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112 リッチモンド、退却

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 ―――――小烏丸視点―――――



 おー!結構削れたな。1300人ほど倒したんじゃないか?

 不意に影が差したので、何だろう?と上を見ると巨大な岩が見えた。


「へ?」


「くらえ、メテオストライク!」
「デンジャラスファイヤーDX!」


 次の瞬間、巨大な岩と巨大な火の玉が飛んで行って敵軍を襲った。


 ドガガガガガガガッ!


 ひえーーーーー、エゲツねえ攻撃だ・・・。

 虎徹さんはたしか、俺と同じく女神シャルロットの加護持ちだと思ったけど、極めるとあれほどの火の球が出せるのか・・・。
 清光さんのは魔法というより、もうアレは巨大隕石だな。

 俺のと合わせた3連コンボで、敵軍の半数が滅んだように見える。
 一番エゲツねえのは、たぶん俺の攻撃なんだろうけどさ。


「小烏丸、拡声器を貸してくれ」

「あいよ」

 清光さんに拡声器を渡した。


「聞け!美濃の諸君。俺は三河大名の清光だ!良い機会なんで報告しておこう。この尾張と三河はつい先日、同盟を締結した!」

 それを聞いた美濃兵の表情が真っ青になる。

「すなわち尾張へ侵攻するってことは、三河にも喧嘩を売るということだ!ちなみに初っ端、1000人もの被害を与えたあの攻撃を放ったのは、尾張ナンバーⅡの男、赤い流星だ!」

 うおーーーい!俺の名前を売るのは構わんけど、赤い流星の方かよ!!!

「例え三河と同盟を組んでいなくともミスフィート軍は強いぞ?ジャバルグ軍を正面から正々堂々と叩き潰したのだからな!」

 清光さんが虎徹さんに拡声器を渡した。


「同じく三河から来た遠江太守の虎徹だ!今日はこんな格好をしてるけど本物だぞ!言いたいことは全部アニキに言われてしまったんで、今日は挨拶だけだ!次来たら美濃ごと潰すからな!」

 拡声器がミスフィートさんにパスされた。
 

「私の名はミスフィート、尾張の新大名だ!」

 高貴な衣装を纏った美女の登場に、生き残った美濃の兵士達がざわめく。

「憶えておけ、ジャバルグを倒した新生尾張の強さを!今すぐ軍を撤退させろ!でなければ今の攻撃を全滅するまで何度も叩き込むぞ!」

 ミスフィートさんに拡声器を渡されたけど、俺は別にもう話すことがないんでスイッチを切った。


「おい!最後にしゃべらんのかーい!」

「だって、もうみんな言いたいこと全部言った後でしょ!ネタがなんも残ってないですよ!」
「酷いにゃ!ウチもちょっとしゃべりたかったにゃ!」
「私は別にいいや」

 シルヴァラさんはともかく、ニーニャさんはしゃべりたかったようだ。少し悪いことしたかな?


 そして美濃の兵士達は、倒れた死体を担ぎ、次々と退却して行った。



 ・・・・・



「よし!ミッションコンプリートだ!」
「さすがにもう、当分攻めて来るこたぁねえだろうよ。これで来たら馬鹿だ」
「三河の皆に感謝する!同盟を知ったからには、奴等もそう簡単には攻めて来られないだろう。ただ、伊勢の方がどう出るかはまだわからぬが」

「たぶん伊勢にも情報が伝わるにゃ。遠くから見てた奴がいたにゃ」
「そういう所までしっかり見ていたとは流石ですね!伊勢の密偵が今の騒動を見ていたのならば、すぐに大名まで情報が伝わるかもしれません」

 正直めんどいから、もう来ないで欲しいわ。
 つーか、大きな戦になったら面倒どころの話じゃないけどな。

 通信機を起動させ、5番を押す。


『小烏丸!戦況は!?』

「カーラ、美濃の軍勢は退却した。兵士を揃えてすぐで悪いが解散してくれ」

『え?本当に!?・・・凄いじゃない!了解よ。戦にならなくて良かったーーー!』

「帰りにトラネコ城に寄るんで、何があったかはその時に説明するよ」

『わかったわ』


 さて、次はチェリンの方だ。アレからずっと出陣に向けての準備をしてるワケだから、皆すごい緊迫状態なんだろうなあ・・・。

 通信機の6番のボタンを押す。


『小烏丸!何かあったの!?』

「美濃の軍勢は退却した。待機してる皆を解散して休ませてやってくれ」

『敵を追い返したのね!?凄いじゃない!!』

「三河勢のおかげかな?詳細は帰ったら説明するよ。後はよろしく頼む」

『了解!みんな喜ぶでしょうね~!』


 よーーーし、これで今回の騒動は何事もなく終了だ!
 伊勢がどう出るかが少し気がかりだけど、見ていたのが伊勢の密偵だったのならば、尾張・三河同盟のことがちゃんと伊勢の大名にも伝わるハズだ。


「もう美濃が今すぐ何かして来るなんてことはないでしょうし、帰りましょうか」
「そうだな。トラネコ城に寄って、そのままルーサイアに戻ろう!」

「アニキ、オレ達はどうする?」
「トラネコ城は一度見てみたい。その後は、もうやることもないから帰還だな」
「バイクで帰るの?」
「ウチは疲れたから転移がいいにゃ!」
「そうだな。俺も城作って疲れたし、サクッと転移にすっか」


 んじゃトラネコ城までは一緒か。

 拡声器二つ三つくらいならそう時間もかからないで作れるから、それだけササッと作って渡して解散って感じにしよう。


 一行はトラネコ城へと向かった。





 ************************************************************





「いきなり半数の兵士がやられたら、そりゃあ逃げるわよ!しかもコッチはたったの6人って、とんでもない話ね!」

 トラネコ城に着いたらカーラが待っていたので、美濃国境に到着してからの出来事を、ミスフィートさんが詳しく説明してるところだ。

「尾張・三河同盟が相手に伝わったのが大きいな。これでもう迂闊に尾張を攻めることは出来ない筈だ」
「だと良いわね。あとは伊勢がどう出るかだけど・・・」


「よし出来た!」

 みんなが話してる横で拡声器を作ってたのだ。
 これで手持ちが三つになったから、今日三河に帰る二人に1個ずつ渡そう。

「美濃国境への参戦ありがとうございました!お礼に拡声器を差し上げます。あとこちらが水生成機で、もう一つの方が氷生成機です。」

「おーー!拡声器みたいのずっと欲しかったんだよ!水生成機もサンキューな!」
「これは有難い!戦場で大声を出すのは案外大変でな、すげー助かるわ」
「では、服の強化が終わったら連絡入れますね」
「おお、頼んだ!」
「三河の皆に心よりの感謝を!今日は本当に助かった。あと素晴らしい城もありがとう!」
「こちらとしても、この同盟が末永く続くことを願うよ。んじゃそろそろ帰るぞ。コテツ、頼む」


 そして4人は三河へと帰って行った。
 本当に良いタイミングで尾張に来てくれてラッキーだったな。俺グッジョブ!
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