外からも開けられるようになっているのだ。

「うわあ~~!本当にもうパラゾンに着いちゃったよ!」
「おトイレってどこのを使えばいいのかしら?」
「パラゾンにある領主の館なら気兼ねなく使えるけど、少し遠いわよね」
「櫓のトイレで良いんじゃないかしら?若干廃墟になりかけてるけど」


 やはりトイレを我慢してた人もいたようで、みんなダッシュで櫓に入って行った。
 その間に街の衛兵に事情を説明する。


「小烏丸だ。いきなり変なのに乗って現れてすまんかったな。これは人を大量に乗せて移動できるバスという乗り物だ。度々これに乗って移動すると思うので、仲間にも知らせてやってくれ」

「な、なるほど!いきなりだったので本当に驚きました!仲間には伝えておきます!」
「あ、そうだ!ちょっと待っててくれ」


 マジックバッグからカメラを取り出し、少し離れた位置からバスの写真を撮った。
 衛兵にそれを渡す。


「この写真を見せれば、バスがどんな物なのか伝えやすいだろ?」
「なっ!?この素晴らしく立体的な絵は一体・・・」
「んとな、それは絵じゃないんだよ」

 カシャッ!

 衛兵の写真を撮ってそれを渡した。

「え?えええええええええっ!?俺がいる!?」
「風景を紙に一瞬で記憶できる魔道具だ。すごいだろ?」
「凄いなんてもんじゃないですよ!!!なんと摩訶不思議な・・・」

 写真の存在を知ってるのって、ミスフィート軍の兵士くらいだもんな。
 ああ、兵士でもパラゾンに駐在している人はまだ知らないハズだ。

「その写真は記念にプレゼントしよう。家にでも飾っとけ!バスの写真は他の衛兵全員に見せてからならば好きにしていいぞ」
「了解しました!」


 全員がいるか点呼を取り、皆ちゃんと揃ってるようなので、バスに乗り込んだ。


「次どうすっかな~。清光さんが前に作った砦まで行ったら、あの場所だと泊まりになってしまうよな。鉱山まで行ってルーサイアに戻るくらいにしとくか・・・」

「鉱山というのは、ドワーフに使用許可を出したあの鉱山か?」
「そこです。今回は試運転なので、あまり遠出をするのもどうかと思いまして」
「ふむ。ならばドワーフの街の成長が見られそうだな」
「そうですね。鉱山の帰りに寄ってみましょう!」

『まもなくバスが発車します。次の目的地はルーサイア北の鉱山で御座います。発車の際、少し揺れますのでご注意下さい』


 そしてバスは鉱山へ向かい、そこで軽く遊んだ後、ドワーフの街へと到着した。





 ************************************************************





「おおっ!『凄い物が出現した』と聞いたので来てみれば、やはりこがらす殿じゃったか!久しぶりじゃのう~!」
「ドワンゴさん、お久しぶりです!街が大きくなって来ましたね!」
「皆が頑張ってくれとるからなっ!ドワーフも近隣国からどんどん集まって来とるぞ!」
「それは素晴らしい!街作りが落ち着いたら鍛冶の仕事をガンガン頼むと思うので、その時はよろしく!」
「凄まじい量とかでなければ、すぐにでも引き受けても良いぞ?仕事が欲しい民衆も結構いるのでな」
「あー、それなら遠慮無く仕事を頼んでも良さそうですね」

 会話をしながら、ドワンゴさんがチラチラと俺の背後を見ていたのは知っていた。

「それにしても、このデカくて赤いのは何なのじゃ!?」
「俺が今日完成させたばかりのバスという乗り物ですよ。80人を乗せてかなりの速度で移動出来ます」
「いやはや、流石小烏丸殿じゃ!常に時代の最先端を行くのう・・・」
「乗り物が量産出来る所まで行けば、尾張はもっと素晴らしい国になると思っています。さて、じゃあそろそろルーサイアに帰るとしますかね」
「そうか、ドワーフに頼みたい仕事があったらよろしくな!」
「了解です!では」



 ・・・・・



 ドワーフの街を見学していた皆をバスに乗せて、ルーサイアへと帰還した。


「皆さんお疲れ様です!バスの乗り心地はどうでしたか?」

「すごく楽しかったのじゃ!」
「素晴らしいの一言ね!」
「わたしは、ちょっと具合が悪くなったかも・・・」
「無茶苦茶楽しかったっス!また乗りたいっス!」
「楽しかったねー!今度これで三河の国に行ってみたい!」


 具合が悪くなった人もいたけど、かなりの高評価みたいだな!これならば、エルフを三河に連れて行っても問題は無いだろう。次のミッション開始と行こうか!
しおりを挟む
感想 419

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)
ファンタジー
(※サムネの武器が登場します) ある日、死神のミスにより死んでしまった青年。 神からのお詫びと救済を兼ねて剣と魔法の世界へ行けることに。 もの作りが好きな彼は生産チートをもらい異世界へ 楽しくも忙しく過ごす冒険者 兼 職人 兼 〇〇な主人公とその愉快な仲間たちのお話。 ※基本的に主人公視点で進んでいきます。 ※趣味作品ですので不定期投稿となります。 コメント、評価、誤字報告の方をよろしくお願いします。

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...