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132 温水洗浄機能付きトイレ

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 とりあえず試作1号機が完成したので、トイレに籠って工事中。

 もちろんトイレの入り口には、でっかく『工事中』の貼り紙をしたので、人が入って来ることはないだろう。

 ・・・んなわけあるかーい!貼り紙の効果があったことなど今まで一度も無いわ!

 まあでもトイレの中は普通に個室が何個もあるような作りなので、誰かが入って来たとしても大丈夫だ。絶対に入って来るだろうけど。


「よし!とりあえずこんなもんかな?座って使い心地でも試してみるか。しかし尻がビショビショになるからタオルが必要か」

「ほうほう。ビショビショになるのは困るっスね」

 はやっ!

「・・・・・・やはり出現しおったな!ルーシーよ」

「『工事中』の貼り紙を見つけたら、入らない選択肢はないっスよ!」
「完全に逆効果じゃねえか!!」

 もう嗅ぎつけて来るとは・・・、しかし今日はその嗅覚が仇となるのだよ。

「んで、これは一体何っスか?」
「んーとな、用を足した後に水でお尻を洗う魔道具だ」
「水で?別に拭くだけで良くないっスか?」
「ノンノンノン!俺は意味の無い魔道具はあまり作らんのだ。これは俺が必要と思う魔道具の中でも上位クラスの必要性を感じている一品。これに慣れると、今までのトイレなんぞお話にならんようになるぞ!」
「へーーーー!小烏丸がそこまで言うってことは間違い無さそうっス!んでどうやって使うんスか?」
「それは簡単だ。用を足した後にすぐ尻を拭かず、座って右側にあるこのボタンを押すと、水が出て来て尻を洗浄してくれるのだ」

 本当なら拭いてから洗浄した方が良いのかもしれないけど、トイレットペーパーなんて便利なモノは無いから、拭く手間を省くことが重要なのだ。

 好奇心の塊みたいなルーシーだ。新たな魔道具の出現に目がリンリンとしている。

「ボタンって、もう一つあるっスよ?」
「ああ、こっちは女性専用の機能だぞ。女性は月のモノがあるだろ?それを洗浄してくれる機能なんだけどさ、こっちは俺じゃ試せないので、誰かに実験を頼もうと思ってたんだよ」
「おおおーーー!何となくしか意味がわからないけど、それはウチに任せるっス!」
「とりあえずは俺が先にテストしてみるんで、一度ドアを閉めるぞ」
「はいな」


 バタン


 さて、尻を洗う前にまずは水洗トイレの方だ。

 今までトイレは手付かずだったから、みんな便器の横に置かれたお手製のバケツから一回一回水を汲んで流していた。しかし今日からトイレは生まれ変わるのだ!

 座った向きから左側に設置してあるボタンを押すと、便器の中に水が流れる。


 ジョバーーーッ!


 よし、良い感じだな。

 下に流れて行った汚物は、地下で放し飼いにされているスライム君が勝手に処理してくれるので、まったく気にする必要がない。

 じゃあ次は実際に便座に座って尻の洗浄だ。
 ズボンとパンツを脱いで便座に座る。

 シャーーー

 む?ちょっと角度が違うな。もうちょい前だ。


 それから何度か角度を微調整して、最適なポジションを探し当てた。


 よし!完璧な命中率だ。人によっては座り方とかでズレる可能性があるけど、そこは個人で尻を移動し、セルフで命中させて欲しい。

 タオルでビショビショになった尻を拭いて、パンツとズボンを履いた。

 ん-ーー、温風機能もつけた方が良いのかな?

 便器の中の菌とかが舞うことになるから、拭く方が良いような気もするんだけど、トイレットペーパーの無い世界では、温風で乾かす方が清潔か。
 よし決めた!あとで温風機能もつけよう。


 バタン


「ルーシー、実験は成功だ。次はルーシーが試してみてくれ」

「おおーーー!わかったっス!」


 バタン

 バタン


「む?」

「一人じゃ全然わからないから、見てて欲しいっス!!」
「・・・は!?」

 何言ってんの?この娘は。

「いやいやいやいや!パンツ脱いで試すんだぞ?これ」
「もう見られるのは慣れたんで、それは別に問題無いっスよ。実際に用を足すのを見られるのは嫌だけど」
「んーー、まあルーシーがいいって言うのならば、このまま説明するけども・・・」
「こっちの左のボタンは?」
「いつも最後に水を汲んで流してたろ?生まれ変わったトイレはこのボタンを押すだけでいいのだ。一度便座から立って、そのボタンを押してみな」


 ジョバーーーッ!


「おおおおおおおお!水がジャーーーって流れた!!」
「もう一度押して水を止めてくれ。んで次はパンツを脱いでから座って、温水洗浄の方も試して欲しい」
「わかったっス」

 ルーシーが便座に座って洗浄ボタンを押す。

 シャーーー

「うひゃいーーーーーーー!?」

「ちゃんと命中してるか?下品なようだけど、これがとても重要なんだよ」
「してる!してるっス!と、止めていい!?」
「ならば問題無しだな。止めていいぞ」

「はひ~~~っ!これは強烈っス!」

「じゃあ次はもう一つの方のボタンを試してくれ。こっちは残念ながら女性じゃないと試せないんだよ」
「なんかめっちゃ怖いし!!」

 意を決してルーシーがボタンを押す。

 シャーーー

「ひょおおおおおおおおおおおお!!」

「ちゃんと命中してるか?完璧になるまで角度を調節しなきゃならんので、何度も試すぞ」
「な、何度も!?それはとてもマズイっス!!!絶体絶命っス!!!」


 そして調整が終わった頃には、ルーシーは一人で立てないほど弱っていた。


「もうお嫁に行けないっス・・・」

「なんでだよ!?別に如何わしいことをしてたわけじゃないんだぞ?」
「うう・・・、今日は大失敗だったああああ!『工事中』は危険っス!!!」
「いや、工事中のせいじゃなくて、実験を手伝ってもらったからなんだけどな」

「もうこうなったら、みんなを巻き込むっスよ!ピピンを探すっス!!」
「多くの人に試してもらう必要はあるんだけどさ、なんかルーシーは目的が違いそうだな・・・」


 まあ『工事中』が危険ってわかってもらえたならば、それでいいか。
 ルーシーのニュアンス的に、危険の意味が違ってそうではあるが・・・。
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